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NOVELS ROOM

part3

―7th Spirit ~part3~―



俺は幼稚園から飛び去った後、すぐにでも次の行くべき場所、小学校へ向かった。ミジョルとの戦いで、時間がかかってしまったからな、早く向かわないと、他の魂を探す時間が無くなってしまう。
しかし疑問だ。ミジョルの片腕がなかったのは、平次郎のせいだとはいったが、一体どうやって引き裂いたんだ?平次郎がやったとするならば、ミジョルの血がついていてもおかしくはない筈だが、平次郎の体にはどこにもそれらしいものがみつからない。
考えている暇はないが、俺はその場にとまり、肩から平次郎をおろし、抱き上げるようにした。平次郎は俺を見つめながら、首を傾げている。

「ミジョルはああいってたけど、そんなわけないよな。」

そう、あるわけがない。どっかの犬の半妖がでてくるやつのキャラじゃあるまいしな。
・・・いや、今まで非現実的な事が起こっているから、有り得ないことも有り得ると、自分で思ったはずだ。だから、平次郎の事も・・・。

そう思っていると、突然平次郎が俺の手からするりと抜け出して、俺の腕を踏み台にして、飛んだ。
姿が段々と大きくなり、平次郎は人を(一応二人乗り)乗せられるぐらいの大きさになったのだ。
首周りにふさふさとした毛がつき、尻尾も犬っぽいような・・・そんな感じにかわり、顔付きもライオンのような・・・そのおかげで大きな牙がはえている。
まさしくその姿は、名前に「雲」がつくキャラにそっくりであった。
そのそっくりさに、暫く固まっていたが、はっとなり我にかえる。
そうか、平次郎はこの姿でミジョルと戦ったわけだな。そして、猫嫌いなミジョルは逃げ回ってたわけで・・・いや、逃げ回ってたら、あんな鈍い音はしなかった筈・・・ということは、覆いかぶさってから腕を引き裂いた、もしくは噛みちぎった、ぐらいだろうか・・・。
だが、ミジョルの腕はどこにも落ちてなかったし・・・あれ?
平次郎の口周りをよーくみると、血のような物が付着しているのが見える。
おいおいまさかな。赤髪の海賊が、巨大ザメに左腕を食われたように、平次郎も食ったんじゃないだろうな?
いや、いくら有り得ない事が起ころうと、平次郎がそんな事をするはずがない。過信しすぎているかもしれないが、これは絶対に有り得ないんだ!
でも・・・

「い、いいか、平次郎?これから俺が質問するから、頷くか、首を横に振ってくれ。いいな?」

やっぱり心配になってきたから、結局こう言っちまうんだよな。
とにかく、深呼吸をしてからいうことに。

「ミジョルの左腕、引き裂いたのか?」

平次郎は横に首を振る。ということは、噛みちぎったわけだな。
そうなると、食べたことになるのか?いやいや、サメじゃないんだから骨ごと食うわけないもんな。
じゃ、ミジョルの腕は一体どこに行ったんだ?
もういいや。時間くっちまったよ。次行こう次。
すると、平次郎が乗れといったような感じに、首で促した。しかし、乗るわけにはいかない。何故だかわからないが、乗ったらダメだなという感じがしてならなかったからだ。
とにかく早く行かなきゃ。

小学校は、幼稚園から200mか300m先にあるため、タイムロスしても大差はないと今気付いた。確かに歩いていくならば、さらにタイムロスをするはめになるが、この魂の姿は楽だ。タイムロスしたことを忘れるほど、早く着く。
だから、ちょっと寄り道風に正門の前に降り立った。久しぶりに通りたかったからな。
25mは軽くあるだろう、少しスロープのかかった坂をのぼると、さらに5~6m先に将校口が見えるが、真ん中にあるだろう植木(?)と共に石碑があるので、正直あんまり見えない。右には体育館があり、その後ろに25mプールがある。体育館の入口付近に、今でも使えるのかどうかわからない、灰色っぽいベージュの有線電話が壁に貼り付けられている。小学生の時からすでに、繋がるのが遅かったため、もう撤去されたんじゃないかとは思ったが、まさかまだあるなんて。
受話器をとって耳にあててみると、プーと鳴る。どうやらまだ使えるみたいだ。
おっと、この光景を誰かが見てたら、また怪奇現象だな。誰もいないから大丈夫なんだけど。

受話器を元に戻し、体育館の側面をたどる。そこには、いろんな高さのある竹馬と一輪車が置いてあった。ちなみに竹馬は、踏み台はプラスチック製で棒はステンレス。つま先(?)はゴム製の物が付けられている。
そういえば、高い足場の竹馬に乗ったはいいが、降りれなくなって、無理に降りたらちょうど股に当たって・・・うぅ、思い出しただけでも、あれはさすがにいたかったな・・・。打ち所が悪かったせいで、切れて血が出てたっけ・・・。あぁ・・・あん時は情けなかったなぁ・・・。

さらにプール方面へと足を運ぶと、何やら花壇がある。これは・・・ヘチマ?からからになった状態を見れば、これはヘチマとしか考えられない。まだ育ててたんだな。
さらに横へ進むと、体育器具庫がある。サッカーボール、硬式ボール、軟式ボール、意味もなくラグビーボール、バット、グローブ、フラフープ、バトン・・・言い続けていくとキリがないな。とにかく、体育の授業で使うものが勢揃いだ。つーか、フラフープって昼休みの時ぐらいしか使わな・・・そういえば体育の教科書らしきものにフラフープの事が少し載っていたような気がする。ま、いいか。

鍵で閉まって開けることが出来ない体育器具庫を目の前に預け、左を見る。その先には、鬱蒼と・・・まではいかないが、森のように樹木が生い茂っている。通称、自然の森。そのままである。
その自然の森に足を運ぶと、やっぱり未だにどんぐりが落ちている。懐かしい光景だ。気に入った樹木をえらんで、記念写真もとったことあるし、図工の授業で、グループを作って基地を作ったりしたっけなぁ・・・。

懐かしみながら、自然の森を抜けると、陸上部用の砂場と、遊具が見える。もちろん幼稚園の頃にあったタイヤの跳び箱(?)だってある。
流石小学校。幼稚園とは難易度が上がった遊具がならんでいる。登り棒も勿論あるが、幼稚園の時より高い。そのすぐ隣には、全部がオレンジで塗装された、特殊なジャングルジム。梯で昇ると目の前には、等間隔で配置された・・・あー!これはなんて説明すればいいんだ!?とにかく、下から見れば、うんていのような物がある。幅が狭いので、策だってある。先へ進むと、通常の形をしたジャングルジムがあり、すべり台がある。実は道はこれだけではないのが、このジャングルジムの良さだ。うんていのような物を渡る前に、左のほうに幅30cm感覚で棒が配置されている、大きなうんていがある。しかも、地面に平行はせず、多少傾いているのだ。その上にのって登っていくという手もある。しかし、これはうんていなので、策どころか、持つところもない。しかも幅が広いので、失敗したら最後。大怪我することは間違いないだろう。だが、それを難無く遂行できたのは俺自信だがな。まぁ、他の皆も出来ていたけどな。

あとは、通常のうんていがついたジャングルジムと、真正面から見ると「A」の字に見えるジャングルジムっぽいもの、そしてその近くに鉄棒があった。
暫く歩いていると、兎小屋が見えて来た。しかし、今は兎は一匹もいない。小5の頃に突然と兎がバタバタ死に始めて、ついには一匹もいなくなってしまったのだ。原因はよくわからないが、4年生たちの世話の仕方が良くなかったんじゃないかという噂が流れたのを覚えている。
鶏やチャボもいたはずなのに、インコと紛れ込んだスズメが一匹いるだけだ。

小屋の前の花壇にはチューリップやヒマワリなどが植えてあった。その中には、トウモロコシがある。確か、理科の授業に使ってるんだっけ?その辺はもう覚えていない。ここの花壇より、屋上にある花壇を見てきたわけだしな。
そういえば、どうでもいい話だが、将校口、二つあるんだよなぁ。1~3年生は今俺が向いているほうで、4~6年生はさっき俺が来た方向にある。このならび、年ごとに変わるときがあるからまぎらわしいんだよなぁ・・・ま、いっか。

ふと腕時計をみると、時刻は23時40分だった。
懐かしんでいた時間がタイムロスだな。時間がない。屋上に行くか。

そこから空を飛び、すぐに屋上につく。
夜だから、正直花は見えないはずなのだが、何故か光を浴びたように、花が輝いている。
何だか、俺を歓迎しているように見えるな。
と、妙に他の花たちよりも、輝いている一輪の花が目につく。
その花は、スイートピーだった。薄いピンク色で、小さな風に反応して、ゆらゆら揺れている。
確か、俺が恋した女の子は、このスイートピーが好きだったんだよなぁ・・・でも、彼女は・・・もう、この世にいない・・・。
思い出しただけで、涙が溢れてきた。必死に涙をこらえようとするが、涙は次々と溢れ、何度も頬をつたう。それほど彼女は、俺にとって大きな存在だったのかもしれない。
しかし、アルバムをみて思い出した時は、涙なんて出なかったのに・・・やはり、このスイートピーを見ると辛くなってしまうのかも知れない。
彼女がこの世を去った次の日から、俺はこのスイートピーを見るのも辛くなり、暫く心を閉ざし、この屋上には来なくなった。辛くて、悲しくて、不登校になりそうなぐらいだった。
公園にたちよると、人見知りだった頃に出会った兄貴がいて、説教してくれたっけ。

『いつまで落ち込んでいるつもりだ!?落ち込んでいたって、彼女はもういないんだ!!仕方ないんだ!!それに、天から彼女が見守ってくれてるかもしれないのに、いつまでもそんなんじゃ、喜んではくれないぞ!?笑顔を見せろ、そして、もう一度あの花たちを育ててあげるんだ。』

ふいに、兄貴の言葉が頭に過ぎったとき、さっきの姿から元に戻っている平次郎は、俺の肩に乗り、涙をなめてくれた。くすぐったい。
そして、その後自分でも涙を拭く。

そういえば、魂はどこだ?絶対ここにいると思ったのだが・・・。
すると、屋上にある出入口から、少年の泣き声が聞こえた。声からして、それは小学生時代の俺だった。出入口に近付き、鍵が閉まっているはずの扉を開く。
やっぱりいた。座り込んで、泣きじゃくっている。

「泣くなよ。」

俺はそれだけいって、同じ目線になるように座り、頭を撫でてやる。

「だって、オレのせいで・・・。」

そう、俺が彼女をいつもここに連れてきていたから。彼女の体が弱いとも知らずに。それでも、彼女の喜ぶ顔が見たかったから。
そんな時に、彼女の体調が突然悪くなり、帰らぬ人となった。

「泣くなって言ってるだろ?悲しいのはわかってる。だけど、泣いてちゃいけないんだ。泣いてたら、何にも前には進めない。」
「わかってる・・・わかってるよ・・・でも・・・でも・・・。」

涙がとまらない・・・か。
とにかく見付けたわけだし、さっさと取り込んで・・・

「何て美しい花たちなんだ~♪」

背後から、気障っぽい声が聞こえた。おそらく、死神だろう。振り向くと、彼は花壇にある様々な種類の花を見て、はしゃいでいた。
やはり、今まで出て来たやつと服装は同じで、雰囲気がとあるアニメのキャラっぽい感じだった。確かタイトルの頭文字が「B」だったかな。まぁ、そんなのはどうでもいい。
さっさとこの魂のカケラを取り込んで、次に行かないと時間がない。

しかし、取り込むといっても、一体どうしたらいいんだろうか?今まで見つけた魂のカケラは、向こうから入ってきたわけだし。しかも、俺がピンチになったとき。
はは・・・まさかな・・・。

などと考えていると、気障っぽいやつに気付かれたようだ。こっちを見つめている。

「そこのキミ!」
「な、何だよ・・・。」
「この花壇を作ったのは、キミかい?」
「そ、そうだけど・・・それが何か?」
「こんな美しい花壇を作ったのであるならば、きっと心も美しいんだろうなぁって思ってね。」
「あ、そう。それはどうも。」

それじゃ、この辺で失礼させてもらいますわ、と言いながら、俺はその場を立ち去ろうとした。
だが、体が動かない。何が起こったんだ!?

「キミ、これが試練だって解ってるはずだよね?」

肩に手を置き、耳元で囁く。それと同時に、殺気を感じた。
また、俺はまた刺されるのか?何だか怖くなってきた。こんな殺気を感じたのは初めてだからな。
逃げたい・・・しかし体はいまだに動かない。ダメだ、殺られる・・・!

「怯えなくていいよ。僕はまだキミを簡単には殺さないから・・・!」

そういって、俺を蹴り飛ばす。飛ばされた俺は、ザザーという音をたてて倒れた。地面に倒れる前に体勢を変えたから、顔面にかすり傷は出来なかったが、肩から墜落したせいで、思い切り擦れてしまい、真っ白で綺麗なシャツが、血で滲んだ。
痛い・・・だが、体は動けるようになった。
両手に拳銃を持ち、目の前にいる敵に向かって乱射する。だがやつは、その弾をすべて避け俺に近づいて来た。拳銃がダメならと思いロッドを取り出し、やつに向かって突き刺す。だが、それも呆気なく避けられ、やつは空を舞う。

「気が早いねぇ・・・名前も名乗らせてくれないのかい!?」

そういって、細い針のようなものを飛ばしてきた。それをロッドで弾き返すが、予想以上に数が多いため、ガードしきれずに体中(からだじゅう)に刺さる。
それがやむと、俺はその場に倒れる。当然のことながら、動けるはずもなく、痛みに苦しむだけだ。となりで平次郎が心配そうに見ている。

「呆気ないねぇ。キミはあの2人に勝ったのに、こんな弱い攻撃で動けなくなるなんてね。」

これが弱い攻撃なわけがないだろ。針は半分ぐらい突き刺さっている。動けるとか動けないとか、痛いとか痛くないとか、そういう次元じゃない。
この攻撃をまともに喰らったやつは、分かるかもしれないが(喰らうやつなんて多分俺ぐらい)、この針一本一本に、どうやら麻痺させるための何かを塗ってあったらしくて、それが体のほぼ全体に深々と刺さっているわけだから、体が麻痺して動けないのだ。ちなみに、こんなものが塗っていなければ、辛うじて立ち上がることは可能のはずだった。

「そっかぁ・・・麻痺薬塗ってあるから、それで体が麻痺して動けないのかぁ。」

ようやく気付いたか、気障野郎。

「ま、これでようやく名乗れるわけだ。・・・僕の名前はフランシス。よろしく。」

フランシスと名乗った気障野郎は、数歩歩いて小学生の頃の俺がいる場所でとまった。距離は数センチと考えてもいいぐらい近づいていた。そして、何やらカプセルのようなものをとりだし、蓋を開け、小学生の頃の俺をカプセルの中に入れた。つまり、奪われたってわけだ。
この体が動きさえすれば、助けることも可能だったのに、何も出来ずただ呆然と見てるしかなかったのが悔しい。

「その・・・カプセルを・・・よこせ・・・!」
「焦らないでくれたまえ、まだ持って行くとは言ってないだろう?」

フランシスは続ける。このカプセルを奪うのが今回の試練。無駄な殺生は苦手だから、だそうだ。
ふざけんな。あの殺気は明らかに俺を殺そうとしたじゃないか。しかも、体中に麻痺薬塗った6cmぐらいの針刺すし。
だがまてよ、こんな俺を殺すチャンスがあるのに、すぐに殺さないのは、やはり殺生が嫌いなのだろうか?ま、死神だし、有り得ないんだがな。

フランシスは空を飛んで、俺を誘う。無理だ。動けない。
何とか動こうとして、立ち上がろうとするが、倒れた状態から立つのは、非常に時間がかかる。しかし、時間ロスをしているから、ここでとまっているわけにもいかない。
そう思って、痺れて動けない体を必死に動かそうとした。だがやはり動けない。でも、動けなくても手さえ動いてくれればいい。そうすれば、自己回復することが出来る。

何とか片手を動かし、体に近付け念じる。光が溢れ、その光りは俺を包み込む。だんだん癒されてきて、体の痺れがとれてきた。よし、この程度ならもう立ち上がれる。
針は刺さったままで痛い。仕方ないから引き抜く。やっぱり痛い。刺さっていたところから、血が流れている。
何本か抜いた後、フランシスの方を向く。何故か知らないが、俺が立つのを待ってくれたようだ。

「さて、ようやく試練らしくなってきたね。」
「俺を殺そうとしないのが、まず変だけどな。」
「無駄な殺生はしたくないが、戦わなければキミは死ぬ。」

そんな事はわかっている。だからこそ俺は、両手に出現させた拳銃を合体させ、ライフルにし、その銃口をフランシスに向けている。
すでにパワーはMAXにチャージされている。いつでも発射できる。しかし、一発しか撃てないというのが難点。だから、撃った後、解除させ拳銃で乱射するつもりだ。それが無理なら、ロッドで立ち向かうのみ。

「それで僕を脅したつもりかい?」
「脅したつもりなんてないんだけどな。」

そう言って引き金に手をかける。フランシスはよける気配はない。しかし、この場合撃ったら必ず避けるにちがいない。だけど、撃つしかない。せっかくMAXまでチャージしたんだ。ここは撃っとこう。
俺は何の合図もなく、巨大レーザーをフランシスに向かってぶっ放す。

「ちょ、キミ!いきなりはないだろ!?」

とか言いながら、巨大レーザーを避けているのは、どこのどいつだ。
そんな事よりも、フランシスに回り込まれる前に、この場を避けなければならない。大事な花壇を、これ以上荒らされたくはない。すでに、さっきの針のせいで、何本かささっているからな。

すぐにはなれて、運動場のほうへ飛ぶ。しかし、すぐ横にフランシスが並んで飛んでいた。そして、俺は腹に蹴りを入れられ、吹き飛ぶ。体育館の屋根に落ち、気を失いかけた。しかし、ここで気を失ってはいけない。フランシスも本気モードに入ったみたいで、さっき蹴り飛ばされたときよりも、威力が強かった。
さっきの傷口から、血も流れているわけだが、ミジョルの時みたいに、気を失い時間をかけるのはもうごめんだ。死なない程度に、しかしギリギリ限界まで戦ってやる。傷口を片手でおさえながら立ち上がり、ロッドを抑えてないほうで持つ。
あとからこっちにきた平次郎も、姿を変え、フランシスに飛び掛かるが、いとも簡単に避けられていた。

素早さはミジョル程ではないが、速い事は確かだ。だから、何とかついていけば、まともに戦えるはず。しかし、今の傷の状態で、フランシスについていくのは至極難しい。戦えないことはないのだが、やつについていくどころか、きっと攻撃すら出来ずに、フランシスの技にはまるだろう。それだけは避けたい。

なら、一体どうすればいい?
考えている暇はないが、フランシスから確実に魂のカケラを奪い返さなければならないから、結局は戦法を考えてしまうわけで・・・。

「だぁああ!!考えるのめんどくせー!!」

頭を抱えて叫ぶ俺。フランシスが不思議な顔して、こちらを見ている。
恥ずかしいなぁ・・・。

「な、何を考えてるのか知らないけど、真面目にやらないと、ホントに死ぬからね?」
「そんな事は百も承知だ。・・・こい、平次郎!」

姿を変えた平次郎には乗らないと決めていたが、今は緊急事態(?)だ。時間もないわけだし。
平次郎に飛び乗り、そのままフランシスに突っ込む。このスピードならついていける。そして、フランシスに向かってダイブした。
フランシスは、人差し指を天に向けた。そして、そのまま振り下ろし、俺に向けた・・・次の瞬間!

―ズガァアアン!

「ぐわぁあああぁああ!!」

雷が落ちた。いや、雷が俺の全身を走った。
やはり、そう簡単には返してくれないか。地面に向かって落下する俺を、平次郎が受け止めてくれた。

「まだまだ甘いよ。僕をあまり見くびらないで欲しいね。」

確かにそうだ。こいつはあの2人よりも、強さは確実に上だ。すぐに決着なんて、つくわけがない。
平次郎の上で体を起こし、拳銃を両手に持ち、フランシスに向かって乱射。さっきも避けられたわけだし、当たるはずもなく、すべて避けられてしまう。しかし、この2つ(拳銃とロッド)しか攻撃手段がないんだ。避けられたって仕方がない。

とにかく、何とかスキをつき、魂のカケラが入ったカプセルを奪わなければならない。しかし、フランシスには全くもってスキが見えない。スキだらけに見えるのだが、それは単なる罠に過ぎない。向かっていくこちらの方が、スキだらけだ。

そう考えていると、薄いピンク色に輝く光の球が、俺の方に近付き人型に変わった。その姿は子供で、セミロングの少女だった。輝きが強いせいなのか、口から上の顔がよく見えない。しかし、彼女が誰なのか、俺は知っている。

そう、彼女こそが、あのスイートピーが好きな子であり、俺の初恋の相手だ。

彼女は、何かを伝えている。しかし、何と言っているのか、分からない。そして、伝え終わったのか、突然俺の体の中に入ってきた。
何だろう。俺は何かを得た気がする。特別な何かを・・・いや、能力だ。そして、この能力の使い方を知っている。そう、一度しか使えない。だが、命中する確率は高い。
そういえば、針が刺さっていた傷が、いつの間にやら消えていた。そうか、彼女は俺を助けるために、この能力を授けてくれたのか。なら、その思いに答えなければならない。

平次郎からおり、宙に浮かび、両手を広げて静かに言う。

「フラワーイリュージョン。」

何の花かは判らないが、その花びらが俺の周りを舞った。そして、サッと指先をフランシスに向けると、花びら達は意思を持ったかのように、高速でフランシスを襲った。
フランシスは避けようとしたが、そんなのは無駄な事。誘導ミサイルのようについていく。
そして、ついには花びら達が作った竜巻のようなものに飲み込まれていった。
正直、こちらからはフランシスの姿は見えないが、魂のカケラが入ったカプセルを奪うことは出来る。何故かって?これは、その為の技だからさ。ま、一応攻撃力はあるが。

片手を少し前にだし、掌を上にして、「こっちに来い」というような手つきで動かすと、数枚の花びらが、カプセルをもって(?)俺の方にやってくる。そして、そのカプセルを手に取る。すると、フランシスを包んでいた花びら達が、だんだんと消えていった。

「くっ・・・今のは一体何だったんだ・・・って!!」

フランシスの体は擦り傷だらけであった。
何だか見てると痛々しい。

「よくもこの僕に傷を追わせたな・・・倍にして返してやる!!」
「まぁ、待てよ。これを見な。」

そう言って、フランシスにカプセルを見せた。
フランシスは驚きを隠せない様子で、いつ取ったのかと、叫び声に近い声で聞いてきた。
もちろん、返答はしてやる。「これはマジックさ。」ってね。フランシスはさらに聞いてくるが、マジックのタネを明かすわけにはいかない。とにかく、フランシスが負けを認めてくれればいい訳だから・・・。

「今回の試練、俺の勝ちだ。」
「そう、だったね・・・君の勝ちだ。」

そう、これ以上攻撃されたら困るんだ。こいつが出した試練を、俺は達成したのだから。

「おめでとう。そのカプセルを開けて、自分の体の中に収めるといい。」

フランシスに言われて、その言葉に従う。カプセルを開け、魂のカケラは自然と体の中に入っていく。それと同時に、先程の薄いピンクに輝く光の球が出ていった。あれは、彼女の魂であり、彼女の能力である。その能力を、彼女は俺に使わせてくれたんだ。お礼を言わなければ・・・。

「ありがとう。また、どこかで会おうぜ。」

彼女は笑顔を見せ、天へと昇っていった。

さて、時間を食ったわけだし・・・

「この辺で帰らせて(?)もらいたいん・・・。」
「折角だから、君に教えてあげるよ。」

え?何を?
「帰らせてもらいたいんだけど。」と言いたかったのだが、それを遮られ、フランシスは次の瞬間、信じられない言葉を言い出した。

「リースは人間だ。」


―現在時刻 0時15分 タイムリミットまで 後3時間45分―


続・・・


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