アッコ涙「胸が痛いです」…阿久悠さん送る会に1200人参列
1200人が阿久悠さんとの最期の別れを惜しんだ=撮影・鈴木健児
阿久悠さんの詩を朗読する森田公一さん。参列者の涙を誘った=東京・紀尾井町(代表撮影)
8月1日に尿管がんで死去した作詞家、阿久悠(本名・深田公之)さん(享年70)を送る会が10日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われた。会場には直筆の歌詞、日本レコード大賞受賞のトロフィーが並べられ、ゆかりの歌手ら1200人が参列。下積み時代からの盟友で作曲家、森田公一さん(67)は阿久さんの詩「友よ」を声を震わせて朗読した。
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1時間40分行われた送る会のラスト。阿久さんが作詞を、森田さんが作曲を手掛けた大ヒット曲「青春時代」(森田公一とトップギャラン)の調べに乗せ、森田さんが阿久さんの詩を朗読すると会場からはすすり泣く声が漏れた。
2人は、貧乏な学生時代に「いつかカツカレーとタンメンを食べてやるぞ」と誓い合った“戦友”だった。
阿久さんはいつも、メロディーをもらって作詞していたが、森田さんだけには詞を先に渡した。森田さんは「だから僕との曲には、彼の本音が入っていたのかな。僕が青だと彼が黄色を入れ、出来上がるのが緑色。化学変化だった。もうあの色が出ないのは寂しい」と声を奮わせた。
会場は、阿久さんの歴史であふれかえった。
ピンク・レディー「UFO」など阿久さんが書いた直筆の詞、日本レコード大賞を受賞した際のトロフィーと盾、26年間つづった日記など約40点が展示され、16人編制のストリングス(弦楽団)が尾崎紀世彦「また逢う日まで」など阿久さんの代表曲18曲を生演奏。
所属事務所の後輩でバイオリニスト、川井郁子(39)の演奏に乗せ、アカペラグループ、XUXU(シュシュ)が沢田研二の「時の過ぎゆくままに」を歌うなど、日本歌謡界の歴史を物語る“音楽葬”となった。
ゆかりの歌手も多数参列して阿久さんとの最後の別れを惜しんだ。
日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞した「あの鐘を鳴らすのはあなた」などを手掛けてもらった歌手、和田アキ子(57)=写真右=は「胸が痛いですね」と目に涙。
実は和田がデビューするため大阪から上京した際、東京駅まで迎えに来てくれたのが阿久さん。和田は「これからも心を込めて歌いたい」と恩師に誓って献花した。
最後に会場を後にした森田さんは「祭壇に向かって『遠くないうちにそっち(天国)に行くからな』と言いました」。祭壇にはウイスキーを片手にほほえむ、阿久さんの笑顔があった。
◆「舟唄」「雨の慕情」の八代亜紀(57)
「こわそうな顔してたけど、かわいいんですよ。よく『(最近は)大人の歌が迷子になっている。八代君、迷子になった虎を大通りに戻してくれ』と言っていました。それから『いつまでも男盛りだよ』とも。格言ですね」
◆「また逢う日まで」の尾崎紀世彦(64)
「何でもない言葉をあっという間に、すごいカッコいい、わかりやすい詞にしてくれた人だった。早すぎるね…」
◆「狙いうち」「どうにもとまらない」の山本リンダ(56)
「(『こまっちゃうな』からの)イメチェンが失敗して、これでヒットを出せなかったら歌手を辞めるという時に出会ったのが『狙いうち』。初めて歌詞を見た時、詞からパワーがバーンと出ていて、『うぁーカッコいい』と感動したのを覚えてます。あれで、新しい自分に生まれ変われることができました」
◆「津軽海峡・冬景色」の石川さゆり(49)
「私の30周年パーティーで、『歌い手はその曲がヒットした時に一番うまい歌い方をする。でも、さゆりは年を重ねるごとに歌も成長している。楽しみだよ』と言われたことがうれしくて。亡くなる前に、また一緒に作品を出す話があったので、寂しいです」
★「勝手にしやがれ」、「狂わせたいの」モチーフの焼酎ふるまう
会場では阿久さんの代表曲である沢田研二「勝手にしやがれ」、山本リンダ「狂わせたいの」の曲をモチーフにした焼酎=写真=もふるまわれた。発起人代表を務めたフジサンケイグループ名誉顧問・産経新聞社顧問の羽佐間重彰氏が「阿久さんのご冥福をお祈りしたい」と献杯。司会は所属事務所の後輩でキャスター、渡辺真理(40)が務めた。
■主な参列者
あべ静江、石川さゆり、五木ひろし、井上順、岩崎宏美、尾崎紀世彦、川中美幸、ゴスペラーズ、西城秀樹、島倉千代子、高橋真梨子、谷村新司、新沼謙治、野口五郎、ピンク・レディー、ペギー葉山、森進一、森昌子、森田公一、八代亜紀、山本リンダ、和田アキ子(以上歌手)、秋元康、なかにし礼、星野哲郎(同作詞家)、遠藤実、小林亜星(同作曲家)、飯田久彦、加藤和也(同音楽プロデューサー)、浅井慎平、立木義浩(同写真家)、阿川佐和子、テリー伊藤(同コメンテーター)、松本零士(漫画家)、倉本聰(脚本家)、江本孟紀(野球評論家)、奥山和由(映画プロデューサー)、岩下志麻(女優)、
半田健人(俳優)、川井郁子(バイオリニスト)=敬称略、五十音順