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HP de るってんしゃん

HP de るってんしゃん

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< 登場人物 編>



【 伊藤 】
 元システムエンジニア。初登場は二十八歳、『オーデュボンの祈り』で主人公を務める。早くに両親を亡くし、祖母に育てられた。そのためか、深く老獪した知恵に富んでいる。眼精疲労で退職、コンビニ強盗に失敗した経歴を持つが、どちらかと言えば常識人で痩身。元彼女談によると「筋が通っていて、派手ではないが、間違いがない性格」らしい。大学時代の友人からも「現実的」「私たちより大人びていて頭も切れた」と評されている。荻島から帰還後は、額屋でアルバイトをしている。

★『オーデュボンの祈り』
コンビニ強盗を起こして逃走。轟に連れてこられた荻島で、数日間を過ごす。

☆「動物園のエンジン」
主人公の大学時代の友人。病院(眼科)で再会後、電話で話をする。この数年後会社を辞めてコンビニ強盗を起こすが、そんな兆しはどこにも感じられなかった。

  「伊藤くんがどうかしたの?」
「いや、あいつがよく言っていただろう?『人間の悪い部分は動物と異なるところ全部だ』って。それを思い出したんだ」(小説新潮’01/3 p.285)

☆『ラッシュライフ』
東京にある佐々岡の画廊に、額屋のアルバイトとして出入りしていた。時々、
喋るカカシの話をする。京子のクリニックでカウンセリングを受けていた。

「そう言えば、私の画廊にも変わった青年が出入りしていた。額屋のバイトで、よくうちに来ていたんだ。経歴が怪しくてね、昔はシステムエンジニアをやっていたと言うが、警察にお世話になったという噂もあった。額屋の主人が気に入って、雇ったらしい。若くて頭も切れた。喋ってみると理路整然としていてね、額 を持って走り回っているのはちょっと似合わなかったな」(文庫本 p.223)

カカシが喋って自分に命令を出しただの、妄想を抱えて診察クリニックにやってくる患者たちを思い出した。(文庫本 p.298)

☆ 『重力ピエロ』
青葉山の橋で、同世代の泉水に声をかける。久しぶりに仙台に戻ってきたらしい。神様のレシピ、未来を預言するカカシの話をする。その後、泉水に駅の近くまで車で送ってもらったが、結局お互いの名前は言わずじまいだった。

「数年前に変な島に行ったことがあるんですよ。そこで学んだことがあるんです」 (文庫本p.347)

☆「ライフ システムエンジニア篇」
主人公の勤める会社が納入した、企業の社員用システムがトラブルで稼動しない。部下の佐藤が、以前の担当者「伊藤」の名前を出す。

「このプログラム、伊藤さんが設計したところで、やけに難しいんですよ」
(『秘密。私と私のあいだの十二話』文庫本p.141)



【 河原崎(父)】
 塾を十一年間細々と経営していたが、突如出現した大手予備校に飲み込まれて人生に行き詰まり、息子の大学の入学式の日に、二十階建てのマンションの十七階から飛び降りて亡くなった。ブラジルのサッカー選手がトレードマークにしていた外国製の赤いキャップを息子とお揃いで被り、流行りに倣って鍔を山折りにしていた。駄洒落好きで、言葉遊びと推理ゲームを好んでいた。葛岡の霊園に墓がある。「動物園のエンジン」では生前の姿を見せ、『ラッシュライフ』には息子が登場している。

★「動物園のエンジン」
主人公の私と同じ大学出身で五歳年上の先輩。三十代後半なのに若く子供じみて気楽に見えていたが、一年後にビルの屋上から飛び降りる。

☆『ラッシュライフ』
死から三年後、息子は父のことを思い出す。

非常階段を昇った父は、きっと最上階の二十階まで行く途中で疲れてしまったのだろう。途中で、「このあたりでも良しとするか」と思ったに違いない。それゆえの十七階だったのだ。ゴール手前八合目強。彼の人生はいつもそんなところで挫折した。(文庫本p.26)

河原崎は、父を思い出した。動物園に毎日通いつめていたこともあった。
(文庫本p.130)



【 黒澤 】
 本業は空き巣、副業は探偵の一匹狼。三十五歳で『ラッシュライフ』に初登場。泥棒に入った家の住人の面倒臭さと不安を取り除くために領収書を置いていくという、前代未聞の粋な泥棒ぶりを発揮する。その後、探偵として「サクリファイス」の主人公に。本業の技術と人間観察をする習性を活かして謎解きに挑んだ。目つきが鋭く、無精ひげが似合う、ユーモアを備えたインテリ系。シャーロック・ホームズやトム・ソーヤ、『定義』という言葉が嫌い。瞬間移動ができると噂され、カウンセラーに向いているとよく言われる。

★『ラッシュライフ』
舟木宅へ泥棒に入った後、老夫婦強盗に遭遇。二十万円を奮発する。その後、同級生の佐々岡と再会。探偵を副業とすることを思いつく。

☆『重力ピエロ』
「優秀でリーズナブルな探偵」として、高木の紹介で泉水から依頼を受ける。ついでに調査対象の葛城の部屋で泥棒。その後、泉水の父からも調査の依頼を受け、見舞いも兼ねて黄色いウイキョウの花を持ってきた。

「俺の仕事には人間観察が欠かせない」
「探偵ですからね」
「いや」黒澤が困った顔を見せた。「本業は別にあってね、探偵はどちらかといえばその補助的な仕事だな」(文庫本p.173)

★「サクリファイス」
探偵として、山田という男を捜して小暮村へ行く。

?『砂漠』
西嶋のバイト先の警備員古賀から、麻生晃一郎の調査を依頼された。

「古賀さんが調べてくれたんですか」
「東京にいる知り合いに頼んだんだ」(単行本p.277)



【 佐々岡 】
 宮城県出身で大学の時の黒澤の同級生。初登場は『ラッシュライフ』。東京の戸田画廊で十年働いた後、独立を目指したが、戸田に手回しされ失敗。診療クリニックを経営している京子と結婚したが上手くいっていなかった。生真面目で融通が利かず、何事も設計図を引いてからでないと行動できない性格。完璧主義の小心者で、煙草は吸わないし酒も飲めない。両親が幼い頃に離婚したためか人間関係に対する執着が強かったが、黒澤との再会をきっかけに思い切って妻と離婚。新しい人生を歩み始める。

★『ラッシュライフ』
河原崎の言葉に唆されてマンションへ。間違って黒澤の部屋に入ってしまう。

☆「サクリファイス」
黒澤に頼まれて、柿本の作品を東京の画廊に紹介する。

学生時代の友人が、銀座の画廊で働いていたことがあったため、その伝手を利用すればどうにかならないものか、と安直に考えた。(別冊東北学vol.8 p.246)



【 高橋 】
  宗教団体の教祖で、事件の法則やルールを見極める天才。仙台で起きたビジネスホテルでの連続殺人事件を解決に導き、一躍有名になった。それをきっかけに信者が激増。初めのうちはテレビ局や雑誌記者たちから英雄扱いされていたが、滅多に姿を現さず、取材に非協力的だったため「カルト教団の教祖」と叩かれるようになる。三十代半ばで、端正で美しく神秘的な外見。背中にはバツ印の火傷痕がある。「未来が見える」と言われ祭り上げられるが、本人に宗教をやっているつもりはなく、謙虚で威張ったりはしない。

?「動物園のエンジン」
主人公の学生時代の友人で動物園職員の恩田がのめり込んだ新興宗教の教祖。

恩田は新興宗教にのめり込み、そのまま役所を辞めた。最近も、妻が街で見掛けたと言うが、集会の最中らしくて声がかけられなかったらしい。
(小説新潮’01/3 p.293)

★『ラッシュライフ』
河原崎と塚本が信仰している宗教団体の教祖。夜のニュース番組に珍しく出演。

☆『重力ピエロ』
郷田順子と一緒に春の部屋に勝手に入った泉水がふと思い浮かべた、仙台で話題の宗教団体の教祖。

市内では奇妙な宗教団体が、「未来が見える」教祖を持ち上げて、騒いでいることも頭を過ぎった。(文庫p.356)



【 老夫婦強盗 】
 たまたま鉄砲が手に入ったので、金目的ではなく、人生の充実のために強盗をはじめた夫婦。真っ白い髪に眼鏡をかけた細長い顔の男性と、背が低く丸顔の女性。二人とも腰は曲がっていないが、七十代半ばという様子。通りすがりの人に道を尋ねた後、惚けているフリをして人通りのない場所へ導き、突然銃口を向けるという手法を使っている。

☆『ラッシュライフ』
黒澤の財布を奪おうとした。黒澤の奮発で、舟木宅から収穫した現金二十万円を手に入れる。

「私らみたいな年寄りが、若い人達と対等に話し合うのにはね、鉄砲があって
ようやく五分五分ってところなんですよ」(文庫本p.110)

☆「サクリファイス」
柿本花江の「お金よりもね、何でもいいから、やったね、とか喜んでみたいじゃないですか」という言葉を聞いた黒澤が思い出す。

反射的に黒澤は、以前、遭遇した老夫婦強盗のことを思い出した。拳銃を持って、黒澤の財布を奪おうとした、老夫婦のことだ。「今まで真面目に生きてきたから
羽目を外そうと思った」という姿はどこか現実味がなかったが、確か彼らも同じくらいの年齢ではなかったか、と思った。あれも言ってしまえば、やったね、と喝采を叫びたかったのかもしれない。(別冊東北学vol.8 p.219)

☆「フィッシュストーリー」
橘麻美と瀬川と同じ飛行機に乗り合わせる。この時、ハイジャックに遭遇した。

「そうなんですよ。お金が少し貯まったので、今生の思い出に」という老女の声は通りがよく、すっとわたしまで届く。
「悪いことをして溜めたお金ですが」と老人が、冗談のつもりなのか、笑った。
(小説新潮’05/10 p.22・23)



【 四人組の銀行強盗 】
 関東で話題になっている銀行強盗。海外の強盗にヒントを得て、頬に蛍光色のビニールテープを×印にして付けている。映画館爆破未遂事件に遭遇したのをきっかけに結成。

★『陽気なギャングが地球を回す』
★『陽気なギャングの日常と襲撃』

人間ウソ発見器の成瀬、演説の達人の響野、精密体内時計の雪子、天才スリ師の久遠の四人。基本スタイルはスーツ。ロマンを求めて横浜にて活動中。

☆『チルドレン』
お面銀行強盗事件の人質になっている時、永瀬が鴨居に語った銀行強盗。

それから彼は、関東で最近起きている四人組の銀行強盗も同じ趣向も同じ趣向を使っているらしいよ、と言い足した。(単行本p.34)



【 祥子 】
 響野の妻。椎名の叔母。三十代半ばにしては若く颯爽としていてスタイルが良い。背が高く、艶のある長い黒髪を持っている。『ギャング』シリーズの常連メンバー。映画記念の掌編「海には、逃がしたのと同じだけの良い魚がいる。」で“五人目の仲間”として注目される。夫が雛鳥みたいに騒がしいのが唯一の欠点。

★『陽気なギャングが地球を回す』
★『陽気なギャングの日常と襲撃』
響野の妻。夫と一緒に喫茶店を経営している。

☆『アヒルと鴨のコインロッカー』
椎名の祖母。少々変わった旦那さんがいる綺麗で品があると椎名のお気に入り。

「変人には二種類あるんだよね。敬遠したいタイプと、怖いもの見たさでしばらく付き合ってみたいタイプ」祖母が以前、そう言っていたことがある。実際、彼女が結婚をした男性は「生真面目で、好印象」という雰囲気からはかけ離れた人だったので、おそらく彼女は後者の変人を気に入ったということなのだろう。(単行本p.48)

★「海には、逃がしたのと同じだけの良い魚がいる。」
響野の妻。自分の甥である椎名のことを友里絵に話す。

祥子は、自分の甥が最近すっかり大人びて、ボブ・ディランそっくりの声で歌を聞かせてくれる、これがまた、なぜか泣けてくるほど上手なのだ、とそんな話をしてくれた。(映画『陽気なギャングが地球を回す』公式ガイドブックp.74)



【 春 】
 泉水の弟。恰好良くて、運動能力も抜群で、ユーモア感覚もあり、絵も上手。魅力的で目を惹く外見のため、モテモテでストーカーに遭ったこともある。しかしレイプで生まれたことにより性的なものに嫌悪感を抱いているため、恋人を作ろうとはしない。尊敬する歴史上の人物は、ガンジーと徳川綱吉。ピカソが死んだのと同じ日、1973年4月8日生まれ。ピカソを親しげにピカッソと呼んでいる。初登場の『重力ピエロ』では二十七歳。仙台市内に描かれたグラフィティアート・落書きを消す仕事をしている。

★『重力ピエロ』
泉水の弟。自分で順番や決まりごとを作り、縁起を担ぐ習性が見られる。

「駐車場案内の看板に、『God』と描いてあった」(文庫本p.79)

「白いビルの壁の、『talk』を消したんだ。そうしたら、翌朝の新聞にまさに同じ場所が写っていて、隣の朝日不動産が燃えたと記事にあった」(文庫本p.80)

?『アヒルと鴨のコインロッカー』
椎名が河崎と本屋を襲った後、車に乗るために戻った不動産屋の空き地の近くで「talk」のグラフィティアートを制作していた。

暗くて見えなかったけれど、目を近づけると「管理地」の文字と、不動産屋の名前と電話番号が読めた。(単行本p.125)

どういうわけか、シンナーの匂いがした。左右を見る。この近くに、壁に落書きをする人間でもいるのだろうか。(単行本p.130)

☆「旅路を死神」(『死神の精度』)
「God」のグラフィティアート制作中に千葉と森岡に遭遇する。

駐車場の敷地の一番奥の場所で、ブロック塀に向かい合っている青年の姿があった。手を激しく揺すり、かがみ、左右に移動している。(単行本p.184)

「GOD」青年は静かに口を開いた。「英語で描いた」(単行本p.185)



【 初老のホテル従業員 】
 仙台駅を東口へと抜け、カーブする満ちを緩やかに曲がり、大きな通りをしばらく進んだところにある「仙台東ビジネスホテル」のフロントの男。六十は過ぎているように見えるが、カウンターを飛び越えて、つかみかかってくるほど身体は丈夫。案外物分りが良い。仙台の名物であるカスタード入りの菓子が好物。

?『ラッシュライフ』
高橋が解決に導いた、ビジネスホテル連続殺人事件の現場にいたかもしれない。

「いや、事件がはじまったのは三年前だったかなあ。東口のビジネスホテルで絞殺された男が最初だったはずだ」(文庫本p.27)

☆『重力ピエロ』
駐車場とビジネスホテルの間に立つブロック塀に、「century」のグラフィティアートを描かれて激怒。勘違いして泉水につかみかかる。

軍隊経験があるのかもしれない。もしくは定年退職した警察官か、挌闘家だ。
でなければ、あんなふうに眼で人を噛み殺すような顔ができるわけがない。
ビジネスホテルのカウンターにいるのには不釣合いの迫力だ。(文庫本p.125・126)

☆「旅路を死神」(『死神の精度』)
千葉と森岡が泊まることになった、仙台駅東口のビジネスホテルの受付。

森岡は、私が逃げるのを恐れたのか、二人部屋を申し込んだ。受付カウンターにいた初老の男は、退役軍人のような姿勢の良さで、「あんたたち、ホモかい」と私と森岡を交互に見た。(単行本p.182)



【 田村蕎麦 】
 仙台駅の向こうの公園脇にある田村蕎麦店。主人は顎が長く、奥さんは愉快な人。

☆『重力ピエロ』
店の裏手の駐車場のブロック塀に「ago」というグラフィティアートを描かれてしまったので、春に消すのを頼んだ。

「蕎麦屋のおばさんが愉快な人でさ、『あの落書きは、うちの旦那の顎が前に出ているのを茶化しているんだ』って笑ってたよ」春はすでに、落書きを消す商談を、 蕎麦屋の店主と済ませていた。
「『ago』と顎を言い換える駄洒落なんて、中学生だってやらない」
「田村蕎麦では、やるんだよ」(文庫本p.180)

☆『アヒルと鴨のコインロッカー』
ボブ・ディランを口ずさみながら信号待ちをしている椎名に声をかける。

「うちのかみさんが若かった頃はねえ。それ、好きだったわけよ。って言っても、昔だな。ロングロングアゴー。長い顎ってな」(単行本p.74)



【 陣内 】
 『チルドレン』の初登場にして多くのファンを獲得した、異彩を放つ家裁調査官。「バンク」の大学一年生から「チルドレン2」の三十二歳まで、他の登場人物よりも長いスパンで破天荒な姿を見せている。思い立ったらすぐ行動、立ち向かうことが基本方針の負けず嫌い。家裁では少年事件担当。口の減らない男で、理屈にならない理屈で人を困らせるが、少年たちには何故か慕われている。最低な父親に憤っていたが、一発殴って吹っ切れた。歌・ギターが上手く、パンクロックのバンド活動もしている。

★『チルドレン』
少年事件担当の家裁調査官で武藤の先輩。大学生1年生の時に銀行強盗に遭い人質になるも、ビートルズの名曲をアカペラで口ずさむ。

「ほら、これどういうことですか?白いカラスもいるじゃないですか。偉そうに決めつけないでくださいよ。これだから、大人ってのは嫌なんですよ」
   その時も、陣内さんはまるで怯むことがなく、平然とこう言ったらしい。
「それは白じゃない。薄い黒だ」(「チルドレン2」単行本p.190)

☆『砂漠』
西嶋が高校時代に万引きで警察に捕まった際、家裁調査官として担当した。

「家裁の調査官が変な調査官でしたけどね」「それからね、本をもらったんですよ、本を。家裁の調査官から、サン=テグジュペリのね、文庫をもらったわけでね」
(単行本p.228)

*補足*
ずいぶん前に一人だけ、喧嘩の理由を問われて、「平和の実現」と答えた少年がいたけれど、それは貴重な方だろう。(「チルドレン2」単行本p.197)

 武藤の担当した少年が喧嘩の理由を「平和の実現」と言ったため、西嶋を担当したのは陣内ではなく武藤だという説もある。しかし、西嶋は喧嘩ではなく万引きで警察に捕まって家庭裁判所に送られたということ、陣内が担当した少年の「白いカラス」の話の喋り口調が西嶋によく似ているということ、武藤よりも陣内の方が「変な調査官」という表現がしっくりくること、陣内は文庫本をよく使うことから、陣内である可能性の方が高い。



【 千葉 】
 雨男の死神。調査対象の人間を一週間調べ、その人間が死ぬことを「可」とするか今回は「見送り」とするかを判断する仕事をしている。『死神の精度』で初登場。やるべきことはやるが、余計なことはしない主義。姿や年齢は仕事のたびに変わるが、読者にとっては恰好良い外見のイメージが何故か強い。味覚がなく、食事や睡眠を取らなくても活動できる。殴られても痛くないし、運動しても疲れない。ジャンルを問わずミュージックが好きで、よくCDショップへ行く。仕事をする時は、いつも雨が降る。

☆『重力ピエロ』
春が、ビジネスホテルの近くで会った千葉と奥入瀬の話をしたことを思い出す(【春】☆「旅路を死神」参照)。文庫化に際して加筆された。

 「そういえばこの間、あのビジネスホテルの近くで」と地下道を出た後で春が言った。「偶然会った人と喋っていて、思い出したんだ。昔、奥入瀬にみんなで行った時のことを」(文庫本p.152)

★『死神の精度』
死神。五件の仕事をこなした。報告は「可」にすることの方が多い。

「十和田湖からの川の渓流で、美しいよ。俺は一度だけ、観に行ったけど、とても良かった。十和田湖や奥入瀬は、安心する」(「死神の精度」単行本p.189)

☆「魔王」
安藤の勤めている会社で、体調不良の社員に代わって、今だけ、資材管理部を手伝っているという名目で、安藤を調査中。

「実は今回は、あんまり調査の時間が割けなくて、自分としては納得がいかない」彼が去り際に言うので、俺は眉根を寄せる。(単行本p.126)。



【 犬養 】
 ムッソリーニを彷彿とさせる政治家。「魔王」では三十九歳にして野党未来党の党首。挑発的かつ自信に溢れる、はっきりとした具体的な物言いで、民衆の心を捉える。反発を感じている人間も多く、何度も襲われたことがあるが、なぜか毎回無事。威厳のある魅力的な声の持ち主で、宮沢賢治の熱心な読者。五年後の「呼吸」では内閣総理大臣に就任し、第九条を含めた憲法改正の国民投票へとこぎつける。

?「死神対老女」(『死神の精度』)
竹子が無敵の政治家の話をする。

「無敵の政治家が年取ってから、証人喚問に呼ばれたり、有名なスポーツ選手が大きな事故を起こすのを見てると、ほんと、何が起こるか、死ぬまで分かんないって感じ」(単行本p.245)

★『魔王』
ムッソリーニを彷彿とさせる若手議員。安藤にファシズムの危惧を抱かせた。

「政治を任せてくれれば、五年で景気を回復してみせる。五年で、老後の生活も保障しよう。」「五年だ。もしできなかったら、私の首をはねればいい」
(エソラvol.1 p.37)



【 田中 】
 容姿や年齢、職業は全く異なっているが、「田中」という名前である人物。足が不自由という点が共通しているため、一部の読者の間では「田中一族」と呼ばれている。

☆『オーデュボンの祈り』
伊藤にオーデュボン、リョコウバトの話をしてくれた代書屋。二階建ての狭い木造の家に住む。三十代だが老けた容貌。右足が不自由。

半端な引き摺り方ではなかった。右足が付け根から大きく曲がり、壊れた人形の足が回るように、前に出る。軸の歪んだ車輪が回転するようにだった。一歩歩くだけでも人の数倍は体力を消耗しそうだ。関節の障害なのだろうか。本人は慣れた様子で歩いているが、僕にはかなりの重労働にも見えた。(文庫本p.94)

☆『陽気なギャングが地球を回す』
☆『陽気なギャングの日常と襲撃』
合鍵作りや盗聴の職人。変な発明品も売っている。百キロ以上もある身体で、外出嫌いの二十代。純粋なA型で部屋は片付いている。右足が不自由。

右足が不自由で引き摺って歩くことしかできない。それが先天的なものなのか、子供の時に遭遇したなんらかの事故が原因なのか、久遠は知らなかった。もしかしたら、外出嫌いの説明のために、わざわざ自分ででっち上げただけ、という可能性もあった。(1文庫本p.128)

☆『グラスホッパー』
元カウンセラーのホームレス。眼鏡を掛けた痩せた男。40代ぐらいに見える。霊が見えるらしい。足が悪いのか、右手に杖のようなものを持っている。

つまり、隣にいる、痩せこけた「虫眼鏡」帽子の男が、田中というわけだ。足が悪いのか、右手に杖のようなものをつかんでいる。(単行本p.82)

☆「吹雪に死神」(『死神の精度』)
田村幹夫の間違い。単行本95ページ8・10行目の「田村」が第一刷は「田中」と誤って記述されている。現在の最新発行第十刷では見られない、幻の田中。

☆「魔王」
サッカー日本代表の攻撃的ミッドフィルダー。アメリカ戦に出場後、軍人に足と心臓を刺されて死亡する。

「田中選手の足を刺して、動けなくしてから、心臓を刺した。そう言っています」(エソラvol.1 p.136)



【 東堂・麗子 】
 『アヒルの鴨のコインロッカー』の麗子と『砂漠』の東堂。二人とも無表情美人。

麗子・・・琴美が勤めていたペットショップの店長。血が通っていない、まるで陶器のような白い肌と赤い唇、冷たいビー玉のような目をしている。華奢な体型でいつも人形のように無表情。色気や肉感的な魅力というものはなく、鑑賞物としての美しさを持っており、30代半ばであるのに肌には皺ひとつない。

東堂・・・仙台出身の大学生。長髪で、顎がとがり、ほっそりとしている。雑誌のモデルや女優業をしているといわれても納得できる容貌。作り物のようなつるつるの肌と薄い唇を持ち、目が大きく、鼻筋も通っているが、人形のように美しくも無表情。西嶋が連れてきたシェパードを家で飼うことになる。

 二人ともフルネームが出てこないため、読者の間で同一人物が浮上。シェパードをきっかけに、東堂は卒業後ペットショップを経営するのではないかという推測である。しかし『アヒルと鴨』と『ギャング1』と「バンク」(『チルドレン』)の時間軸は同じであるため、もしも同一人物であるなら、「バンク」から約十年後の「チルドレン」で高校生の時の西嶋に陣内が出会うことはありえないことになってしまう(【陣内】参照)。また、東堂は大学卒業後ケーキ職人の修行をはじめることになっているので、同一人物である可能性はやはり低い。しかし同一人物とまではいかなくとも、例えば親戚であるだとか、何らかの繋がりはあっても良いのではないだろうか。今後の作品で何かヒントが出てくるかもしれない。



< エピソード 編>



【 映画館爆破未遂事件 】
 横浜の映画館で起きた事件。インターネットに爆破予告を載せた犯人が、自家製の爆弾を映画館の座席の下に設置した。その座席に座ったのが、成瀬と映画を観に来ていた響野。雪子と久遠も居合わせ、四人で犯人である劇場の係員を懲らしめる。一ヵ月後、同じ映画館で再上映会があり、爆破未遂事件の日の客が無料招待された。

☆『ラッシュライフ』
高橋が真相を言い当てた事件。

横浜で起きた映画館の爆破未遂事件というのもあった。河原崎の記憶にもある事件だ。爆弾の仕掛けられた座席の位置にルールがあったのだ、と塚本は説明した。(文庫本p.233)

★『陽気なギャングが地球を回す』
成瀬、響野、雪子、久遠が遭遇した、ギャング結成のきっかけとなった事件。



【 お面銀行強盗事件 】
 人質(銀行員と客)全員が縁日のお面を被らされた事件。強盗犯は閉店間際に銃を持って侵入。鼠色の背広姿で大きめのサングラスをかけた、身長差約十センチの男二人。口元には塗装工がするようなマスクをしており、頬に赤いビニールテープを×印にして貼っている。手際とアイディアが良く、警察に包囲されるも二億円を獲得した。

☆『ラッシュライフ』
豊田の乗ったタクシーのラジオでニュースとして流れていた事件。

仙台駅前の銀行で人質を取った犯人が立てこもっているらしい。(文庫本p.306)

人質の一部は解放されたらしいが、人質達はそれぞれ、縁日で売っている面を被らされていた、とニュースは繰り返している。(文庫本p.307)

★「バンク」(『チルドレン』)
鴨居、永瀬、陣内が人質となった事件。



【 市長殺人事件 】
 現職の小川市長が突然、行方不明になり、公衆トイレで死体となって発見された事件。産業廃棄物の処理だとか、そういう問題があったらしい。

★「動物園のエンジン」
夜の動物園で、主人公と河原崎(父)が推理した事件。

☆『ラッシュライフ』
数年前に、高橋が真相を言い当てた事件。

「例えば、あの数年前に市長が殺された事件があっただろう?」
「あの時も、高橋さんは天才を見せた」(文庫本p.223)



【 レッサーパンダ窃盗作戦 】
 地方都市の小さな動物園で、幼い姉弟がレッサーパンダを盗もうとした出来事。姉が柵の中に入ってレッサーパンダを袋に入れ、その袋を抱えて弟が車椅子で逃げる作戦。この動物園は、宮城県仙台市にある八木山動物公園がモデルである。

☆「動物園のエンジン」
恩田が勤めていた動物園に、レッサーパンダはこの時いない。

「あ、あれは前まであそこにレッサーパンダがいたんで、その時の看板ですよ」
(小説新潮’01/3 p.281)

★『アヒルと鴨のコインロッカー』
髪の毛を編んだ小学校低学年くらいの少女と、背丈も歳もさらに一回りほど小さい、車椅子に乗った少年シュウちゃんが計画。少女が小学校高学年になった頃、見事作戦をやり遂げる。

「盗めるかな」車椅子の少年が身体をくねくね動かして、大声を出した。「パンダ盗めるかな!」
 しっ、と少女がたしなめる。「大丈夫」と言った。「わたしが、こっそり入って、袋に入れるから」
「うん、うん」車椅子の少年は真剣に首を振った。
「シュウちゃんも手伝うんだよ」
「うん、僕にもやれるかな」
「袋を渡すから、車椅子で逃げるんだよ」(文庫本p.215)

☆「透明ポーラーベア」
優樹と千穂が訪れた動物園で、レッサーパンダが盗まれたようだ。

サル山の横の区域にいる、レッサーパンダは特に可愛らしかったけれど、ものものしいゲージで囲まれていて、残念だった。以前はそんなものはなかった気がするから、もしかすると、レッサーパンダに手を伸ばしたり、抱えて持って帰ろうした輩がいたのかもしれない(『I LOVE YOU』単行本p.19)



< キーワード 編>



【 足が悪い 】
 足に元々ハンディキャップがある、もしくは物語の中で足を傷める人物が数多く登場する。足の他に、『チルドレン』では盲目の永瀬、『砂漠』では腕を失った鳥井、『アヒルと鴨』では鼻の曲がった犬や、尻尾の先が折れ曲がった猫も登場している。

☆『オーデュボンの祈り』田中  [ →【田中】参照 ]

☆「動物園のエンジン」 マンションの窓から外を眺める少年

「あの子はどうやら足が悪いらしいんです。しかも病気がちで外にも出られない」
「だからどうした?」
「いつもああやって外を眺めているらしいんですよ」(小説新潮’01/3 p.293)

初老の男 主人公が目撃した長澤さん似の男。
   (『グラスホッパー』の田中だという説もある)

視線をやると、男が一人足を引き摺りながら入って来ていた。地下鉄構内で生活をする浮浪者とは違い背広姿ではあったが、通常の社会人とも違うように見えた。定年退職を過ぎたあたりの年齢だ。(小説新潮‘01/3 p.293)

☆『ラッシュライフ』 井口の息子 豊田と同期入社だった男の息子。

彼の前には車椅子に乗った少年がいた。井口はそれを押している。車椅子に座っているのは、井口の不幸そのものなのか、それともかけがえのない幸福であるのか、豊田には見極められない。(文庫本p.250)

ケンジ 豊田を襲った、オヤジ狩りの若者。

豊田は引き金を引いていた。短いが銃声が響いた。撃った自分が驚いた。若者の悲鳴が聞こえる。右足の太股に弾が当たった。(文庫本p.210)

☆『ギャング1』 田中  [ →【田中】参照 ]

薫 雪子の息子である慎一の同級生。

「僕のクラスの同級生。背は高いんだけど、痩せてて。足がね生まれつき、悪いんだ。股関節がおかしいんだって。松葉杖を突いてる」(文庫本p.171)

☆『アヒルと鴨』 シュウ [ →【レッサーパンダ窃盗作戦】参照 ]

江尻 書店店長の息子で“ペット殺し”の犯人。

「ただ、俺は、かなり深く刺した」しばらくして、河崎が言った。「江尻の足を
ひどく刺した」
「え?」
「死ななくてもいい。せめて、歩けなくなればいいな」
「そんな、生々しいことを」と顔をゆがめると、河崎が笑った。(文庫本p.353)

☆『グラスホッパー』 田中  [ →【田中】参照 ]

☆「旅路を死神」 深津 森岡が誘拐された時に監禁部屋にいた男。

「松葉杖をついたおっさんだよ。俺と同じ部屋で、ずっと監視してやがった。」
(単行本p.195)

中年の男だ。頭髪がわずかに薄い。眉が太く、目が垂れていた。そして、左足を引き摺っていた。手で足を引っ張るようにして、前進している。(単行本p.230)

☆「魔王」 田中選手 [ →【田中】参照 ]



【 神様のレシピ 】
 喋るカカシ優午の未来が分かる理由を端的に表した言葉。カオス理論に基づく。

★『オーデュボンの祈り』
優午と伊藤の話を聞いた日比野が口にした表現。

「私はおそらくそうやって未来を知っています。人よりも数多く、情報を正確に知っているのでしょう。だから、ジューサーに入れれば、未来が分かります」
「神様のレシピだ」日比野が表情を変えずに言った。「未来は神様のレシピで決まる」
 錯覚ではあったが、カカシはうなずいたかのように見えた。「神様のレシピにはとても多くの材料が並んでいて、贅沢です」
 僕はそれをとてもいい響きの言葉だ、と思った。(文庫本p.38)

☆『ラッシュライフ』
佐々岡が黒澤に喋った、伊藤から聞いた言葉。

「『未来は神様のレシピで決まる』と彼はよく言うんだ。たぶん彼の言う『神様』は、普遍的な何かを指すんだろうな」(文庫本p.224)

黒澤は、佐々岡をじっと眺めた。「俺たちが今日ここで再会したのも、『神様のレシピ』に書いてあることなのかもしれないな」(文庫本p.224)

☆『重力ピエロ』
泉水が伊藤から聞いた、変な島の話に出てくる言葉。

「レシピ」唐突に出現した単語に驚いた。
「その島でね、教えてもらったんです。未来は神様の匙加減で決まるもので、
いや、すでに決まっていて、僕たちがじたばたしたところで変わらない」
「神様のレシピ?」
「神様のレシピで決まるんです」(文庫本p.348)

☆『グラスホッパー』
鯨が田中から聞いた、案山子が喋る話の本(『オーデュボンの祈り』)の話に出てくる言葉。

「最近、読んだ本にこういうのがありました。未来は神様のレシピで決まる、と」照れ臭さを混ぜながら、言った。(単行本p.158)

「どちらが小説で、どちらが現実か、なんてどちらかにしかいない人間には判断できないですよ。」(単行本p.159)



【 ジャンプ・ランプ・ギャング 】

☆『重力ピエロ』
黒澤が郷田順子の名刺のロゴマークを見て思った単語。

「JLG」黒澤が首をひねる。「ジャンプ、ランプ、ギャング、の略か?」
「ジャン・リュック・ゴダールを思い出しますけどね」(文庫本p.176)

☆「バンク」(『チルドレン』)
「バンク」内の小タイトルに使われている単語三つ。



【 天々 】
 架空の全国チェーンの居酒屋。

☆「チルドレン2」(『チルドレン』)
武藤が陣内に誘われて、仕事帰りに寄った居酒屋。

居酒屋の「天々」は、座敷とカウンターをあわせるとかなりの広さがあった。
平日のまだ、夜七時であるのに賑わっていた。駅前の小さな繁華街、その一角にある飲食ビルの地下一階で、店内は煙草と湯気と、酔客の騒ぎ声で濁っている。値段が安いせいか、学生もいれば、会社員もいた。(単行本p.188)

☆「魔王」
安藤が同僚の満智子や、旧友の島と行った居酒屋。

ごく普通の居酒屋だった。「天々」という名前の全国チェーンで、安価の割に料理が美味しいため、サラリーマンには人気がある。(エソラvol.1 p.108)

☆『陽気なギャングの日常と襲撃』
藤井と響野が、幻の女を探すために訪れた居酒屋。

「天々」は全国チェーンの居酒屋だったが、最近、会社の裏手の細長いビルの三階に、屋根裏部屋のような形態の支店ができた。(単行本p.41)



【 藤沢金剛町駅 】
 東京にある架空の駅。

☆『グラスホッパー』
寺原長男が車に撥ねられた場所が、この駅前の交差点。

藤沢金剛町の地下鉄駅、一番北側の連絡口のすぐ脇にセダンは停車している。目の前には、混雑した交差点があった。(単行本p.4)

☆「魔王」
安藤が佳苗から誘われたロックバンドのライブの、会場の最寄り駅。

藤沢金剛町の駅から徒歩十分ほどの、古いビルの地下にあるライブハウスだ。
(エソラvol.1 p.108)



【 グラスホッパー 】

★『グラスホッパー』
題名。バッタのこと。槿が鈴木に「飛びバッタ」の話をする。

「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌しくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタ、だ」(単行本p.152)

☆「魔王」
繁華街から二本裏道へ逸れた場所の地下にある、安藤の行きつけの「ドゥーチェ」というバーで、マスターが安藤に出した緑色のカクテルの名前。

気づくと前にマスターが立っていて、長いグラスを置いた。綺麗な緑色をした
カクテルで、マスターを窺うと「グラスホッパー」と教えてくれる。カクテルの名前だとは一瞬気づかなかった。
「それ、バッタっていう意味だっけ?」
「グラスホップ、ホッパー、ホッペスト」マスターが小気味良いリズムで無表情のまま言った。特に意味があるわけでもなく、単に、音を楽しむために言っただけらしい。(エソラvol.1 p.53・54)



【 ジャック・クリスピン 】
 架空のミュージシャン。音楽のジャンルはおそらくロック。生存は不明である。

★『グラスホッパー』
岩西が心酔し、よく言葉を引用するミュージシャン。

「あのジャック・クリスピンも言っていただろうが、『時間を守れば身を守る』ってな」と言ってくるに違いない。(単行本p.39)

☆「フィッシュストーリー」
ロックバンドを組んでいる繁樹たちが敬愛しているミュージシャン。

ジャック・クリスピンに関しては日本での知名度は低く、海外の音楽雑誌を英和辞典片手に読み、輸入されてくるレコードを必死に集め、それを何度も聴いていた。(小説新潮’05/10 p.22・23)



【 ガブリエル・カッソ 】
 三本の映画を遺してこの世を去ったとされる、架空の映画監督。代表作は『抑圧』。架空であるにもかかわらず、『ガブリエルカッソ研究』(http://www.geocities.jp/g_kasso/)なるウェブサイトまで存在している。

★『グラスホッパー』
蝉が仕事後、水戸の家で観たケーブルテレビの放送、映画『抑圧』の監督。

ガブリエル・カッソの『抑圧』。監督名も知らなかったし、題名も地味だった。
(単行本p.61)

☆「呼吸」(『魔王』)
島と会話をしている時に潤也が口にした、孤高の映画監督。

「昔ね、三本しか映画を撮らなかった、孤高の映画監督がさ、ある評論家にこう言ったらしいよ。『リアリティ、リアリティとうるさいが、映画ばかり観ている
おまえはさぞかし、現実社会に詳しいんだろうな』って」
「理屈っぽい監督だな」
「蛍のように輝く森のシーンが綺麗だったのを、覚えている」(エソラvol.1 p.108)

☆『陽気なギャングの日常と襲撃』
【軟禁】の項で『抑圧』が引用されている。

ガブリエルカッソ、抑圧「俺はこの新聞配達所に―されている。いや、世界のどこにいても―されている。唯一解放されるのは、配達すべき朝刊に、ナイフで傷を作るその瞬間だけ。その程度だ!」(単行本p.177)



【 劇団 】

☆「恋愛で死神」(『死神の精度』)
荻原と古川朝美が手に入れた、チケット入手困難な劇団。

「芝居のチケットなんです」荻原が説明をしてくれた。人気のある劇団の公演で、チケットが手に入りにくいらしい。
「それもあれか、得意の、行列を作って入手するたぐいのものか」
「行列って」と店長が笑う。「そうね、本当は並んで取るんだけど、でも、わたしはその劇団にコネがあるから」(単行本p.157)

★『陽気なギャングの日常と襲撃』
鮎子にチケットを送り、雪子に協力してくれた、奥谷奥也の劇団。

「喜劇役者の舞台劇らしいんですよ。今度、横浜でもやるらしくて」
「有名なの?」
「美由紀ちゃんが言うには、すごく人気あるらしいんですよ。チケットは入手困難で」(単行本p.77・78)



【 ランナウェイ・プリズナー 】
 架空のテレビドラマ。脱走した囚人が、ひたすらに逃げるストーリー。番組の最後にはいつも、「十五年逃げ切ればいいんだろ?楽勝だぜ」と決め台詞が発せられるのがパターン。しかし最終回では、主人公はむざむざと刑務所に戻った。

★「籠城のビール」(『終末のフール』)
暁子が自殺をする前日に辰二と喋った、昔のテレビドラマ。

「わたしたち、どうして逃げてるのかな、悪くないのに」と暁子は冗談めかして、言った。「まるで、あの、何とかプリズナーみたい」
「でもよ、よく考えれば、あのプリズナーはしょせん殺人犯だったんだよな。あんまり応援するんじゃなかったな」(単行本p.86・87)

☆「オー!ファーザー」
由紀夫が父親達と観ていた連続ドラマ。


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