恐怖箱 怪画 三雲央ほか 加藤一編著
「青いバラ」 三雲央数年前、優紀さんが高校生の頃の話。『ねえアニキ、気付いている?』妹の唐突な質問に戸惑っていると、がらりと窓を開けた。窓から半身を乗り出して 『ほら、あれ』 と指を差す。優紀さんの部屋と妹の部屋の間の白い外壁に、直径二十センチほどの青いバラの絵が描かれていた。『なんだこれ?』『分かんないけど、今帰って来た時に気付いて。いつからこんなのあったのかなぁと思って』『誰かのイタズラ、かな?』『・・・何かこれ、キモくない? ねぇ、キレイに落としてよ』『ちっ、メンドイなぁ。明日学校休みだから明日な。今クタクタだから』翌日の午前中、優紀さんはブラシ片手に自部屋の窓から身を乗り出して、外壁の青いバラの絵を消し落とそうとしていた。しかし、一向に落ちる気配がない。ならばもっと力を込めて・・・・と思った瞬間、優紀さんの体は窓の外へ落下した。手当を終え、父親の運転する車で病院から戻った優紀さんに、玄関先で待っていた妹が半泣きになって抱き着いてきた。そんな妹を宥めながら、何気なく家の外壁を見上げると、あの青いバラの絵が綺麗に消えていた。『あのバラ、誰かが消したのか?』『え?アニキが消したんじゃないの? だってアニキが落ちて、のたうち回っているのを見つけたとき、壁はもうキレイだったし』・・・・外壁の青いバラの絵が誰の手により描かれ、そして誰がどのように消したのかはわからないままだという。