カテゴリ:育児は育自~共に学び共に生きる~
あれは6,7年前になるだろうか…。 子どもたちの間で、ドラゴンクエストのバトル鉛筆がとても流行った。 鉛筆の6面にドラクエのキャラと行動、HPの動きがそれぞれ印刷されており、 鉛筆サイコロのように転がして、出た指示に従って闘うのである。 我が家の少年たちは、ドラクエ大好き。(私も) ご贔屓は勿論、可愛いスライムである。 当然の如く欲しがったが、我が家では、私がルール。 『 鉛筆は、文房具です。 遊び目的の鉛筆を買い集めたり、鉛筆を玩具にして遊ぶのは許しません! 』 少年たちは、私が「NO!」と言ったら、 論破できるまでは、絶対ダメだと解っているので、 この件では、私に理が在ると悟り、諦めたようだった。 当時の少年たちのお小遣いは僅かなもので、 2人が1年間貯めてゲームソフトがやっと買えるような額。 少年たちは、いつもお小遣いを遣わずに貯め、ゲームソフトを買っていた。 彼らが虎の子のお小遣いで「バトル鉛筆を買ってもいい?」と申し出たのは かつてないことであり、余程、欲しかった、ということなのであるが。 その夜、彼らは私に内緒で、夫にあることを頼んだ。 夫はそれを快諾し、私に内緒で、社内で毎日せっせとあるものを集め、 少年たちの元に運んだと言う。 それから何ヶ月も経ったある日。 楽しそうに、きゃぃきゃぃと笑い声をあげて少年たちが遊んでいたので、 何気なく後ろから覗きこんで、絶句した。 少年たちは、仲良く割り箸を転がして、遊んでいた。 その割り箸は使用済みのもので、 割り箸の表裏に1本1本ドラクエのキャラを描き、 ぎっしりと小さな字でキャラの行動やHPについて書いていたのである! 私が見つけたのに気付いた彼らは顔色を変え、 さっと持っていた箸を後手に隠した。 彼らの横には、彼らの手作りの『バトル鉛筆』が、 以前彼らにあげた細長いYOKU MOKUの缶に、大事そうにぎっしりと詰まっていた。 涙が噴き出る。 この子たちは、こんなにもバトル鉛筆で遊びたかった。 でも、ダメだと言った私に、あれ以上、言えなかった。 箸では、表か裏しかないし、転がしにくいはずである。 こんなに作っても、割り箸では、兄弟ふたりだけでしか遊べない。 恥ずかしくて、きっと友だちとは、これで一緒に遊べない。 何も言わず、泣いている私を見て、 「 …おかあさん?? 」 上の少年が、こわごわと私の顔を覗き込む。 飛んで逃げてた下の少年も戻って来る。 「 凄いじゃん。 隠さんでええんよ。 上手につくったねぇえ 」 ぱぁあっと、ふたりの顔が明るくなる。 「 そうでしょ? これ見て? 」 「 これはねぇ… 」 と、次々、自慢の作品を見せてくれる。 -------------------------------------- 次の休みの日、私はバトル鉛筆を買いに出掛けた。 少年たちが余りにいとおしかったのと、 1本1本の箸を見て、行動バージョンが少ないのに気付いたからである。 よく考え、よく工夫して、涙ぐましいほどの出来映えではあったが、 やはり本物を実際に手にしてないため、限界がある、と感じたからでもあった。 しかし、もう、ドラクエのバトル鉛筆は何処にも売ってはいなかった。 ブームは去っていたのだった。 違うゲームキャラのものはあったが、それも僅かだった。 少年たちが可愛想で、そして私の頑なさに、また涙が出た。 あれほど欲しがってたのに、 一生懸命作りつづけた間に、ブームは終わっていた。 本物が手に入る頃には、もう売っていないだなんて。 このことを、ネット友人たちに話した。 そして、もし、重複してて不要なドラクエのバトル鉛筆があったら、 譲って欲しいとお願いした。 友人たちは、快く、お子たちの玩具箱を覗き、それぞれ送って下さった。 嬉しかった。 とても有難かった。 少年たちに渡したときの彼らの驚きと喜び!! 枕元に置いて眠っていたり、毎日毎日楽しく遊んでは、 色違いのYOKU MOKUの箱に、大事に納めていた。 でも、なんといっても割り箸にも愛着があり、 一緒くたにして遊んでいたようである。 -------------------------------------------- 3月7日、私の日記で 下の少年が、兄のセンター受験時の鉛筆を貰って高校受験に臨んだ話から この話になった。 私の友人たちは、覚えていてくれたのである。 私はすっかり忘れていて、恩知らずな自分に赤面した。 少年たちは覚えているだろうか。 きっと互いの机の引出しに、同じように大事に納めているに違いない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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