2006975 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

今日も元気で

今日も元気で

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2005.04.26
XML
テーマ:誕生日の人(1247)
カテゴリ:徒然草



今でこそ、あちらこちらで、はなみずきを目にするが、
私が初めてはなみずきを見たのは、高校2年から3年にあがる春休み。
Dogwood Tree(ドッグウッドツリー)。
日本名が はなみずき だと識ったのは、ほんの数年前である。


学校側の配慮もいただいて、春休みを含んだ4週間の予定で、
渡米していた私の家族を訪ねた。
街いっぱい。 どの家にも植えてあり、道路沿いにも植え付けられ、
町並みにそって咲き誇る、見事な白と赤のはなみずきだった。

葉っぱの出てない白のはなみずきは、
かなり遠くから見ると、まるで日本の桜のようで、
私は苦い後悔の涙をこぼしていた。


------------------------------



仕事の関係で、年単位で合衆国と日本を往復していた父だったが、
私が中学のときに渡米して帰って来たとき、
余りにげっそりと父がやつれて帰ってきたため、
母が断固として「今度渡米するときには、何があろうと必ず一家で」と、決めた。


私が高2となってすぐ、父に辞令が降りる。
ドタバタと私や弟の転校手続きやら、父の会社関係の手続きやら
なにかと面倒な書類関係が全て終わった段になって、
自己中な私は、「否!」と、合衆国行きを拒否したのである。

その理由は、今となっては、些細な、些細なこと。

自分の少年たちが私と同じ年代になり、
ひとりの親として、あの頃の自分を省みれば、脇まで冷汗が滲む。

いつもいつも。 思い返す度、時を停めて、やり直したい。
父に。 母に。 心から謝りたい。


あの厳格な父が泣き、母が泣き。
それでも私は、首を縦に振らず。

「 それなら好きにしろ。 娘だとはもう思わん 」とまで言われ。

それでも私は、独り、広島に残った。


--------------------------------


父の会社が配慮してくれ、全ての手続きをしてくれて、
春休みを利用して家族の元へ行けることとなり、
出発した日は、奇しくも17歳の誕生日。

道中を心配した母方の従姉やら叔母やら仲良しの友人たちが見送りに来てくれた。
当時は、広島-羽田間も、ちっちゃなちっちゃなプロペラ機である。

ハワイで入国審査を受け(ここでかなりモメた。怖かった)、
ロサンジェルスへ。
父が休みを取って出迎えに来てくれており、ここで父と一泊した。

「 娘とは思わん 」と言われてから、出立の日まで。
父はひとことも私に口をきかず、目を合わせてくれなかった。
いつもいつも、父の愛情を感じて育ってきていたため、
私にとって、父の怒りはとてもこたえたが、
意地を張り通し、私も父に話し掛けることはなかった。

それ以来の再会なので、父が眩しくて、どう会話していいか判らない。
でも、この日が私の誕生日である、ということが幸いした。


それから、テネシー州の郊外まで。
コンコルドに乗り、バスに乗り、、、何時間経っただろうか。
両手を広げた母の胸に飛び込んだ。 そして小さな弟を膝に乗せた。


広いマンション内を見せて貰って歩き、ちゃんと私の部屋があるのを識る。
カーテンから壁紙から、如何にもお年頃の女の子用に整えられている部屋で、
ベッドにはぬいぐるみまで置いてあった。

何も言えず、食堂に入ると、
テーブルの上に母の手作りの大きなバースディケーキが置いてあり、
17本のろうそくが灯されていた。

食器類が全部。 リネン類も。
全種類、全てのものが4つずつきちんと準備されていた。

このマンションで。
あたかも、いつも私が一緒に暮らしているかのように、
全てのものが心地よく整えられていたのを見たとき。

涙が吹き零れた。



いつも自己中心だった私。
「女王さま」だった私。

学校ではあらゆることをそつなくこなし(ていると自分では思っていた)、
友人関係にも恵まれていた。
嫌なことは絶対嫌だったし、常に自分が正しく、自分の正当性を信じていた。
私が本当の意味で我慢する、なんてあり得なかった。

生まれて初めて。
そんな自分の我侭を通すことで、誰かが傷つき、苦しむことがある、ということ。
そしてそれは、自分が今までしたこともないような誰かの「我慢」や
誰かの大きな「犠牲」を当たり前のように強いて、
そのうえに立っていたのだ、ということを識った。

父に。母に。 弟に。
そして今まで私が傷つけ、踏みにじって来たであろう幾多のひとに。
でも、いまさら何をどう詫びても、どうにもならない。

4週間の滞在をめいっぱい感謝し、めいっぱい喜び、
めいっぱい良い娘であろうと務めた。
それでも、何をしていても罪の意識に襲われ、
両親に見つからぬよう、涙を拭う毎日。
そんな私に、合衆国の郊外は、ただひたすら大きく、美しかった。



テネシー州の郊外は、道路以外はアスファルトで固められていない。
一面の草原が地平線や遠くの山々までうねり、
タンポポが咲き乱れ、黄色の絨毯のようだった。
そして視線を上げれば、はなみずき、はなみずき、はなみずき。

遠目には桜に見えても、近づけば、花は一輪一輪、力強く上を向いている。

この街に限らず、合衆国では、Dogwood Tree は、
日本の桜のように、春を告げる特別の花のようである。

Dogwood Tree の花びらや花を象ったものが、たくさん売られている。
母は、誕生祝いだと言い、このDogwood Tree のペンダントを贈ってくれた。


このペンダントは、今も、私の宝石箱の1番大事な場所にある。
つけることは久しくないけれど、宝石箱を開ける度に挨拶する。

そして、近年、はなみずき を何処の町でも見かけるようになった。
その度に、私は否応なく17歳に引き戻される。
翌年の春にはもっと厳しい現実が待っていた、あの17歳の時に。




あの苦しかった17歳を忘れないで。
傲岸不遜だった自分を忘れないで。

いつも謙虚であれ。
そして今、自分が生きて在ることに最大限の感謝を。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.04.26 03:55:06
コメント(22) | コメントを書く
[徒然草] カテゴリの最新記事


PR

Free Space

Freepage List

▼ 以心伝心幻想


▽ PTA・PTA・PTA


▽ 対 「いじめ」 に私たちのできること


▽ 『 冥福 』 は 祈らない。


▼ 簡単レシピ


▽ 魔法のお醤油


▽ ピザ


▽ 肉まん


▽ カニのパテ


▽ かぼちゃの揚餃子


▽ 青紫蘇ジュース & 紫蘇味噌


▽ 大量チキンカレー


▽ ミートスパゲティ (スープスパ)


▽ 栗の渋皮煮


▽ 煮卵 (半熟卵)


▽ オートミールのケーキ


▽ オートミールのクッキー


▽ 『 シェンブルナトルテ 』


▽ 黒豆


▽ 豚の紅茶煮


▽ 豚のマーマレード煮


▽ 鶏さんつくね煮 と 照り煮 


▽ お水を使わない 煮豚。


▽ 青梗菜の帆立貝柱あんかけ。


▽ 白菜の中華風お浸し


▽ トマトだけのスパゲティ


▽ きゅうりのキューちゃん♪


▽ ゴーヤの冷凍、佃煮


▽ 鳥はむ


▽ 大根の焼酎漬


▼ ちょっとだけ エコらいふ☆


▼ バトン系


▼ 大学考 (我が家の場合)


▼ ステロイド離脱に関して


▽ リバウンド時代のお助けグッズ。


▽ 湿疹肌 に 石鹸


▼ 謹んで拝受の儀☆


▽ カウプレ、拝受☆


▽ カウプレ、拝受 2☆


▽ お酒・お酒・お酒


▽ 美味しいもの(//▽//)☆


▽ キニナルモノ・スキナモノ☆


▽ キニナルモノ・スキナモノ☆ 2


▽ キニナルモノ・スキナモノ☆ 3


Recent Posts

Category

Comments

 りうりう*@ Re:(*≧m≦*)ププッ(04/01) おじゃりんさん  > ワタシ 自分の…
 りうりう*@ 「 お年頃 」 お互いに > パクチのねぃさん  >…
 りうりう*@ 「 つまり現在既に 」 やっぱり そなのかな^o^;?? > やじ…
 りうりう*@ Re:熟慮に熟慮を重ねた末(05/07) あそびすとさん  > なんてことを言…
 あそびすと@ 熟慮に熟慮を重ねた末 なんてことを言っていると、どちらにも進…
 おじゃりん@ (*≧m≦*)ププッ うれしいような かなしいような、、、 …
 パクチーナ@ Re:その ココロ は。(04/01) ムフフ・・・こういうお話大好き^m^ そし…
 りうりう*@ Re:「 反応 」(03/28) あら(滝汗)。>ぢぶん JJ2007さんへの…
 やじさん上総ん@ Re:その ココロ は。(04/01) つまり現在既に彼女が・・あ。。いやいや(…
 りうりう*@ Re:えっ、まだ聞いていないの?(03/28) 聞けてないですぅ(-_-) > OMITAさ…

Archives

2024.04
2024.03
2024.02
2024.01
2023.12
2023.11
2023.10
2023.09
2023.08
2023.07

Headline News


© Rakuten Group, Inc.