カテゴリ:観ました^^*☆
HDDに撮り貯めていたもののなかで、 この4月に放映された『 駅路 』( フジTVドラマ )をやっと観る。 故 向田邦子氏が30年前に手掛けた、唯一の松本清張作品というもので、 たまたま番宣を目にし、映画級の配役の良さにも惹かれ、 是非観たい、と思っていたものである。 最初から、美しくも郷愁をそそる情景に これ以上はない、というような美しいギター曲 『 Recuerdos de la Alhambra 』を被せてあり、 これはもう反則ぢゃん!と思ってしまうほど、 しっとりと静かで哀しく、切なく、 そして 襲い来るであろう悲劇を予感させ、何気に怖い。 ミステリそのものは、定年を迎えた男性がひとり旅に出掛け、 そのまま失踪してしまう、その真相は、という ヒジョーに「 ありがち 」なお話であるのだけれど。 てっちゃん、である刑事をも含め、ひとびとが それぞれの想いを抱え、 それぞれの駅路を辿る重たくも味わい深い作品になっており、 それは、とにもかくにも、俳優さんたち と 脚本のなせる技だと思わされる。 なかでも十朱幸代氏、深津絵里氏、木村多江氏の三者三様の業の表現が見事で、 殊に 一変する十朱幸代氏の鬼気迫る演技には何度も鳥肌が立つ。 それもこれも、脚本で女性の業を巧みに描く向田氏ならでは、だと感じながらも、 絵の美しさ、俳優さんの巧みさ、 そして余りに効果的な マーラーの交響曲第3番第6楽章(-_-)。 完璧にヤられた感に打ちのめされる。 向田邦子氏の脚本を、『 北の国から 』の演出で知られる 杉田成道氏が脚色、演出されたのだそうだったが、 なんと深い、上質なドラマに仕上がったことだろう。 。。。ただ、最初からそういう目線で観始めてしまったので、 何処から何処までが向田氏の脚本であり、 何処から何処までが杉田氏の脚色であるのか、 そんなところが とても気になってしまい、そんな自分を持て余す。 お話を昭和天皇の崩御と絡めたのは杉田氏であるが、 当時の緊張感を生々しく思い出さされ、ついでのように、 あれからもう20年も経ってしまったことに気付かされ、愕然とする。 また、たくさんのモノクロ写真に残された、美しくも悲しい深津絵里氏。 彼女の描かれ方は、まるで リアルにカメラマンの御方に愛された、 向田邦子氏そのひとの姿と重なるから。 向田邦子氏の逝去後、妹である向田和子氏による 『 向田邦子の恋文 』を読む機会があったので識ったのだが。 ( こちらは2004年に向田氏の古巣、TBSでドラマ化されたらしい ) ―― たくさんの深津絵里さんのモノクロ写真、とても美しかった。 向田氏への 見事な香華の手向けだとも感じたことである。 。。。ともあれ、今年、私は向田氏の逝去された年齢となった。 今を盛りとみえた御方の訃報は 当時も衝撃であったが、 今、己れが彼女の歳となってみて、彼女の存在感のでかさに再び愕然とする。 「 TBSドラマといえば、向田邦子 」的 華やいだ御方であったが、 私自身は『 だいこんの花 』しか観ていない。 けれど、乳癌術後の肝炎や右腕の不具合と闘われながらの直木賞受賞には感服し、 密かに応援したいと思った矢先の飛行機事故であった。 あの 昭和天皇崩御から、20年も経ったこと。 あの 向田氏の逝去された年齢に自分がなっていること。 ちっとも進歩してない己れの姿を省みさせられ、 二重にパンチを受けた気分である(-_-)。 「 真面目で堅物 」という評判の石坂浩二氏の突然の失踪の蔭に、 深津絵里氏の存在をにおわせた 佐藤春夫氏の『 よきひとよ 』。 こんなに美しく、切ない詩だったんだ―― よきひとよ 佐藤春夫 よきひとよ、はかなからずや うつくしき なれが 乳ぶさも いとあまき そのくちびるも 手をとりて 泣けるちかひも わがけふの かかるなげきも うつり香の 明日はきえつつ めぐりあふ 後さへ知らず よきひとよ、地上のものは 切なくも はかなからずや お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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