カテゴリ:読書
宮部みゆき「誰か」を読んだ。
(この記事はネタばれあり) この話は杉村三郎という35歳の男が主人公。 妻の父は財閥の会長。彼は「逆玉の輿」というわけだ。 そんな杉村は会長から依頼を受ける。 実は会長お抱え運転手が自転車による交通事故で死亡した。 運転手にぶつかったのは少年らしいがまだ特定されていない。 この運転手には二人の娘がおり、父親の思い出を本にしたいのだという。 その本がきっかけで、犯人が割り出せればいい。 それが狙いだ。 杉村は出版社出身。 今は会長の会社で社内報を作成している。 そのために会長は杉村に白羽の矢を立てた。 運転手の娘は姉の聡美と妹の梨子。 母親は父親より前に病死している。 本を出すという話に乗り気なのは妹の梨子。 姉の聡美は消極的。 それは、生前運転手をしていた父親に、暗い部分があったため。 悪い仲間がいたかもしれない。 しかも、事故現場にどうして彼が向かったのか。 それがわからない。 「知らなくてもいいこと」を自分たちは掘り出してしまうかも。 それが聡美の心配。 「人に歴史あり」 それがこの作品を読んで最初に感じたこと。 その歴史は明るいものばかりではない。 誰にでも人には話せない部分がある。 強盗や殺人を誰もが犯しているわけではないが。 宮部は国民的作家。 それは多くの人が認めるところだろう。 本の雑誌「ダヴィンチ」2008年ランキングでも上位だった。 今調査したとしても、宮部の人気は揺るがないだろう。 それでも私は思う。 彼女には、往年のパワーがない。 「誰か」で言うなら、無駄が多く感じる。 今までも「模倣犯」や「理由」などは長かった。 それでも飽きることなく読めたのは、宮部の実力。 しかし「誰か」では飽きた。 作家として読者が「飽き」を感じるのは内容に問題があるから。 梨子の性格なら、本を出すということに結びつかないだろう。 直線的な思考回路がそうさせないはず。 きっと最初から犯人探しのチラシを思いついたのではないか。 そこに「誰か」の弱点がある。 本が出てこないと杉村の出番はない。 無理に杉村を出したことで、単調さが鼻につく作品となった。 また、杉村のキャラクターは女性的。 宮部に35歳の男を描かせるのは難しいのかも。 「今夜は眠れない」など少年が主人公ならまだよかった。 も少し考えないと、宮部にうじうじとした中年男性を描かせるのは無理。 杉村、姉妹、会長、梶田夫妻。 私は登場人物の誰にも感情移入できなかった。 教訓はただひとつ。 「不倫はいけない」ということだけ。 だがこの教訓は「誰か」を読む前から心していたこと。 この作品を読んで何かが変わったわけではない。 「秘密は人を孤独にする」 というフレーズは覚えているかもしれない。 「誰か」には続編がある。 それが「名もなき毒」だそうだ。 図書館に置いてあったら読んでみるかもしれない。 だが「どうしても読みたい」というわけではない。 *********************** 関連記事 誰か [宮部みゆき] 「誰か」宮部みゆき 「誰か」宮部みゆき 宮部みゆき:「誰か」 「誰か」 宮部みゆき *********************** ※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。 バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.11.21 19:19:56
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