カテゴリ:読書
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「百億の星と千億の生命」 15章「妊娠中絶」 アメリカでは人工妊娠中絶に関する意見がとても重要だ。 中絶を行う医師が殺される事件も起きている。 中絶医、教会で殺害される 連邦裁判所判事任命でも「中絶に賛成か否か」が問われる。 セーガン博士はこの問題で夫人と共著という形で意見を述べている。 「生命になる可能性があるから」中絶は禁止すべきなのか? ならば自慰行為は大量殺人になるのか? チンパンジーを殺しても殺人にはならない。 人間と活性遺伝子が99・6%しか違わないにもかかわらず。 ところでアメリカで中絶が論争になったのは最近のこと。 聖アウグスティヌスや聖トマスアクイナスの時代。 初期の中絶は殺人ではなかった。 ヴィエンヌ公会議からその点は変更がないとセーガン博士は言う。 そればかりか1800年のアメリカでは中絶に関する法律はない。 ところが1900年になると各州で母体を救う以外の中絶が禁止。 その原因は宗教ではない。 出生率の低下が最低になったことがもたらしたものだった。 アメリカでは近年、中絶容認派と反対派が対立。 そんな中、訴訟社会のアメリカで中絶をめぐる注目の裁判があった。 ロー対ウェイド事件がそれだ。 結局、妊娠初期の3ヶ月は中絶の権利を認める。 (政府は初期の中絶を禁止できない) 次の3ヶ月は母体を守るために中絶を制限できる。 そして3番目の3ヶ月は母体の保護と健康を守る以外は州が中絶を禁止できる。 となった。 ところでこのセーガンによる文章には雑誌掲載時、電話番号がついていた。 以下の4つの選択肢から読者の意見を選ぶようになっていた。 1、受胎の瞬間から中絶は殺人。 2、女性はいつでも中絶を選ぶ権利がある。 3、妊娠初期の3ヶ月間の中絶は許されるべき。 4、妊娠中の6ヶ月間は中絶を許されるべき。 最初、この4つの意見はそれぞれ均等に分かれていたという。 しかし邪魔が入った。 伝道師で大統領候補にもなったパット・ロバートソン氏だ。 彼は中絶反対派。 そのためテレビ番組で「中絶禁止」の意見を送るよう求めた。 それからは回答が圧倒されるようになったという。 第16章「ゲームのルール」 最近流行(?)のゲーム理論。 第17章「ゲティスバーグ」 年間で1兆ドルと言われる軍事費。 その1割を使えば実にいろんなことができる。 多くの人を救える。 「地球村」に住んでいる我々村民。 軍事に金を使っている場合ではない。 セーガン博士の訴えはここでも冴えている。 本書では、終わりに近づくとセーガン博士の病気のことが書かれている。 骨髄異形成症候群という重病でシアトルでの闘病生活が始まる。 妹さんから骨髄の提供を受けたセーガン博士。 快復に向かうかと思われたが再発。 96年に帰らぬ人となった。 彼が偉大であることは間違いない。 大切なのは彼の考えをこの世に残すこと。 それには「みんなでセーガン博士になる」ことが必要だ。 一人では彼の偉大さを受け止められない。 なら100人では、1000人ならその考えを受け継ぐことができる。 宇宙への探究心、環境問題、核軍縮と彼の夢は大きかった。 残された者は、どれだけ彼の意志を継げるだろうか? *********************** 関連記事 カール・セーガン 百億の星と千億の生命 百億の星と千億の生命 (新潮文庫) 百億の星と千億の生命 *********************** ※トラックバックは管理人が承認した後に表示されます。 バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.04.29 16:14:22
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