朝日新聞朝刊 2014年8月5日の記事です。
(写真)入院中のSさん。ベッドの上からブログを更新していった=2010年10月、妻提供
(掲載を控えました。)
尿膜管がんで49歳で亡くなるまでの4年近く、本にして4千ページを超える、膨大な情報をブログにつづった患者がいる。
広島市の公務員だったSさん。2007年4月、米ニューヨークの公益法人に出向する予定だった。3月には現地に荷物を送り、あいさつ回りに忙しかった。妻(52)は晴れがましい気持ちだった。深夜コツコツと英語を学ぶ夫の姿を見てきた。
3月29日朝、ひどい腹痛に襲われた。広島市民病院で精密検査をしたところ、膀胱(ぼうこう)付近にがんが見つかった。点滴を打ちながら携帯電話で職場に報告した。「2年間の米国勤務というまばゆいばかりの閃光(せんこう)のキャリアは、一瞬の夢か幻になりました」。Sさんは後に書いたブログで振り返った。
入院してすぐ内視鏡手術をした。細胞を調べると、胎児の時に膀胱とへそを結んでいた「尿膜管」にがんができ、膀胱と直腸に広がっていた。国内では数百人しか見つかっていない非常に珍しいがん。確立された治療法がなく、進行してから発見されることが多い。Sさんも末期だった。
尿膜管は膀胱のそばにあるが、尿膜管がんは膀胱がんとはタイプが異なり、膀胱がんの抗がん剤では効かない。このため、同じタイプが多い胃がんに使われている抗がん剤で治療することになった。
Sさんは手術後、インターネットで尿膜管がんを知ろうとしたが、あまりの情報の少なさに絶望した。「治療指針に確立されたものはない」とある程度だった。
がん告知の1カ月後、「すごいのを見つけた」。Sさんは妻にパソコン画面を指した。尿膜管がんの英語名「Urachal carcinoma」で検索し、「膀胱がんウェブカフェ」(http://blcwebcafe.org/別ウインドウで開きます)にたどりついた。英語版の患者運営サイトだ。
最新の研究や薬の開発、患者や家族の生活の心構え……。患者目線の情報が、患者自身の手で集められていた。専門医も助言し、米国がん研究所の患者向けの本でも「価値ある情報源」として紹介されている。尿膜管がんの論文や治療情報も載っていた。
「ここに載っている情報を翻訳する」。Sさんは宣言した。
(原文はご本名で書かれていましたが、ここでは頭文字表記にさせていただきました。)
去年の8月上旬からの連載です。ちょうど私が、悪性後腹膜腫瘍で入院して抗癌剤治療を受け始めたころの連載です。
私も症例が少ない癌で、専用の抗癌剤がなく、他の癌の抗癌剤を流用するかたちでした。それでもインターネットには、そこそこの情報がありました。
この方の場合は、さらに症例が少なく、インターネットで情報が皆無だったようです。英語のサイトの翻訳を決意されます。
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