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カテゴリ:これぞ醍醐味!歌舞伎の大向う
今年も、夏の風物詩「亀治郎の会」が始まりました。
会場は東京の国立劇場だけで日程も3日間です。 個人の勉強会ではありますが、毎年、新しい役に挑戦し続ける亀治郎さんの研鑽の場として定着しているものでありまして、ファンならずとも見逃せません。 ご本人は10回までとか言っていますので、今年がラス前で、来年で打ち止めになるのでしょうか。 きママさんにおかれましては、来年こそお見逃しの無い様になさってください。 でもって、今回は、通称「ドブ」と言う、花道外側ですがスッポンの真横で拝見しました。 この席を選んだのではなく、抽選で当たったのですが、舞踊の際には、花道に所作板を置いてしまうので、舞台が見えにくくなるのが最大の欠点です。 と言うよりも、もっと椅子の高さを上げれば宜しいのではないかと思いますが、国立劇場さん、改善できませんか?? さて、今年の狂言歌舞伎は、葛の葉。 自分的には他の役者で二度ほど舞台を拝見しておりまして、良く出来た話だし、早替わりの素早さに度肝を抜かれたり、左手で書くも字が逆に書かれるあたり、そして大詰めの花道スッポンから出てきてからなどが見物です。 舞台のお話しには前段がありまして、これを知っていればすんなりと舞台が分かろうかと思います。 それは、・・・・・。 許婚が悪人の計略で自害して狂気になった安倍保名の前に許婚に生き写しの女性が現れた。 それは、信太の森の一匹の白い狐の化身「葛の葉姫」だったことから、このお話が始まります。 狐が女性に化けて、男をたぶらかしたと言うような、歌舞伎ならではの、有り得ない話と片付けてしまわないでください。 もっと崇高な、この世の男と女、夫婦、親子の愛情と悲しい別れを描いたお話しであります。 夫婦になり、一人の子をもうけて幸せに暮らしているところに、件(くだん)の葛の葉姫と父親らが保名を捜し歩いて訪ねてきます。 そりゃあまあ、自分の妻と瓜二つの姫が来れば、驚くわいなぁ。 そこで、保名の妻と姫と二役が早替わりで繰り広げられますので、その早さと役柄による声音や所作の違いをじっくりと味わいます。 途中で二人がばったりと顔を合わせるところだけは、吹き替えですけどね。 でもって、葛の葉姫に化けていたことが知られてしまえば、すべてが終りになってしまうし、迷惑を掛けることになるだろうと、愛する我が子を置いて森に帰ることを決心するまでの、いわゆるくどきは、初役とは思えぬものでありました。 ここが良ければ、その後大詰めまで実にスムースにつながります。 「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」と、和歌を障子に書き連ねて姿を消すのですが、書道が上手いです。 寝かしつけた子どもが起きてきて、しかたなく右手で抱きかかえて、左手で書く「信太の森の」は、鏡に写したような逆文字なんです。 最後は、子どもを両腕で抱き締め、筆を口にくわえて書き連ねるのです。 これまで見たどの方よりも上手い。(これまでの方が上手かったとは言わないけどね) 習字じゃありません。まさに、達筆でありまして、そのまま書道です。 森に帰る大詰めは、花道のスッポンから現れまして、汗か涙か、涙か汗かと見まごう気合の入りようでありました。 近すぎると、余計なものまで見えてしまうってことが唯一の欠点かもしれません。 そうそう、一粒種は、後の安倍清明ってことでもあります。 初日恒例の亀パパの目をぱちくりさせながらの台詞もございました。 続いては、「博奕十王」(ばくちじゅうおう)。 幕開きで舞台がセリ上がりまして、全員が冥土に行く方が額に着ける三角形の布を着けて登場しました。 全員とは、役者ではなく、長唄囃子連中や後見、附け打ちさん達のことであります。 こりゃ、始めっから面白いわい! そのうえ、花道スッポンから現れ出でたる博奕打の亀治郎さんが、口上もどきの挨拶。 舞踊の上手さもさることながら、ひょうきんな場面やら真剣な場面などの繰り返しで、亀治郎さんの持ち味炸裂であります! 亀鶴さんの閻魔大王も始めこそ威厳がありましたが、博奕打との勝負に負けて身ぐるみを剥がされてしまい滑稽な大王に。 最後は、地獄への入り口から極楽行きのお札を手に入れて、身ぐるみ剥いだ閻魔大王達の持ち物などの戦利品を背負って嬉しそうに花道を引き上げるのありました。 40年ぶりの上演だそうですが、こんな楽しい舞踊劇ならもっと再演されても良さそうなものであります。 遠く、阿波の国に居られる、きママさんには、後程、お土産なんぞをお送りしますので、お待ちくださいませ。 ------------ 第九回亀治郎の会 8月19日(金)~21日(日) 昼の部:12:00~/夜の部:17:00~ 全六回公演 会場:国立劇場 大劇場 演目 一、「芦屋道満大内鑑~葛の葉~」(あしやどうまんおおうちかがみ~くずのは~) 女房葛の葉、葛の葉姫 市川亀治郎 安倍保名 市川門之助 安倍童子 吉岡愛美 木綿買実は荏柄段八 市川猿四郎 木綿買 市川澤五郎 木綿買 市川段一郎 陸尺 中條 陸尺 中島 妻 柵 坂東竹三郎 信田庄司 市川段四郎 浄瑠璃 竹本葵太夫 三味線 鶴澤慎治 豊澤 勝二郎 二、市川猿之助 作「博奕十王」(ばくちじゅうおう) 長唄囃子連中 十四世 杵屋六左衛門 作曲 十五世 杵屋六左衛門 作曲監修 博奕打 市川亀治郎 獄卒 市川弘太郎 同 市川猿四郎 閻魔大王 中村亀鶴 ---------------- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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