序章序章彼の名前は――放浪公爵。 職業――無し。 高技術の持ち主にして、世界復讐から滅亡を企む者。 2007/5/24 21世紀前半 コツ..コツ..コツ.. と放浪公爵の足音。大きなシルクハットに裂けた口、大きな図体に黒い古ぼけたコートを着ている。 コツ..コツ..コツ.. 公爵は大きな広間へと向かっている。 コツ..コツ..コツ.. 公爵は広間の中央の丸い祭壇の上に立ち止まった。裂けた口をさらに横に引きつらせる。 不気味な微笑みを見せると祭壇の下の方から光が発生し、光の柱となった。不意に光が消えると、公爵の姿はもうそこにはなかった。 1627/6/20 17世紀前半 空は、どす黒い雲に覆われて強い大粒の雨が降っている。太陽がどこかも分からない、雲から。 廃屋と化した建物。ぼろぼろの破れた旗。泣きじゃくる子供。道端に落ちている人の屍。その原因はすべて、彼にあった。 彼は、強い雨に打たれながら動こうとはせずただ凍ったように自分の斜め下の方を見つめている。 大きなシルクハットに裂けた口、大きな図体に黒い古ぼけたコートを身にまとっている男。 彼は『放浪公爵』。世界復讐から滅亡へと誘う者。公爵は不気味な顔で微笑むと、その瞬間公爵の足元から光が発生し公爵を包み込む。 その光の柱が消えると公爵の姿はもうそこにはなかった。 廃墟と化したこの街では、たくさんの人間が死んでいた。公爵はこの地域で"悪夢"という人から造る最悪兵器を製造し、 そして現在の状況へと誘った。時空を越え、分かりきった歴史を崩そうとしている、放浪公爵。 最終的には世界の滅亡を企む放浪公爵にとって人間は邪魔者。元を崩せば人間は急激に減るだろう。 人間が消えれば放浪公爵にとっては好都合。事はスムーズに進む。 しかし、すべて放浪公爵の思惑通りとはいかなかった。 歴史を正し、放浪公爵と対立する秘密組織があった。公爵が製造する"悪夢"を壊し、無かったことにする。 いわば、歴史の『修正班』とでも言うべきだろう。他にも、その秘密組織には『再生班』、『創造班』などがある。 それぞれ、出動の目的にあわせて目的にあった各班を出頭させている。 今回のこの事件も、この秘密組織が元の様子へと戻し公爵の企みを崩すだろう。 それとも、今回は公爵の思惑通りといくのだろうか。 2007/5/24 21世紀前半 公爵は元の大広間に戻ると不気味な微笑みを継続させたまま呟く。 「ククク・・・"返更教団(へんこうきょうだん)"今回、どんな面白いことを見せてくれるのでしょうかネ。楽しみでス。」 彼の名前は――放浪公爵。 職業――"悪夢"製造者。 残酷な心の持ち主にして、世界復讐から滅亡を企む者。 序章 完 |