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カテゴリ:その他読書日記
『こころの傷の処方箋』別冊宝島307:JICC出版局
薬物依存・不眠症・アルコール依存症・児童虐待・統合失調症・拒食症・性的虐待等全部で18の事例を紹介している。家族の誰かが問題行動を起こす場合、その人個人だけに問題があるのではなく、<家族の病>として総合的にとらえるべきだ、というのは分かる。けれども当事者たる家族にとって、こんな本を読んだからといって、処方箋にも何にもなりはしないだろう。一般読者の覗き趣味を満たすくらいがせいぜいである。処分。 『大学淘汰の時代』喜多村和之:中公新書 サブタイトルが「消費社会の高等教育」。要するに、大学には研究機関としての顔と、教育機関としての顔があると。で、世の中が実学中心となり、大学が学位という「資格授与機関」になり下がるにつれ、消費者としての学生の買い手市場になったのがアメリカの現状である、と。日本はまだそこまで行っていないが、少子化社会を迎え、大学冬の時代に突入していく現在、今後はどんどん大学間の合併・統合・閉鎖が出てくるだろうと。1990年刊行。要約終わり。処分。 『宇宙のウィリーズ』エリック・F・ラッセル:創元推理文庫 星間戦争が背景にある、未来のいつか。地球人パイロットのリーミングは、敵の同盟軍の星に不時着する。そこから舌先三寸で相手をだまくらかして、無事脱出するというお話。ウィリーズとは英語の俗語で臆病者という意味らしい。 スパイ小説愛好家からすると噴飯物の設定だろう。仮にこれがアメリカ人パイロットが旧ソ連の衛星国に不時着していたら…と考えると、こんなにうまく行くはずがない。それでもSFとして読めてしまうのは、漫画が漫画的はったりによって読めてしまうのと同じだと思う。それぞれの表現媒体には、それぞれの楽しみ方というのがあるのである。 とはいえ、どちらかといえばこういう設定には自分も食傷している。同じ本に収録されている短編小説集の方がまだSFとして好感が持てる。『ウェイタビッツ』『地球の絆』『極秘指令』『二番煎じ』『ディアボロジック』。中でも『完全犯罪』は、地球人に愛玩されている犬族こそは、隠れた地球の支配者である、ということを看破した異星人が、「無邪気な」犬によって「事故死」してしまうという後味の悪い傑作である。 参考までに、犬族の格言を紹介しよう。 「知性の有無を試す最高の基準は、働かずに好き勝手な暮らしをする能力である」 「宇宙におけるもっとも危険かつ効果的な武器は追従である」 「ものを考える動物は、自分を神のごとく考えたがる。したがってそれを神としてあがめてやれば、君の奴隷となって意のままに動くだろう」 『冒険者コナン』ロバート・E・ハワード:ハヤカワSF文庫 SF文庫に収められているが、厳密に言えばこれはヒロイックファンタジー(古代英雄伝説譚)である。1万2千年前の地球を舞台に、剣と魔法の世界を冒険者コナンが縦横無尽に活躍するのだ。 ハワード描くところの主人公がターザンと違って悪漢的な要素を持っているのは評価できるが、サーガ(英雄譚)物っていうのは、どうしてこう北欧神話を背景にしたがるんだろうかねえ。 『小川和久のまんが 新・防衛白書』:山海堂 <新>とうたっているが、平成元年、ソ連が崩壊する直前に出版された本である。『旧・防衛白書』になってしまった部分も大きいので処分。 ただし、以下の見解は今でも十分に通用する現実だと思う。 「アメリカは日本を守るために日本に基地をおいているのではなく、アメリカの世界戦略のために、極東の補給基地として日本を必要としているのである」 「日本の自衛隊は優秀である。ただしその能力はアメリカの手足としての優秀さであり、アメリカから独立した日本の軍隊として自衛隊が機能しているわけではない」 「日本の工業力・技術力はすばらしく、もし仮に某国と日本の奪い合いになり相手に獲られそうになった場合、アメリカは日本を徹底的に破壊することを辞さないだろう」 某国は今で言えば中国だろうか。経済のグローバル化が進展する現在・近未来において米中が全面衝突する可能性は低いと思われるが、シュミレーションとしてはありうる設定だと自分は考えている…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.02.25 19:32:48
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