『梅切らぬバカ』
自閉症関係の映画は結構観てきたので、もういいかなと思っていたのだが、考えてみればほとんどが外国作品だった。一方これは、劇映画とはいえ、まぎれもなく邦画である。自閉症の主人公を演じる俳優さんは、当事者ではないが、なかなか上手い。母親役の加賀まりこさんや、脇を固める役者さんたちも、それぞれいい味を出している。自閉症者はどうしても行動が奇矯である。周りから奇異に思われる。本人はすこぶる真面目なのだが、どうしても周囲から誤解されてしまう。誤解されても、それに反駁できる言語能力をもてない人が多い。都会は面倒だ。狭いところに、人々がひしめき合って暮らしている。忠さんも、誤解がもとで折角入ったグループホームを出なければならなくなった。だが、真相を話したところで、隣家の子どもが悪者になるだけだし、関係者全員が気まずい思いをするだけだろう。その気まずさはいつしかシコリとなり、何かの機会に爆発してしまうかもしれない。それよりは、子どもの家族に恩を売り、失礼、仲良くなり、今住んでいる古民家をグループホームに改造しようとなった時、反対できないように味方につけておいたほうが良い。あいて打算的に書いてしまったが、洋画流に筋を通したって何の解決にもならないどころか、かえってこじらせてしまうのが、日本という社会なのである。梅切らぬバカ 【DVD】