親父の形見
しばらく前の話だが、実家の仏壇の引き出しの中に古い時計を発見した。とても古そうな時計だ。セイコー ロードマーベル 36000裏蓋の刻印から1967年頃の製造らしい。私が3才頃か・・・・(笑)恐らく亡くなった親父の時計なのでろくな物ではないと思ったが一応調べてみた。すると・・・・意外にも結構な高級時計であった。当時の大卒の初任給の半分位現在の物価でいうと10万円ほどの価格か?私の記憶では親父は時計の趣味があったようには思えないのでどうしてこんな時計を使っていたのかは謎である。・・・・・・・昔の記憶を辿ってみると私がまだ小さかった頃うちの近くに小さな時計店があった。そこのご主人と親父は仲が良かったようで、夜になるとその時計店の店主がうちにやってきて夜遅くまで飲んでいた。おそらくこの時計はその店主から買ったものだろう。1967年頃というと、高度経済成長期の終わり頃だが気分的にはまだまだ好景気が続くと誰もが信じていた時期なので高い時計でも奮発して買ったのかもしれない。そういえば、その頃の酒屋は高級な舶来ウイスキーが飛ぶように売れたとかいう話を聞いた事がある。この時計はいわゆる機械式時計でゼンマイを手で巻いて動く時計だ。当時の腕時計はスイス製が世界を席巻していたのだが1960年台になると、日本のセイコーやシチズンも徐々に力を付けてきてついに爆発。本場、スイス製高級時計にまったく引けをとらないいや、スイス製を凌駕する性能を持つに至った。今回発見したロードマーベルもそういう時代の時計だ。世界に追いつき追い越した日本の勢いのようなものを感じる。・・・・・・・・・・・・ところが、その後、セイコーはクオーツ時計を発明。世界を席巻してさらにはスイス時計を壊滅寸前に追い込む。しかし、自ら発明した技術で自分の首を締めたというかクオーツ時計の発明は時計の低価格化をもたらし、時計は高級品から日常品、ついには雑貨扱いされはじめる。今では腕時計なんてしない人も多い。日本経済も同じような道をたどる。永遠に続くと思われた高度経済成長期はあっけなく終わり安定成長期からバブル崩壊そして今につづくデフレ期に突入する。たったひとつの古い機械なのだが時代の生き証人というか、記憶のタイムカプセルのような気がしてきた。試しにゼンマイを巻いてみた。なんと、普通に動き始めた。50年前の時計なのに・・・・スゲー!!!!壊れてたら捨てようかと思っていたのだが・・・・・この時計は何かを言いたがっているかのようだ。しゃーないなぁ・・・・・使ってみるか。