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2006年10月10日
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カテゴリ:パパの作品
このお話は、連載です
まだの方は第1章からどうぞ
第1章 地上へ 第1話


◎ 虹の橋2006夏
第2章 再会 第3話 もも(ビーグル)


登場人物 もも

みなさんこんにちは、ビーグルのももです
私のお盆のレポート、楽しんで読んでくださいね


新入りのモモちゃんも無事に地上へ降りていったことだし、私も一年ぶりにナス母さんとお話が出来るのでウキウキ

橋のたもとを見てみると、地上でいつも私が乗せてもらっていたナス母さんの車が運転席のドアを開けて停まっています
そう、こちらでは私が運転しているのよ(*^_^*)

ドアを閉めてアクセルを踏みます
バックミラーには後ろに真っ直ぐに伸びるひこうき雲(^^)/

だんだん地上が大きくなってきます
確か今日はナス母さんはお仕事のはず
私は車を母さんの働く建物の外のイチョウの木のてっぺんに止めました
クマゼミが驚いて鳴くのを止め、こっちを見ています(^^)

すると建物の窓からこっちを見ている人がいます
母さんです

母さんは木のてっぺんでゆらゆらしている車を見て、びっくりしたように両手で口を押さえ、建物の外に飛び出してきました

「ももちゃん、なんてとこにいるの?危ないから降りてきなさい!」
「母さん!」

私はふわりと地上に降りました
「ももちゃん、お帰り!」
「ただいまっ^^;」
母さんは1年ぶりに私をギューーッと抱きしめてくれました

「母さんもう少し仕事があるから、ももちゃんは先に帰ってなさい」
「ううん、一緒に帰る。母さんと」

私はもう一度車に乗り、ダッシュボードの時計をくるくると早回しして、母さんの仕事の終わる時間にしました
母さんは仕事が終わり、建物から出て来ました

「もも~っ、お待たせ(^^)」
「ほんとにもう、待ちくたびれちゃった(うそうそ^^;)」
「ごめんごめん」

私は母さんの車の助手席に乗りました
後ろから誰も乗っていない私の車がついてきました

母さんは車の中で、言いました
…さっきももちゃんが木の上に降りてきて、母さん飛び出したでしょ?(^^)
でもね、それが見えたのは母さんだけで他の人には何も見えてなかったらしいの
だからみんな、私が何に驚いて飛び出したか分からないし、外で木の上に向かって大声を出したり、ももちゃんとしゃべったりするのを、ずいぶんおかしな事をするなって思って見てたらしいのよ

…それでね、「ナスさん今日は、お疲れみたいだから、早く帰って身体を休めなさい」ってみんなが言ってくれて、ちょっと早く仕事を終わらせてもらったのよ

「母さん、やるぅ(^^)/」
「何言ってるの?みんなかなり本気で心配してくれてるんだから^^;」

母さんの車が家に着くと、すみれや華達みんな出てきて迎えてくれました
その日から毎日大騒ぎよ

でもね、今回の帰省には大事な目的があったの
「母さん?」
「何?ももちゃん」
「母さんに一緒に来てほしいところがあるの」
「どこかしら?(^^)」
「車に乗って。……違うの、私の車に乗って(^^)」
「えっ?ももちゃんが運転するの?」

母さんはびっくりしながら、助手席に乗りました
「どこに行くの?」
「見せたいものがあるの」
私は丘の上に車を止めました

私はトランクを開けて、光さんから借りてきたスクリーンを出しました
そして私はスイッチを入れました


スクリーンの中には外国のような風景が映っています
港には白いヨットが何隻もとまっています
入り江の向こうの方には昔見たような大きな外輪船が、煙突から白い煙を吐いています

丘の斜面には煉瓦造りの家がびっしりと並んでいます
その中にひときわ大きな建物があります

病院のようです
病院の横にはオレンジ色の屋根に白い壁のこぢんまりした家があります
家からは、きれいな銀色の髪をして、透きとおるような水色の目をしたおばあさんが杖をついて出てきました

後ろから何頭かのわんにゃんがついてきます
…「ももちゃん、あれって?…お姉ちゃん!?亡くなった母さんのお姉ちゃんよ。それに後ろからついて行っているワンコは、めりちゃんとりりちゃんと…みんな姿は違うけど間違いないわ」
…「そうなの?」

みんなは病院に入っていきます
でもそこは全然病院らしくありません
まるでリゾートホテルのような明るさです

入ってすぐ右側に受付があります
受付の奥の壁には、にっこりとほほえむおじいさんの肖像があります

…「母さん、あの人はね。あのおばあさんのここでの人生の伴侶だった人よ」
…「(T_T)」

肖像には、この病院の創設者であるという説明が書かれています
おばあさんは、わんにゃんとともに2階へ上がります
「さあ、あなたたち、今日もよろしく頼みますよ」
おばあさんがわんにゃんに声をかけると、みんな一斉にそれぞれの部屋へ走っていきました

お部屋では、子どもからお年寄りまでがわんにゃんが来てくれるのをとてもとても楽しみに待っています
あとからおばあさんも入っていきます
「奥様、ありがとうございます。ここに来てただ衰弱していくばかりだった母が、うれしそうに笑ってくれるようになりました」
「奥様、うちの子はここに来てからこんなに明るく…」

みんな口々におばあさんにお礼を言います
「お礼を言うのは私の方ですよ。こうして年を取ってからも生き甲斐を持って暮らせるのはみんなのおかげですよ(*^_^*)」

廊下の端のいちばん日当たりの良い部屋
そこはもうすぐこの人生を終えようとしているおじいさんの部屋でした
そばには奥さんと、娘さん夫婦がついています
「奥様、この人ったらまたあの『夢』にうなされているみたいですの」
「まあ」

おばあさんは、本人からその夢の話は聞いていました
それはこんな話でした


夢の中でわしは、遠い遠い国で金持ちだった
何人もの従業員を雇い、独裁的な社長だった
わしは、誰も信用していなかった
ただ、好きな狩猟をする時だけが心の慰めだった

猟には優秀な猟犬を連れて行った
その中に「サリー」というビーグルがいた

わしが仕留めた獲物は小さなものならサリーがくわえて取ってきた
ある時、鹿の親子を見つけた
こんな大物は滅多にお目にかかれない

わしは母鹿を撃とうと決めた
しかし、その側には生まれてまだ間がない子鹿が寄り添っていた

わしが銃を構えると信じられないことが起きた
いつもはわしに従順なサリーがわしの足に噛みつき、続いて鹿に向かって大声で吠えたのだ
まるで、「ここにお前を狙っている者がいる。早く逃げろ」とでも言うように…

わしは頭に来た
今まで可愛がってきたサリーに裏切られるとは思っていなかった

わしは銃床で思い切りサリーを叩いた
そしてぐったりとなったサリーの首輪の識別章をつぶし、その場に置き去りにして山を下りたのだ

それから私はなんとひどいことをしたのだろうと悔やんだ
しかし、一度捨てた犬を迎えに行くことはプライドが許さなかった

それからその人生を終えるまでわしはサリーを捨てた事を忘れることがなく、山の中で衰弱して死んでしまったであろうサリーに許しを請うたが、許されるはずもなかった


「…サリー、サリー」

「おかしなことをいうものね、この人、今まで犬なんか飼ったこともないし、鉄砲なんて触ったこともないのに」
と、奥さんは言いました

その時うっすらと目を開けたおじいさんの目線がスクリーンを見ている私と合いました
「サリー、サリーじゃないか?」
「ううん、私はももよ」
「お前さんは、生まれた時からももだったのかい?」

ええっ?私はももである以前に誰かだったの?
…?…??……!

その時、私の中ですっかりふたをしていた記憶がよみがえってきました
ナス母さんに拾われてももとして暮らす前に、名前は忘れたけど猟犬として山を駆けていたことを…

「サリーなんだね(T_T)」
「おじいさん、私はサリーだったかも知れません。でもあの後母さんに拾われて『もも』として幸せに暮らしたの」
「あのまま山の中で死んでしまったのじゃないのだね?」
「違うわ、とっても幸せだったわ」

「わしはお前に謝っても謝りきれないひどいことをしたんだ。恨んでいるだろう?(T_T)」
「ううん(^^)もうすっかり忘れたの。恨んでなんかいないわ」

「お前の隣にいる人が、そのナス母さんなのかい?ナスさん、ありがとうございました。どうかわしを許してください」
「おじいさん、心配入りませんよ。私はももちゃんと暮らすことが出来てとても幸せでした。どうもありがとう(T_T)」

「おお、主よ。私は許されたのでしょうか?」
その時、誰からともなく賛美歌を歌い始めました

静かにドアが開き、若いけどやさしい目をしたドクターと、やさしそうなナースが入ってきました
その様子を見ていた母さんは、ぽかーんと口を開け、目からぽろぽろと涙をこぼしました

そのドクターは、姿形こそ違うけど現在を一生懸命生きているお兄ちゃん(ナス母さんの息子)、そしてナースは、なんとナス母さんその人だったのです
「ジョゼフさん、心配事が消えてよかったですね。おめでとうございます」
「先生、ありがとう(T_T)…先…生」

「さあ、ご家族の方、しっかり手を握って上げてください…」
ナースがそう言い終わると、おじいさんのベッドの側には天使達が舞い降りてきていました
ゆっくりと身体から抜け出したおじいさんは、一人一人にキスをしてゆっくり天に昇っていきました

若いドクターはスクリーン越しにナス母さんに深くお辞儀をしました
おばあさんも、うれしそうに母さんに会釈しました
そして、こう言いました
「心配しなくてもいいのよ。あなたの生き方は間違っていないわ。もっと自信を持ってね。私はすっかり元気よ。安心してね。ありがとうね(*^_^*)」


そこで、スクリーンはゆっくり消えました
車を停めた周囲は、少し涼しい風が静かに抜けていきました
母さんは何もしゃべりませんでした(T_T)
私も何もしゃべれませんでした(T_T)

私たちは再び車に乗り走り出しました
「ももちゃん?(T_T)」
「ん?(T_T)」

「ありがとう、ももちゃん、こんな素晴らしいものを見せてくれて…」
「母さん、みんなはこの次生まれた人生で、きっとあんな風に堂々と生きいてるのじゃないかしら」

「そうね、きっとそうなるわね」
「今夜あのおじいさんに会えたことで、私の心のどこかで引っ掛かっていた何かが取れた気がする。自分では気付いてなかったけど、心のどこかで恨んでいたの。私を捨てた人がまさか次の人生まで苦しみを持ち越しているとは思わなかった」

「そうね、ももちゃん。周囲を愛しながら暮らせる私たちは本当に幸せね。そして恨みという重い荷物を捨て、許しという荷物に積み替えれば、私たちは過去から自分を解放することが出来るのね(/_;)」

そして私は里帰りを終えてまた元の世界に戻る時が来ました
「母さん、いつも応援してるわよ。あなたの生き方が大好きです(/_;)」
「ももちゃん、ありがとうね。向こうでも元気にしててね」
「また来年ね、行ってきま~す(^^)/~~~」

私は車に乗り、ひこうき雲がしっかり出ていることを確認しました
外では、ナス母さんはもちろん、うちの大事なわんにゃん達も手を振り足を振り、尻尾を振ってくれています

私はひとつの人生を、2度生きました
今回の里帰りは完全に忘れていた、でも心の隅に恨みだけが残っていた1度目の人生を思い出し、飼い主を許し、癒されることが出来ました

ありがと~っ、母さ~ん、お兄ちゃ~ん、みんな~っ(^^)/~~~
私の車はトランクに一杯思い出を詰め込んだのでお尻が少し傾いたまま、ゆっくり上って行きました
つづく





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最終更新日  2006年10月21日 13時17分45秒
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