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カテゴリ:白夜行
<感想> すごかった。心が締め付けられて、嗚咽をもらしながらみた。 できれば、一昨日からの雑音を一切耳に入れず、雑念なく見たかった第6話だった。あまりにも山田君をめぐって現実におきていることにシンクロしている内容だったから。 けれどあえて批判を全て受ける覚悟で、この作品に真摯に取り組み、結果を残そうとしている山田君のためにも、そうしたことを抜きにして、亮司の惨めで、無様な生き様をしっかりと受け止めたいと思う。 1話からの流れが、松浦の殺害へという第一部の終着点とも言うべき河口へ向け、全てを飲み込み一気に加速して、新たな物語の幕開けになだれ込んでいった。 今週のMVP 松浦(渡部)& 園村(小出) 山田君は受けの演技に徹してましたね。それでも、松浦を指してから、彼が息を引き取り、その力の抜けた体を抱きとめるあたりの芝居は、圧巻でした。綾瀬さんは、最後の「どこに連れてってくれるんですか(にこっ)」が怖くて、怖くて。完全に魔性の女雪穂でした。 以下レビューになります。 <二組の擬似親子> 古賀と笹垣― 父の背中を見て子が育つように、笹垣の捜査にかける思いを受け継ごうとする古賀、 偽者の父親でもその存在は明るい太陽 亮司と松浦― 「寄生虫…」。亮司の中に自分を見出だし、亮司をそばに置き、自分からは離れない ように支配する松浦、 亮司にとって偽者の父親として、その存在は暗い闇 刑事として自分のDNAを受け継ごうとする古賀を優しく見つめる笹垣と 松浦のDNAを受け継ぐことを拒絶し、その存在を抹殺しようとする亮司 愛されずに育ち、愛し方、愛の受け止め方を知らない亮司と松浦だから、傷つけ合うしかなかった。 <雪穂の想い―子どもから女そして母へ> 亮司を傷つけ去った雪穂。二人でいると傷つけあうだけ。「深い沼に沈んでいくだけ」という亮司の想いを雪穂も共有していたのでしょう。「二人でいる方が一人でいる方がつらい」。ここにも愛されずに育ち、愛し方、愛の受け止め方を知らない子どもが二人。 けれど雪穂はようやく気が付く。自分が篠塚への憧れを口にし、わがまま放題できたのはそこに亮司の深い自分への愛があったからだと。雪穂、求めるだけの子どもから、慈しみ与える女として、母としての感情を亮司に持ったのかな。自分も亮司にだけは愛されていたこと、ようやくわかったんだろうね。 <亮司の救い> 亮司には二つの救いがあった。暖かな陽だまりのように亮司を見守り、亮司を知りたい、支えたいと願う友彦の存在。亮司の目の光の中に、松浦への殺意を読み取る友彦。友彦=小出恵介君はいいですね。亮司を心配し、その感情を読み取り、行動する強さがある。 「本当の強さは打たれても打たれてもまた立ち上がること」 普通の家庭で、愛されて育った人特有の屈託のなさ、強さが亮司にはうらやましくもあり、まぶしかったのかもしれません。そんな彼の明るさに癒されて、いったんは殺害を留まる亮司。銭湯のシーンはサービスシーン?体張ってますね。 「終わらぬ白夜はきっとない」そう信じさせてくれる友達、友彦の存在 けれど、運命は過酷な選択へと亮司を導いてしまう。銭湯(にせもの)ではなく温泉(ほんもの)に行こうという友彦の願いはちょっとの差で亮司に届かない。亮司に光を与え続けるのは、結局偽者の太陽だけ。 それは亮司のためなら自らの手を汚すことも厭わない氷の女神となった雪穂。礼子を篠塚からもらった睡眠薬で眠らせ、松浦殺害で亮司を自由にしようとする決意。くしくも凶器に選んだのは、鋏。 <篠塚の疑念> 篠塚はレイプ事件の裏に雪穂がいるともう感づいているのでしょうか?確かにあの写真が篠塚に送られている以上、江利子との関係を知る人間に疑いを向けるのは妥当。それとも車の中でやりこめられたのが気に入らないのか。まあ前者でしょう。雪穂が篠塚からわざと薬をもらったのは、様子を探るためと自分が江利子事件のショックに苦しんでいることを印象付けるためか?これは今後篠塚が雪穂の実像にせまるための伏線ですね。 <松浦と弥生子 ほんものと偽者の対決> 昔盗んでいった写真とネガを返せという弥生子。ということは、弥生子は夫が幼女性愛者だということを知っていた。そして、亮司がそんな夫を殺したこともうすうすは感づいていた。それらがいつ弥生子の中でつながったのか、きっと完全につながったのは、高校の卒業式の手紙を見たとき。でも血の付いたシャッツを洗ったのも、アリバイの口裏を合わせたのも、もしかしたらという気持ちはあったからなのかも。 きっと弥生子も子どもの愛し方を知らなかったんだろうな…。自首させるのも愛情だったはずなのに。 「こんな生き方してるなら、刑務所行ったほうがましよ!」 もっと早く、もっと早く亮司にこう教えてあげることができたなら、松浦という偽者の父親に亮司の人生が取り込まれることはなかったのに。亮司の道は明るかったはずなのに。そしてそもそも松浦と浮気することなんかなければ、幼い亮司の心は守られていたはずなのに。 「ずっと、本当は俺ずっとこうしたかった」 「あんた来てからおかしくなったんだよ、家」 「死んで、もう」 亮司と弥生子を守ってきたという松浦。だから誰にも亮司の秘密を言わないできた。 「ひどいよ、亮ちゃん」 「きれいだろ。ぱちもんの昼も悪くないよ」 これは自分という存在を認めてほしかった松浦の心の叫び。「本物(兄)」と「偽者(弟)」と区別され、さげすまれて育った中で、誰かに存在を肯定してほしかった。自分と似た誰かを肯定することで、自分を肯定したかった。だから、亮司をその罪ごと受け止めてきた松浦の間違った愛情。 そして本物の親であるはずの弥生子も、「それでいいの」という問いかけしかできない。自分が亮司を愛してこなかった自分の罪ゆえに、罪を償い生きるという道を亮司に示すことがどうしてもできない。 亮司は白夜から抜け出すことはできない。 <白夜のおわり> 亮司の救いは、やはり雪穂でしかなかった。亮司の自分への愛に気づいた雪穂は、亮司を太陽の下に戻すことを約束する。 第3話の教会で、亮司が雪穂に誓ったように、今度は雪穂が亮司のために、二人のために金を稼いで、華やかな成功の道へと進んでいくこと、その頼りとなることを誓う。母のように、亮司を抱きかかえ涙を流す雪穂は、夜叉であるはずなのに、菩薩のように、聖母マリアのようにすら見えた。こんな生き方しかできない二人が悲しくて、悔しくて。 一話ごとに、深みを増す脚本と演技に完全にノックアウトされています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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