・・・じつは、なにをだらだらと書いているかというと、あの問題作『リトル・トリー』
が心にひっかかっているのですm(__)m。
『リトル・トリー』は10年ほど絶版だったものが
91年復刊、ヒットとなり、「ハックルベリー・フィンの冒険」以来の傑作と絶賛され、
同年わが国でも翻訳出版されてベストセラーになりました。
いまも増刷つづけているばかりでなく、わが日本(笑)では名作として
中学の国語の教科書でも紹介されています。
内容は5歳で両親を亡くしたリトル・トリーが、
チェロキー・インディアンの祖父母にひきとられ、
美しい山河や森と祖父母の愛情に包まれて成長してゆく、
詩情豊かな美しい物語です。
これは著者フォレスト・カーターの幼き日の自叙伝とされ、
日本の出版社はいまだに訂正なさっていないようです。
・・・それにしても、作品からうける清冽で抒情的な印象と
著者本人のあばかれた?経歴
の隔離はすさまじく、ごたぶんにもれずこちらのほうが劇的ですね!
ネイティブ・アメリカンの歴史やライフスタイルについてよく知らないので
なんともいえませんが、
著者カーター氏が『リトル・トリー』をはじめて出版した76年は
民族の誇りを取り戻すいわゆるレッドパワーが隆盛だった時代らしいです。
KKKの大幹部である有色人種排斥運動家(れっきとした白人)が
自然と共生するインディアンの子孫を騙り
インディアンの心と誇りを語るストーリーテラーになりすます???
もう、すごすぎるギャップで、言葉がでてきません。
著者の前職がラジオ作家とのことで、
ブームの仕掛け人、一流のヒットメーカーの
一攫千金をねらったのか(つまり、単なるお金のため?)
実際にインディアンに共感するものがあったのか・・・
(KKKも先住民族もマイノリティーなことが一致しているので
親近感おぼえたという説もある、それはそれですごいけど)
とにかく著者はなにも語らないまま亡くなってしまったので
読者がどう思っても推測の域をでない、
感動した愛読者のかたは、それだけに嘆き悲しみも大きいだろうなと察します。
ネイティブ・アメリカンにくわしい北山耕平さんというかたのブログです。
こことここ、こちらもぜひ読んでみてください。
・・・あの『にせユダヤ人と日本人』みたいに
どなたか
作者の人と思想、くわしい経歴をたどりつつ
『リトル・トリー』検証本を出してくれないかなと
期待するのですが・・・
欧米ではこのての「えせ自叙伝」が非常に多く、
出版界もいちいちとりあっていられないんだそうです・・・。
作者をこだわらずに作品として読めばたしかに名作だし
すばらしい物語なのだけど、
暴露されてしまったあとではどうにも疑心暗鬼になりますね。