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空のむかしばなし

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2012.01.16
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モ式水上機到着

 5月9日、予定より1日遅れて、待ちに待って飛行機が到着した。機種に機関銃を備え付け、発動機はベンツ式100馬力を搭載したモーリス・ファルマン式水上機、イの53号機と
58号機である。
 前夜、渥美湾に停泊中の母艦若宮丸に搭載されていたもので、早朝の発進が53号の故障で遅れ、母艦も足山沖15哩へ移動、修理を終えて、10時05分同時に発進、2機雁行して新居弁天南方上空まで来たところで、53号機にまたも故障が起こり、外海の海岸に不時着水した。一方の58号機は僚機の無事を確認の後、10時40分大正浜に到着した。故障の53号機は、漁船に曳航されていったが、東海道線の鉄橋に遮られたため、新居弁天の海岸に引き揚げられ、修理の後、同夜8時飛行して無事大正浜に到着できた。

フ式水上機

 海軍では、今回の陸軍主体のフランス航空団による欧州大戦の戦訓を生かした教育体系の一大改革に、当初から積極的に参加した。1月31日付の静岡新報にはすでに、浜名湖岸に着水場を設け、海軍飛行機による練習参加予定と12名の飛行将校の名前が紹介されている。また空中からの射撃訓練には、広大な水平面を必要とするところから、射撃場と近接した飛行場(着水場)を得られる水上機は、正に好都合だったに違いない。
 海軍では最初、使用中のモーリスファルマン水上機のうち、ルノー70馬力搭載のものを小型水上機、ルノー100馬力またはベンツ100馬力搭載のものを大型水上機と呼んでいた。この他にルノー90馬力カー地ス90馬力を搭載したものもあったようだが、詳細は不明である。
 大正4年後半に入って、練習機はイ号、偵察機はロ号等と呼ばれるようになった。イ号はルノー70馬力型、ロ号はルノーまたはベンツ100馬力型である。その後新鋭機が導入されるにしたがい、ルノー70馬力は使用が中止され、大正8年当時には、100馬力型が練習機に代わって使用されていたため、イ号と称されていたようである。一般的には、機体番号と重複するためイの何号機と呼ばれていた。また、海軍では、モーリス・ファルマン式水上機のことを、縮めて、「フ」式と称していたが、陸軍では、モーリス・ファルマン式陸上機およびその国産改造型を「モ」式と称していた。射撃班での使用機も、新聞発表等では、陸軍式に全て「モ」式何号機と称されていた。
 本文では、使用される飛行機の名称を最初に正式名で示し、その後は当時そう呼ばれていたように全て略称で書くこととする。
 また海軍では、すでにぜんねんの大正7年1月28日、フ式100馬力、ロの第7号機(当時はまだロ号であった。)に軽機関銃を据え付け、空中における飛行凧への射撃実験を行っている。
 5月13日、いよいよ射撃訓練飛行が開始された。午前7時、市丸中尉を先頭に、坂尾兵曹、加藤、大柴両中尉、森軍曹が交互に、モ式イの53号機で浜名湖を縦横無尽に飛びまった。
 訓練期間を通じて、日曜・祭日・雨天および特別の事情の時を除いて毎日飛行したが、概ねまず、海軍の飛行責任者たる市丸中尉が湖上の天候偵察、特に気流の状態を調べるために飛んでいる。その後、各専修員が練習にはいる訳である。飛行は、ほとんど午前中に行われた。これは、この地方が1年を通じて風の強いところであるが、午前中はそれが比較的穏やかなためである。

射撃班

 前述の加藤久次郎は回想する。
「飛行は必ずといってもいい程、まず水上滑走で北上していました。新所鼻の神社のところに大きな松があって、それが目印でした。そこで反転して、南へ向かって離水するのです。必ず南へ向かって離水するのは、何でも気流の関係だということを聞いたことがあります。
 また私達は、この水上機のことを『カッポン下駄』と呼んでいました。カッポン下駄とは、女の子のはく下駄のことで、歩くといつもカッポン、カッポンと音がしたので、この地方ではそう呼ばれていたのです。その下駄の形が水上機のフロートによく似ていたので、『カッポン下駄』と呼んだ訳ですよ。」
 水上機は後々までも「下駄ばき」と呼ばれたが、その起源はあるいは、この辺のところにあったのかもしれない。因みに「カッポン」下駄とは、一般に言う「ぽっくり」下駄のことである。





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Last updated  2012.01.17 14:02:19
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