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カテゴリ:銀の月のものがたり
広大な荒地で剣が交えられていた。
脇には切り立った高い岩山。岩山の反対側の斜面には、トールの研究小屋がある。 そこから泉の湧く森をぬけて出る荒地は、むこうの果てが見えぬくらい広い。 動物や妖精たちで賑やかな太古の森と地続きとは思えないほど、すべてが茶灰色に沈んで見えた。 その中で、剣を中心にした二人の周りのみ、光が乱舞している。 ひとりは長身の男でひとりは華奢な女、どちらも銀髪だった。 普段は術式理論を教えているトールだが、実戦に出たこともあるし、その練習をしないわけではない。剣を使えばそれなりの腕はあった。 分身の銀巫女と自宅の敷地内の荒地、なら手軽というわけだ。 実際、基礎の型は完璧だが実戦経験があまりなく、身は軽いが力がない銀巫女と、基礎はひととおりで後は実戦剣法、背が高くて力があるトールは、実力が拮抗していて好敵手であった。 右手に剣、二人とも盾は持たず、展開する魔法陣で相手の攻撃を防ぎ、跳ね返し、受け流しつつ魔法を放つ。 二人とも相手が自分の分身であるし、お互いヒーラーでもあるからまったく容赦というものがない。 二人のエネルギーがぶつかり合うと、そこに光のきらめきが生まれるのだった。 光はもう、一時ちかくも生まれては散っていただろうか。 荒地にさす太陽の光が翳りはじめたころ、「そこまで!」と誰かが叫んだ。 とっさに二人が剣をおさめて声の主を見やると、ひょろりと背の高い、金茶の髪をした古い友人、デセルが笑っていた。 「面白そうなことやってますね。次は俺も混ぜてくださいよ」 泉で汲んできた清冽な水を二人に渡しながら彼が言う。 二人は礼をいって冷えた水を飲み干し、笑った。 「いいよ。じゃあ一休みしたら僕と」 トールが汗を拭いて言う。銀巫女は手近な岩に腰かけ、おだやかに二人を見ていた。 動きやすく髪を上げ、ほんのり上気した肌が美しいとデセルは思った。 じっと見ている視線を彼女がとらえて小首をかしげたので、あわてて目をそらす。 森の泉に行って顔を洗ってきたトールが、大きく伸びをして微笑んだ。 「さあ、いつでもいいよ」 「行くぜっ」 デセルは心なしか彼女の目を意識しながら、音高く剣環を鳴らした。 ************** 魔法学校ネタでなくてすみません。 この人頭脳派っぽいけど、戦闘とかするの?って思ったらしてました・・・w 応援してくださってありがとうございます♪→ 2月24日(火) ロシアンレムリアンヒーリング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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