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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年03月01日
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結局、どこへも行くあてなどなかった。
飲みに行くことも考えたが、こんな精神状態でステーションの友人を呼び出すのは憚られたし、第一酒を飲んだらよけいに神経が冴えて泥沼にはまり込むだろうと思われた。

トールは岩山と神殿の周囲を埋める太古の森をさまよっていた。
この大きな森をまっすぐ抜け、左に廻って岩山の背後に出ると、模擬戦や大規模な実験につかう広大な荒れ地に出る。
右の奥に入りこんでゆけば、この「場」の神聖な場所としての神殿があるが、今は神に祈りたい気分ではなかった。

あてどもなく森に足を踏み入れると、丈高い木々たちはすぐに闇をもって彼を迎えいれた。
普段は賑やかな鳥や動物たちも妖精も、今日という夜はみな静かに息をひそめているようだ。

限りない闇に抱きとめられたことに心なしかほっとして、トールは下草の生え揃った空き地にどさりと身を投げ出した。
闇にゆれる木の葉がぽっかりと空き、満天の星空が見える。星々の歌が長身を包み、宇宙に浮かんでいるような錯覚を起こさせた。

大きく息をついて目を閉じると、ふと銀巫女に意識が繋がった。
今はお互い肉体のない意識体として同じ次元に存在しているが、時間の矢の流れに沿って言うならば、銀巫女はトールの過去生、それもおそらく、もっとも古い過去生ということになる。
二人は同じ魂の違う側面というだけであり、別人のようでも根源は繋がっていて、大きく見れば同一人物なのだ。

だから彼女の感覚は自分の感覚であり、その逆もしかり。普段は遮断することもあるが、肉体という枠がないため、そのほうが難しい。
トールはそのまま、意識をさまよわせて分身に合わせた。


   *   *

銀巫女はほの白い空間にいた。
そこが自分の家であるかさえ、よくわからなかった。よりかかる背の後ろにやわらかいクッションを感じ、どこか慣れた場所にいるのだろうと思った。

すべての防御を放棄し、奇跡的に傷は小さかったものの、トールの闘気をまともに浴びて失神してしまったデセルを介抱したあと、どう移動してきたのか覚えていない。

デセルはもう大丈夫だと、治療者としての知識と経験が明確に告げていたが、身体の震えはおさまらなかった。
あの金茶の髪が、血ぬれて倒れてゆく場面が何度も目の裏に蘇る。

過ぎし日、彼が肉体に持っていた命を奪ったのは、誰でもないこの銀巫女の手であったのだから。

彼女は震える手を胸で握りしめた。
妹巫女の苦難と死。朽ちてゆく神殿。先読みの力を授かっていながら、なにひとつ防げなかった自分。
あのとき彼女は、意思とは別にデセルを殺してしまった後、自らも命を絶つという最後の罪を犯した。

二つの罪は見えない鎖となって彼女を縛り、いまだ本当には自分自身を赦せずにいる。

デセルのことは好きだった。
過去にはさまざまなことがあり、妹巫女のことで憎んだ瞬間もあった。
けれども、あの時代の流れの中で、誰かが終焉の幕をひかなければならなかったのだと、今の彼女にはわかりすぎるほどわかっていた。
永い時のせせらぎにすべては洗い清められ、今心のどこを探しても、彼への憎しみは見当たらない。

彼が自らの罪を強すぎるほどに悔い、またも刃の前に身を投げ出すとは思わなかった。

デセルが贖罪としての死を望んでいることは知っていた。
闇の神殿が終わるとき、彼女の刃の前に身を投げ出してきたときの彼が、まさにそうであったから。
あのとき彼は、仲間の刃から彼女を護ろうとしていたのだと、ずいぶん後になって気がついた。
しかし同時に、彼女の刃によって死ぬことを、心のどこかで望んでいたに違いない。

彼の死に顔は安らかだった。
しかしその事実は、銀巫女の心を慰めてはくれなかった。

それほどまでに想いを捧げられる価値が、自分にあるとは思えないのだ。
自ら望んでとはいえ、殺されてなお出会い、そして彼女を護りたいと言ってくれる、実行してくれている彼。
私はその愛を受け取る資格があるのだろうか?

貴女が貴女でいてさえくださればいいんです、と彼は言う。
どうか護らせてください、と。

生まれ変わり死に変わる時のなかで、神殿に関係のない自分であったなら、近しい魂ゆえに夫婦として過ごす時間もあったかもしれない。
けれども、彼がもっとも愛してくれる銀巫女という存在は、すでに神の妻として神殿の主に捧げられている。
自らを与えることもできぬのに、その暖かさをあてにすることは罪ではないのだろうか・・・・・・。



・・・・・・ああ、それでも。それでも。

思い悩むこの瞬間にさえ、デセルの想いは時空を超えて彼女を護りつづけている。
ふと意識をむけさえすれば、薔薇の花弁のようにやわらかに自分をつつむエネルギーを感じることができる。

何も否定しない、すべてを包んでくれるその暖かさが彼女の身体を満たしてゆき、ついに長い長い時間凍っていた瞳を溶かした。

すみれ色の瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
流れ落ちてゆくものを拭いもせず、彼女は少し目をふせて、暖かさが体から満ちあふれていくにまかせた。

「銀巫女さま」

異変を察知したのか、すぐさま駆けつけてきてくれたのは、やはりデセルだった。
首に包帯を巻いたままの姿で、どうされ・・・・・・と言いかけて口をつぐむ。
泣き顔を見てしまっただけでも衝撃だが、彼女が長く泣けずにいることをデセルは知っていたから、ますますどうしていいかわからなくなり、おろおろとその辺りを歩き出した。

手を意味もなく上げたり下げたりし、彼女からほんの少し離れたところを行ったり来たりする姿は、まるで背の高い熊のように思われて銀巫女の唇をかすかにほほえませた。

彼女の唇の動きを見逃さなかったデセルが、言葉を聞きとろうと身をかがめ、耳を近づけてくる。

彼女は思った。
このひとが、私が殺めてしまったひとだ。
このひとが、私を愛してくれるひとだ・・・・・・。

そのとき、銀巫女は自分でも思いもしなかった行動に出た。
白い腕をのべて彼の首にまわし、涙のとまらない瞳を首元に押しつけたのだ。
ありがとう、大好き、死なないで・・・・・・言葉にならないそんな思いが、ハートから直接洪水のように流れ込んでゆき、もらった暖かさの返礼のように、彼の身体を満たしてゆくのがわかった。




そこまで見て、トールは一度離脱した。
ひとつには少し照れくさかったから、もうひとつには、デセルがまるで氷の彫像のように固まってしまい(無理もないが)、完全に動きが止まってしまったからだ。

トールの瞳にも、涙がじんわりと浮かんでいた。
感情の嵐の中にいるのは相変わらずだったが、なんだか眠れそうな気がした。







****************


おかげさまで、新居が無事に決まりました!!
祈ってくださった皆様、どうもありがとうございました♪
この決まり方もなかなか面白いエピソードだったので、また記事にしたいと思います~

トール小説もおたのしみくださいませ♪


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プレゼント3月3日(火) ロシアンレムリアンヒーリング








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最終更新日  2009年03月01日 19時29分01秒
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