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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年04月20日
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トールの勤める魔法学校の校長は、白い髭が印象的な好々爺である。トールとは古い友人で、職探しに行ったときにはこんな会話があった。

「おまえさん、どうせなら校長やらんか?」
「いやです(即答)。あなたの方が向いてますよ。僕じゃ貫禄ないし」
「外見なぞ、好きに変えられるじゃろ。昔並んで戦った仲じゃないか」
「とにかくお断りです」
「しょうがないのぉ~(ぶつぶつ)。じゃ、ちょうど先生を探しとる科目がいくつかあるから全部頼むよ。これは嫌とは言うまいな? 担任もてとは言わんから」
「……わかりましたよ」
「おおよかった。適任がいなくてな、困っとったんじゃ。ほっほっ」

そんなこんなでトールはいくつかの授業を受け持っているのだが、あるとき彼は校長室に呼び出された。
行ってみると、校長の脇に十歳くらいの金髪碧眼の少年が立っている。

「今度入学することになったリックじゃ。おまえさんの授業にも出ることになったからよろしくな」
と校長が言った。彼の守護する人物の分身であるということだった。
そして彼は、しぼった心話で次のようなことも同時に伝えてきた。

(トール、リックを頼んだぞぃ。友達、というものにとてもあこがれておる。本当の友人ができるといいのぉ。
じゃが、気をつけておくれ。あやつは真実を見抜く目をもっておる。闇を経験したものにしかわからない真実の目じゃ。
なかなかあなどれんぞ。まぁ、お前さんなら大丈夫じゃろうが)

入学前の面接で、何をしたいかと聞かれて「友達をつくりたい」と答えたリックの映像が届けられる。
生まれながらの力のために、親から離されて実験の日々を送ってきていたらしい。
天使の子のような外見でありながら、幼い頃から辛い経験を積んできたために非常に屈折した部分があるということがわかった。

(大丈夫ですよ。リックはこれから大きく成長するでしょう。
しっかり目を離さないでいますから)

涼しい顔でトールは請け負い、リックに対しては笑顔でこういった。

「リック、僕はトール。初級魔法の授業で会うことになると思うけど、よろしくね」



リックが入学してしばらくがすぎた。
彼は友達づきあいというものを、一切したことがなかったらしい。心は優しい子なのだが、ついぶっきらぼうな物言いをしてしまうので同級生達からは距離を置かれてしまっていた。

トールはクラス全体を「ちょっと大目にみる」ことにして、リックだけを特別扱いするでもなく、その摩擦をずっと見守っていた。
ちょっとしたきっかけさえあれば、だいたいそういう摩擦は解消の方向に向かうものだ。
そのきっかけが、リックのためにあまり大事にならなければいいが。

そう考えながらトールが教室の扉を開けたとき、ちょうど生徒のひとりが壁に向かってふっとばされたところだった。
錬金術師の手からとっさに青い魔法陣が飛んで、紙一重でその少年を受けとめる。打ち身くらいにはなるかもしれないが、重大な怪我にはならないだろう。
魔法陣の方向を垂直から水平に変え、少年を医務室にテレポートして心話で状況を伝えながら、トールは悲しげな瞳で窓際に座っているリックを見た。

そんな目で見ないでよ、あいつが悪いんだ、あいつさえ、あんなことを言わなかったら・・・・・・とリックの表情が語っている。

トールはそっと息を吐き、教室の他の生徒たちにむかって笑顔をつくった。

「僕はリックと話があるから、みんなは自習していてくれるかい?」

喧嘩の現場を見られたのに、怒鳴られも怒られもしなかったことが、生徒たちには逆に怖かったのかもしれない。
彼らはしんと静まり、それぞれ自分の机に戻ると教科書を開き始めた。

「リック、おいで」

トールは金髪の少年を扉へ手招きした。
リックの表情がこわばり、一瞬テレポートでどこかへ逃げようとする。

「無駄だよ」

らくらくとそれを押さえこむと、トールはエネルギーを足した上で座標を自分の教授室へ変更した。
静かな部屋に移ってともにL字型のソファに座り、静かな目でリックを見る。

「あいつが悪いんだ! 僕の事を・・・・・・ひどいことを言ったんだ!
あんなやつ、ああなって当たり前だ!!」

瞬間、部屋の空気が凍りついた。

「リック!」

トールの怒声を聞いたことがなかったリックは、びくりと震えた。普段は穏やかな青灰色の瞳が、凍てついた炎のように彼を見ていた。

ずっと優しかった先生、自分のことを理解してくれていると思っていた先生のきつい瞳に、リックの心も凍りつく。

「リック、君の強さも生い立ちも、僕はよく知っている。だがだからといって、報復を正当化することはできない。
力を持つものが使い方を間違えたらどんなことになるか、それは君が一番良くわかっているだろう?」

リックの背を氷塊が滑り降りた。過去に起こした同じ過ちが、走馬灯のように彼の胸中をめぐる。
自分が何をしてしまったのかに気づいて、リックはうなだれた。うつむいた青い瞳から、大粒の涙がぽたぽたと床に落ちる。
友達はまだできなかったけれど、彼は学校が好きだった。
でももう、ここを追い出されてしまうかもしれない。先生にも見捨てられてしまうかもしれない。ようやく入れてもらった、憧れの場所だったのに。
リックの細い肩が細かく震えた。

(リック。君はいつ謝った? まだじゃないのかな?)

学校では禁止されているテレパシーで、トールはそっとリックの心にささやいた。
涙目で顔を上げたリックを、怒りの片鱗すらみつからない、いつもの優しい瞳が見つめている。

「ご・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
しゃくりあげながら言ったリックに、トールは微笑んだ。

「そうだよ。過ちを犯すことが悪いんじゃないんだ。過ちを犯したらまず、しっかりと謝ること。
そこから始まるんだ。・・・・・・それにね、僕は君を見放したりしないよ」

トールの腕がしっかりとリックを抱きしめ、優しく髪をなでた。
生まれて初めて叱られ受けとめられたリックは、暖かな腕の中でしばらく泣いていた。











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最終更新日  2009年07月16日 10時05分33秒
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