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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年05月10日
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「ああ・・・・・・すみません。楽になりました。ありがとう」

傷だらけの男が微笑を見せる。銀髪の彼はいいえ、と微笑みをかえした。
男の腹部に当てていた手を離すと、ぱっくりと開いていた傷のほとんどがふさがっていた。


「お前さんが前線に来るとは思わなかったよ。平和主義者かと思っとった」

男と別れてひとり荒地の端の立つ彼のところに、初老の紳士がやってきた。血と埃に汚れた、かつては純白であったと思われる鎧とマントをつけている。
銀髪を風になぶらせ、瑠璃のマントごしに彼は紳士を見やった。長剣を手にしているが、急所以外鎧らしい鎧はつけない軽装だ。長身が向いている方向には、少し離れて幕営がある。

「・・・・・・そうでもありませんよ、マスター・アシュタール」

「お前さんほどの癒しの手があれば、こっちはありがたいが。・・・・・・あの子は、強いな」

アシュタールは彼の隣に立つと、同じく幕営を見やった。テントの中には他の幹部や専属の医療チームとともに彼女がいるはずだった。無言を続ける彼に困ったように、紳士は語を継いだ。

「あのな、負傷者が増えておる。正式にこちらの医師に手を貸してもらえればありがたいんじゃが」

「私はもうオペはできません。一般的な癒しがせいぜい、皆さんの足手まといなだけですよ」

「そうか・・・・・・」

紳士はそれ以上言わなかった。彼がなぜ彼女専属の医療チームにも入らず、単なる一兵士としてここにいるのか、紳士は知っていた。
やがてまた開戦の合図があり、銀髪の彼は顔をあげて歩みだした。

「待て、――――」

「その名はもう捨てました」

肩ごしに振り返って彼は言った。かつての名は、失われた彼女の記憶とともにある。
何と呼べばいい、という問いに対して、彼は目をふせて少し考えた。

「・・・・・・では、トールと」

過ぎにし幸せな日々の中に、彼女の明るい笑い声がよみがえる。あの日彼女は、彼の研究書の題名を読み間違えてそう言ったのだった。
二度と届かぬ記憶をまなかいに留めて、トールはしばし幕営を見つめた。




たん、と天使の子が大地を蹴る。振りかぶった大剣に太陽のような光が集まり、周囲の目を焼いた。
一瞬ののち、それは轟音とともに大地に叩きつけられた。むらがっていた魔物たちが次々と焼かれ、断末魔の声が聞こえる。

彼女はそれに目もくれず、軽い足取りで敵陣に突っ込んでいった。表情ひとつ変えずに、返り血を散らせて光の剣で右に左に魔や邪をなぎ倒す。けぶるような金髪のあどけない顔立ちに、無情な冷えた目がひどくアンバランスだった。

トールは斜め後方から彼女を追いかけていた。攻撃第一に特化された彼女には、防御、という概念がほとんどない。できるかぎりそれを補うつもりだった。
自らも長剣をふるいながら、加減して防御結界を展開する。もし邪魔になれば彼女はそれごと斬ってしまいかねないから、大規模な防御陣はしけなかった。

しかし、彼女の足は速い。一切の躊躇というものがない。
覚悟して敵陣に飛び込むというのではなく、お気に入りの空き地に遊びに行くように軽々とただ飛び込んでゆく・・・・・・そんな感じだった。
恐れに囚われては、動くことができない。
しかし恐れがないということもまた、恐ろしいことなのかもしれなかった。

どんなに敵が密集していようと、彼女は身を省みずに飛び込んでいった。だんだんトールの防御も間に合わなくなり、二人とも浅い傷だらけになってきたが、それでも、いやむしろ高揚して楽しそうに彼女は剣をふるう。彼女の鎧は、すでに敵の返り血で真っ赤に染まっていた。


激戦の中、ほとんど二人分の防御に徹していたトールを、複数の刃が同時に襲った。右に長剣を払い、左に魔法陣を展開してとっさにしのぐ。
一瞬視線が外れたその瞬間に、ちょうど彼女に張っていた防御の効力が切れたのは偶然であったろう。そして、そのわずかな間隙を敵の刃がくぐることができたのは、奇跡のようなものだったかもしれない。

湾曲した敵の刃が彼女の左腕をすべり、ほとんど切断しそうに大きく傷つける。
鮮血が吹きあがり、彼女は不思議そうに自分の腕を見た。痛みというものがないのだ・・・・・・そして、恍惚とした表情でにいぃっ・・・と微笑むと、血を流したまま相手に肉薄してその首を一撃で落とした。

トールは愕然とした。
今まで見たこともない彼女の表情が目に焼きついている。

自分は何をした?
自分は彼女に何をした?

天使の子は、骨を見せてぶらさがっている左腕などなかったかのように、さらなる敵を求めて剣をふるっていた。
己の行った「実験」の結果を目の当たりに見せられ、トールの動きが凍る。

それは、時間にするとほんの一瞬のことだったのかもしれない。
けれど彼女の左腕を傷つけるのにそれで足りたように、今度も時間は敵方に味方したようだった。

重い衝撃をわき腹に感じて、トールは我に返った。見れば一本の剣が背後から自分を刺し貫いている。

そこからは、すべてがスローモーションのように感じられた。

口の中に鉄臭さを感じながら、彼はふりむいて長剣を払った。トールに剣を刺していたため動けなかった相手が砂塵に倒れてゆく。
自らの手で剣を引き抜き、投げ捨てる。
悠長に癒す暇などなく、傷口をとにかく乱暴に焼いて血止めする。
目を上げれば無防備な彼女の背が見え、とっさに防御陣を張ろうとして咳き込み、血を吐いた。
敵が彼女に襲いかかる。
彼女の白い翼が折れる。
瀕死の重傷を負いながら、うっとりとした顔で彼女はふりむき、抱きこむように敵の刃を身に受けた。
刃が華奢な胸を貫き、彼女の口から血があふれる。
そこに黒点が生まれる。
親指の先ほどの黒点はどんどん広がり、彼女の身体とその周囲を飲み込んでゆく。

そうして彼女は闇に落ちた。























*************

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昨日はメッセを含め「天使の子 -残照-」にたくさんのご感想ありがとうございました。
おひとりずつにお返事することができませんので、この場をかりて心よりお礼申し上げます。

上からの最大のプレゼント、とか銘打っといていきなりアレ(オペの場面)なので
思い出してよかったですか?と聞かれてもしかたがないですよね^^;
普通の感覚だとそうだと思います(爆
しかーも暗いのがまだ続いてしまうという・・・・・・ある意味ごめんなさいな展開。。

でもやっぱり・・・よかった、んですよ。あれでも。
辛くても知らなくては見えない、手に入らないものが、たしかにありましたから。

そのことを、いつか物語として、昇華させていずれ皆様にお届けできたらいいなと思っています。
まだそこまでいってませんけどw

ていうか・・・あと数話でMIXIに追いついてしまうわっ。まずいわっっ(笑)



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最終更新日  2009年05月10日 18時05分52秒
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