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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2009年07月25日
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「右脇が甘いぞ」

結界を張ったクリロズの裏庭で、トールの攻撃がエル・フィンを狙う。はい、と答えながら、部下は手に握った木の枝で突きをはらった。対するトールの武器も、そのあたりに落ちていた手ごろな木の枝である。

「そうだ、ステーションの例の件は解決しました」

アドバイスの礼を述べながら身体をひねり、はらった体勢から回転力をつけて相手の胴を狙う。

「それはどうもありがとう。助かるよ」

乾いた音をたててトールは弟子の渾身の突きを叩き落とした。その余裕たっぷりな様子に、エル・フィンが悔しげな舌打ちをして大きく踏み込んでくる。
無言で振り下ろされた枝を受け止め、斜めに受け流して体を入れ替える。間髪いれずその肩を突くと、エル・フィンがよろめいた。

「治療しようか?」
「いえ、もう一本お願いします」

碧眼をしかめて言う。金髪が汗で額にはりついていたが介せず、しびれる腕に弓手を添えて打ちかかってきた。その根性はたいしたものだ。
トールは軽くため息をついてその斬撃をかわした。

「まったく君の根性には恐れ入る。少しは休みなさい」

「往生際の悪さは、総指揮官殿ほどじゃありません」

「そうかい」

にやりと笑ってトールはお返しに斬撃を放った。真っ向から受け止めたエル・フィンの枝が、衝撃に耐え切れず音高く折れ飛んでしまう。
一瞬とびすさると、トールは左手の指をたててくいと動かした。背後にあった木の枝が浮かんでエル・フィンの目の前に落ちてくる。

「ありがとうございます」

生真面目な礼を言って、エル・フィンはまたそれを構えなおした。

「あの子はいまどうしてる?」

エル・フィンの強烈な一撃をいなしつつトールは碧眼を見やった。身体を引ききったところで攻撃に転じる。

「剣を教えだしたところです。才能が…あり、そう、なの、で」

次々繰り出される斬撃に切れ切れになりながら部下は答えた。

「そうか。じゃあ今度見学に連れておいで。勉強になるだろう」

防戦一方に追い込んでおいて、容赦ない締めの一撃をしかける。したたか腕を打たれて、エル・フィンの手から木の枝が落ちた。悔しげな表情をひらめかせ、ありがとうございました、とエル・フィンは頭を下げた。

「どういたしまして。腕を見せてごらん」

「いいです。これくらい自分でやりますから」

歯を食いしばってエル・フィンは答えた。部下の性格を把握しているトールは、肩をすくめてそれ以上は言わなかった。





昼下がりのクリロズの裏庭。
森のはずれの空き地に、薄茶色の巻き毛の少年がひとり、まだ細い腰に剣を佩いて緊張した面持ちで立っている。
少し離れた岩には、金髪碧眼の師エル・フィンが腕組みして腰かけていた。

トールは横目で結界を確認し、穏やかな表情で少年のほうに歩いた。彼もまた、腰に愛用の長剣を佩いている。

正面に向き直り、銀髪の錬金術師は優しいまなざしを少年におくった。
外見年齢はジョゼと同じくらいだろうか。くるくるした巻き毛にふちどられた、まだあどけない顔立ちに素直そうな大きな瞳。
部下のエル・フィンが可愛がって育てているこの子と、正式に会うのはまだ数度目だった。

敬愛する師匠のさらに上司にあたるトールを前にして、しかも手合わせをしてもらえるということで、レオン少年は口から心臓が飛び出そうな顔をしている。
そのさまにふっと微笑み、トールはすらりと剣を抜いた。
おもむろに両手で顔の前に捧げ持ち、しばし目を閉じる。

(天と)

青灰色の目を開いて時計周りに刃を半回転させ、かるく跪づくようにして刃先を足元に刺し、両手を柄に添えてまたしばし頭を垂れた。

(地と)

何が起こっているのか、レオンはぽかんと口を開けて見とれている。
所作の意味に気づいたエル・フィンが、驚いたように組んでいた腕をほどいて立ち上がり、(トール師匠の真似をしなさい、レオン)と心話をおくった。
あわてて少年が剣を構える。

黙礼してくるエル・フィンに微笑を返し、少年の動作が追いつくのを待って、トールはゆっくりと立ち上がった。
剣の平に左手を添えて、目の上に水平に捧げ持ち、短く祈る。

(わが内なる神にかけて)

少年を促して互いの剣先をかるく交差させた。

(この剣が信義の元に振り下ろされることを誓う)

滞りなく一連の所作が終了し、トールはにっこりと笑った。
それは、今では学校の授業でしか習わないような、騎士道的な由緒正しい剣の挨拶だった。
初めてまみえる小さな剣士とその師匠に、彼は敬意を表したのだ。


大人と子供の剣士は、互いに構えの姿勢に入った。
空気がぴんと張りつめ、周囲の光が増したように感じられる。

す、と流れるようにトールは踏み出し、レオンの右肩に剣を振り下ろした。

硬い金属音がして、少年の剣がそれを受ける。
何が起こったのかわかっていないレオンの表情は、その動きが無意識によるものだと語っていた。

ほぉ、とトールは目を輝かせた。
(この子、あれが見えているのかな?)

天性の素質があるようだと、エル・フィンから聞いてはいたが。彼は笑顔をこぼし、楽しそうに次の剣を振り下ろした。

予想通り、少年は一瞬早くトールの動きを察知して見事に防御する。
自分が「ヒカリ」と呼ぶエネルギーを見ることでそう動けていると気づき、レオンの目も強く輝いた。

その瞳をとらえて、トールはまるでいたずらっ子のように軽くウィンクした。
川の流れが急に早くなるように、踏み出して彼の右耳すれすれに切り込む。
少年があわてている隙に、続けて左脇、そして頭上。急に上がったスピードに着いていけなくなったレオンが、(切られる!)と首をすくめてぎゅっと目をつぶる。

ガキン!
背の高い影が飛び出してきて二人の間に立ちはだかり、トールの剣をとめた。

「師匠、お願いします」

エル・フィンが自分の剣を構えている。声は冷静を装っているが、トールがレオン相手に寸止めするつもりなのをわかっていないはずはない。
思わず飛び出してしまったということか。

「いいとも」

トールはにやりと笑った。無表情で人を寄せつけない雰囲気をもったエル・フィンが、この子の前では柔らかい部分を出していることを、トールは歓迎していた。

ほうっ、と息をついて座り込んだレオンを横に、二人は剣を交えた。切る、はらう、突く、いなす。少年に基本の型を見せる意味もあって、彼らの動きは攻防ともに無駄のない舞のようだ。お互い木の枝で容赦なくやりあうときとは違う。


剣の練習のそもそもは、エル・フィンがグラディウスを統合したトールとの練習試合に勝てず、逆にトールに剣術指南を申し込んできたことによる。
グラディウス統合前まではほぼ拮抗した実力であったため、エル・フィンにはそれがどうにも悔しいらしかった。

「つっ……」

トールの突きを払いきれず、鋭い刃がエル・フィンの左肩をかすめ鮮血を噴いた。
銀髪の錬金術師は次の動きを即座に止め、剣を鞘におさめて部下に歩みよる。

「見せてごらん」

「いえ、こんなのは……」

言いかけたエル・フィンだが、見守るレオンの瞳が泣きそうに潤んでいるのを知って言葉を止めた。お願いします、と呟く。
うなずいたトールはエル・フィンの傷に手をあて、瞬く間にそれを治療した。

(君はレオンがいると無理をしないな。いいことだ)

微笑みと一緒に心話を送る。
無表情なエル・フィンの頬がほんのかすかに赤くなったのを、トールは見逃さなかった。














<水晶薔薇庭園館綺談6-1 剣指南(6月上旬)>(エル・フィンさん)
http://elfin285.blog68.fc2.com/blog-entry-52.html


<トールさんとお手合わせ♪☆レオン物語37話>(レオン君)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1192888975&owner_id=18458013



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>>【銀の月のものがたり】 目次1 ・ 目次 2

>>登場人物紹介(随時更新)



これはぜひぜひ! 上のリンクも読み比べてご覧ください♪
それぞれの視点から見てますから、ほんと面白いです。
こういうとこ、創作じゃなくって「ほんとにあった話」なんだなあって不思議ですよね~ 笑

コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!

ヒーリングのコメントに、ファンです♪と書いてくださった皆様もありがとうございます~(感涙
いやもうほんとに嬉しいです!!(T△T)

おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


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最終更新日  2009年07月25日 10時00分48秒
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