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窓辺でお茶を

窓辺でお茶を

本箱(童話の棚)

・「ナルニア国物語・魔術師のおい」
・「ハーメルンの死の舞踏」

『ナルニア国物語・魔術師のおい」C.S.ルイス著 瀬田貞二訳 岩波書店


十代の頃読んだ「ナルニア国物語」。「馬と少年」はもしかして途中までしか読んでいないけれど、ほぼ全巻通して一番印象が強かった箇所のひとつが「魔術師のおい」の終末的なイメージです。
最近また読みたい気がしていたところ、映画化のせいか図書館の新刊コーナーに入ったのでさっそく借りてきました。
読み始めると最初の方など一文一文がしっかり記憶の中からよみがえります。

「魔術師のおい」はナルニア国物語のシリーズの最後から2番目に置かれていますが、ナルニアの歴史としては、これが一番最初です。

少女ポリーはお隣の少年ディゴリーと、ディゴリーのおじが魔術を研究してつくった指輪で別の世界に送り込まれてしまいますが、そこでおそろしい女王(魔女でもある)を眠りから目覚めさせてしまいます。
女王の国は戦争の末、女王の滅びの呪文により滅び去ってしまい、女王はこの世界を支配しようとふたりについて来てしまいます。
ふたりは指輪を使って女王をもとの世界に戻そうとしますが、着いたのはさらに別の世界でした…

あまりに印象が強かったので、読後何年(何十年?)たっても、夜の青山あたりのオレンジ色の街灯の光が女王の国の廃墟を照らす年とって疲れた赤い太陽の光に見えてしまったり、銀座大通りの日本橋あたりオフィスビルが立ち並ぶ街を歩いていると突然あの女王のように大きくて威圧的な何者かがやってきて通りを駆け抜けて行きそうな気がしてしまうのです。

今読むと、十代の頃読んだ時よりずっと重みを感じます。
子供たちが女王に、国民はどうなったのかと聞くと、女王は「たとえ、そちのような平民にとって悪しきことでも、わらわのような大女王にとっては悪ではなくなるものがあることを知らねばならぬ。われらの肩には世界中の重みがかかっておるぞ…」と答えます。
何もないところからナルニアを創造したアスランはふたりに、消滅した女王の国をいましめにするよう言います。
と書くと暗い本のようですが、決してそうではありませんので、安心して手にとってみてください。
平和なナルニアの情景はなんとも快いものです。

瀬田貞二の訳も美しくありありと情景が目に浮かぶ文章なので、コンピューターグラフィックスや特撮をこれでもかと使った映画を見る前にぜひ読んでいただきたいと思います。
今回図書館で借りた本は岩波書店から新しく出た、挿絵に手彩色風の色がついている版です。前からある版(同じく岩波書店)より大きさも小さくなっています。
ナルニア国物語は神学者でもあったC.S.ルイスのキリスト教観が色濃く現れている(と私は解釈しています)ので、なんとなくディズニーとはそぐわないような気がするのですが、どんな映画になるのでしょうね。

C.S.ルイスは癌で病床にあった女性と結婚し、彼女は医師の宣告よりは長く生きることができ、ふたりの出会いから死別までは「永遠の愛に生きて(Shadowlands)」という映画になっているので、ご覧になったかたもいらっしゃるかもしれませんね。(残念ながら私は見ていないのですけれど) 監督はリチャード・アッテンボローです。

「ハーメルンの死の舞踏」 ミヒャエル・エンデ著 佐藤真理子・子安美知子訳 朝日新聞社



 題からわかるように、ドイツの有名な民話「ハーメルンの笛吹き男」を下敷きにしています。

 ハーメルンの町では最近ねずみが不気味に繁殖しており、そのねずみが触ったり齧ったりしたものは腐ってしまうため、河も死んで嫌な匂いがたちのぼり、食べ物も遠くから運んで高い値段で買わなくてはならなくなっています。ねずみではなく、異形のものだという人もいます。
実は、市長や司教、富豪など町の実力者が密かに大王ねずみを祀って黒ミサを捧げているせいなのでした。大王ねずみは回転しながら尻から金貨を出しているのです。
警告の叫びを発した司祭は悪魔の手先とされて処刑されてしまいます。

 市長の娘マグダレーナははじめて両親に連れられて黒ミサに行きますが、大王ねずみが金貨を1枚出すたびに何かが死ぬ、木か河か、こどもが死ぬと直感し、参加を拒否します。
ある日、ことばを話さず笛で表現する男がやってきて、報酬とひきかえにねずみを退治しますが、町の人たちは約束を破って門を閉ざしてしまいます…

 あまりネタばれになってしまうのでこのへんにしておきますが、もう一つ、妙に気にかかった箇所。
司教は裏切って大王ねずみを、兵隊を揃えるのが趣味でいつも金庫が空っぽな伯爵にこっそり売ってしまいます。ハーメルンの町ごと。
そして伯爵は町に攻め入り、人々を殺し、町を破壊し、大王ねずみをどこかに持ち去りました。


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