第22話 モリ先輩に弟子入り志願桜蘭高校ホスト部第22話 モリ先輩に弟子入り志願 笠野田組 門が開くとヤクザが大勢並んでいます。 赤い髪の桜蘭学院の制服を着た男が靴を履き、鞄を持って家から出てきます。 「若、おはようございます」ヤクザたちに出迎えられる男。 そして、いってらっしゃいやし、今日もおつとめご苦労さんですと見送られます。 「あ"あ"!?」 何故か睨みをきかせる男。 震え上がるヤクザたち。 この男は桜蘭高校1年D組の笠野田律です。 「いつも言ってるだろう。学校行くのをおつとめっつうんじゃねえ」 失礼致しましたと頭を下げるヤクザたち。 「若、お車は?」 箒を手にしながら律に尋ねる鉄也。 「いい。今日からしばらく歩いていく」 鉄也にあの場でよく声をかけられるなと言うヤクザたち。 若の眼力は更に凄くなったので、絶対学校でむかつく野郎がいるに違いないと感じているようです。 今日このその日だと考えている律はモリ先輩を思い浮かべながら登校しています。 「銛之塚崇!!」 放課後 ホスト部は新撰組のコスプレでお客様をお出迎えしています。 環は坂本竜馬の格好をしています。 ワイルドで格好良いとお客様に言われています。 「おまんらのハートはこん俺が必ずゲットしちゃるきに!!」 土佐弁の環くんも素敵と言われています。 そこだけ土佐弁っておかしいでしょうと思っているハルヒ。 しかし、幕末コスプレってウケがいいんだと知らなかったと言うハルヒに、双子は基本中の基本で幕末大好き女子は想像以上に多いと教えます。 好きな子にはマニアさんが多いよねと言うハニー先輩。 「その人気の理由は若く国のために散った気高さにあるのか、ひたすらに武士道を貫き自らを律したストイックさにあるのか、それともキムナジウム的な男子集団に禁断を感じるのか…。やっぱり一般的に池田屋があまりに有名ですけど、私としては鳥羽伏見後の北の大地に向かってひとり新撰組を守り抜こうとする土方さんの哀愁漂う背中を想像するだけでご飯3杯はいけますわ!!」 マニアさんのれんげが言います。 れんげの守備範囲は広いなと感じるハルヒ。 「ヘタにこちらで特定の役のキャスティングをやらずに、お客様の自由な妄想にお任せするのがいいと言う君のアドバイスは成功だったよ」 当然ですわと言うれんげ。 でも、沖田総司はハルヒで決まりだそうです。 まさに儚げな美少年剣士とか、死なないでぇぇとかご自由に妄想されているお客様。 ハルヒはスーパーで豚肉の特売があるので間に合うかなと考えていることはあまり儚げではない。 モリ先輩にも妄想が働いています。 島田魁がいいとか、山崎さんがいいとか、相馬さんがいいとか。 モリ先輩が急に武器を振り回します。 きゃあとお客様たちは興奮しています。 ホスト部員は白く固まっています。 「モリ先輩!?」 「どったの、急に?」 「目立たないから不満!?」 「モリ先輩。落ち着いてください。毎回台詞が一言しかない上、2クール目の後半だというのに見せ場のエピソードが少なくて苛立つのはよく分かりますが…」 「違う。不法侵入者だ」 武器は本物のようです。 ドアにきちんと刃が刺さりました。 「あ"あ"!?銛之塚崇!!」 討ち入り!?と驚くホスト部員。 「先輩、俺を弟子にしてください」 土下座する律。 ・・・?となるホスト部員。 「1年D組、笠野田律。関東圏のその筋で最大の力を持つ笠野田組3代目の跡取り息子。桜蘭には高等部より入学、赤いロンゲと凶悪な目つき、無口で友人なし。目が合えば相手に3ヶ月は悪夢を見せ、肩がぶつかれば病院送り。口ごたえしようものなら墓場へ直行。クラスメイトには人間ブリザードと恐れられている」 近づく者は凍てつかせるそうです。 「それで?そんな人間凶器の君が何故モリ先輩に弟子入りを?」 「違う。俺は人間凶器なんかじゃねえ。俺はただ生まれつき目つきが凶悪なだけなんだ」 自覚はカサノバ君と言う双子。 「笠野田だ」 「「ボサノバ?」」 「笠野田っつてんだろ!!死にてえのか!?」 ソファの後ろに隠れる双子と環。 双子は確かに凶悪な目つきだと言います。 「畜生…この目つきのために俺は…生まれた時からこの凶悪な目つきで小さい頃から親父によく言われた」 こいつは今世紀最大の極道になる器だと言う父。 幼い律が刀に興味を持って触るだけで出入りと思われてしまいます。 「そして、子どもの頃から極道の帝王学を学ばされた」 気安く人に話しかけるな、なめられると言う父。 そして「ああ」ではなく、「あ"あ"」だと練習させられる律。 父まで驚いてしまいます。 「とにかくその極道教育のおかげで人は皆寄り付かず、舎弟さえも俺を恐れて近づかなくなった。そして、俺は孤独だった…。けど、本当は俺だって皆と遊びたい。慕ってくれる舎弟たちと缶蹴りとかしたいんだ」 確かに缶蹴りはいいよなと言う環。 「けど、今更どうやって人と関わったらいいのか分かんねーんだよ」 可哀相と言うハニー先輩。 「銛之塚先輩、だから教えて欲しい。何であんたはそんな風なのか。そんなに目つきが悪くて、無表情で、無口で、無愛想で、十分地獄の番犬みたいなツラしてんのに、どうしたらそんな風に周りの奴らに慕われることができるのか。どうかその秘訣を俺に!!」 土下座する律。 頭を押えるモリ先輩は少し眩暈がするそうです。 環に何とかしなくていいわけと尋ねる双子。 モリ先輩に弟子入りしたがっているのだから放っておくように言う環。 どうするのか決めるのはモリ先輩だと言います。 「環…」 タスケテと目というか、顔で訴えます。 「いいでしょう、モリ先輩がそこまでおっしゃるのなら。この須王環、及ばずながら一肌脱がせていただきしょう」 本当は手を出したくて仕方なかったんだなと感じるハルヒ。 「顔を上げろ、ボサノバくん」 「笠野田です」 「俺のことは仮にキングと呼ぶがいい、ボサノバくん」 「だから…」 「いいかね?ボサノバくん。君とモリ先輩の相違点は多々あれど、決定的に君に欠けているものがひとつある。それはラブリーアイテムだ!!」 衝撃を受ける律(以下ボサノバくん)。 「今回ご紹介するのはこちら。ラブリーアイテム光邦くんである。確かにモリ先輩は一見目つきが悪く、冷たい印象かもしれん。ところがこの光邦くんを肩に乗せるとどうだ?まるで小動物に好かれる森のクマさん状態。更にこのアイテムはモリ先輩の無口キャラをフォローしてしまう!!何も語らずとも、ハニー先輩を配置するだけで人は勝手にモリ先輩に包容力を見出し、寡黙な好青年とポジティブ解釈してしまうという寸法なのだ!!ハニー先輩がいて初めてモリ先輩の魅力が確立するといっても過言ではないだろう!!」 なるほどと納得する双子とハルヒ。 固まるモリ先輩。 「そういえばモリ先輩って…」 「基本何もしていない」 「ポジション的にブー?」 僕のこと利用していたのと涙を滲ませながら尋ねるハニー先輩。 慌てて首を横に振って否定するモリ先輩。 「だが、光邦くんはモリ先輩が長期契約されているから君には貸せない…」 泣きながらレンタルされているのとまた尋ねているハニー先輩。 首を横に振り続けているモリ先輩。 何か変わるものを考えようと言う環。 後、問題にすべきなのはヤンキーファッションだと言います。 指を鳴らす環は常陸院ブラザーズを呼びます。 ファッションのイメチェンが行われます。 笠野田組 箒で門の前を掃いている鉄也。 「ご苦労だな、鉄也」 「若、おかえんなさえやし…」 固まる鉄也。 ドレッド風ねじりヘアーに、可愛い絆創膏に、スカーフ、ラブリーアイテムとして抱いているクマのぬいぐるみ。 学校で何かあったのか尋ねる鉄也。 物凄く恥ずかしいボサノバくんは「あ"あ"!?」と言ってしまいます。 固まるヤンキーたち。 畜生全然駄目じゃねえか、あいつらめ…とぬいぐるみを畳に叩きつけるボサノバくん。 さっきのが笠野田組の4代目の小僧かと門の外に立っている人影。 流石に屋敷の中に忍び込むわけにはいかねえと言うもう1人の人影。 明日学校でやると言い、屋敷内には入りませんでした。 この落とし前はきっちりつけるのだそうです。 天気が悪くなってきています。 若が傘を持っていったのか心配になる鉄也。 モリ先輩の前に現れるボサノバくんは鞄を持つと言います。 断るモリ先輩はボサノバくんの頭を押します。 すると、上から落ちてきた植木鉢を避けることができました。 また、植木鉢が落ちてきたので、モリ先輩が素手で植木鉢を一刀両断します。 大丈夫かと周りに心配されるモリ先輩。 慕われているモリ先輩を見ていた、ボサノバくんはこんなことしている場合じゃないと環に報告します。 モリ先輩が誰かに恨みを買っていると。 しかし、そんなことないと言う双子。 環もそんなことより、本日よりイメージアップ作戦を本科雨滴に開始すると言います。 ホワイトボードにはボサノバ天使化計画と書かれています。 「ちょっと待てよ!!本日よりってのは何だよ!?昨日のをなかったことにすんじゃねえ!!」 お怒りのボサノバくん。 あれのせいで普段より恐れられてしまったそうです。 「ボサノバくん、誤解しないで欲しい。俺たちは本気で君を応援している。昨日のはちょっと双子の勇み足だ。許してやって欲しい」 自分には責任がないと思っている環。 本気で応援という言葉を落ち着いたボサノバくん。 「すいません…よろしくお願いします」 ホワイトボードの前で話し合っているホスト部員。 「あのーカサノバくん?あんまりあの人たちの言うこと信用しすぎない方がいいよ」 善意のチクリをするハルヒ。 「だけど、銛之塚の兄貴の推薦した人たちだし、それに無理言って迷惑かけてるのはこっちだし…。あれ、そういや、あんた誰だっけ?」 「同じ1年の藤岡です。自分も高等部から入学なんだ。仲間だね」 仲間と言う言葉がちょっと嬉しいボサノバくん。 「あ…あんた、缶蹴りとか好きか?」 「さぁ、どっちかと言うと興味ないかも。でも、たまにはいいかもね」 ズキュンときたボサノバくん。 「何?」 ズキュンズキュンときたボサノバくんは女みたいな奴だなと感じます。 環はラブリー戦略が決定したと言います。 その戦略とはネコ耳でした。 ネコ耳をつけたボサノバくん。 化け猫と言ってしまうハニー先輩。 「おかしいな…。ネコ耳は昨今、かなりの万能ラブリーアイテムであるとれんげくんから教えられていたのだが…」 「ま、付け耳だけで目つきの恐ろしさを緩和させるのは自ずと限界がある」 詰めが甘いと言う双子はどうせやるならとネコ耳メイドさんにしないとと言います。 舐めてんのかと言うボサノバくん。 そこに鉄也がやって来ます。 ネコ耳メイドの格好をしたボサノバくんを目撃してしまう鉄也。 「あ"あ"!?」 すいません、密やかなご趣味の最中にと言う鉄也。 「誰が密やかな趣味だ!!くそっ」 恥を感じるボサノバくんはもうやってらんねえよとネコ耳を捨てて走り去っていきます。 ネコ耳を拾うハルヒは舎弟たちと缶蹴りをしてみたいと言うボサノバくんの言葉を思い出しています。 「カサノバ君にイメチェンなんて必要なのかな?」 「そうだね。早く気づくといいね」 笠野田くんっていつも機嫌悪いよねとか、目を合わせるなどと生徒たちに言われた言葉を思い出しているボサノバくん。 何でいつも俺は…と思っているボサノバくんは校内の緑に隠してあるバスケットを取り出します。 中には怪我の治療をしたスズメがいました。 「ほら、餌持ってきてやったぞ。羽の具合見せてみろ。おぉ…もう大丈夫そうだな」 「あっ、スズメ…」 「えっ!?お、お前なんでここに…?」 「そのスズメどうしたの?」 「この間、怪我して落ちてたんだ。医者につれてったらじき治るって」 餌をあげてもいいかと尋ねるハルヒ。 ちょっと顔が赤いボサノバくん。 スズメに餌をあげているハルヒ。 そういやこいつ、あんまり俺のこと怖がらねえな。でっかい黒目だな。きらきらしてる。本当、お、女みたい。女なんて、特に俺のこと怖がるからこんな風に喋ったことは…と思っているボサノバくんですが、こいつは男じゃねえか、何考えてんだと頭を掻き毟っています。 「危ない!!」 飛んできたペンキの缶を蹴り上げるハニー先輩。 直撃を免れたものの、ペンキがハルヒの制服にかかります。 スズメは驚いて飛んでいきました。 「ハルヒ、無事か?それは血か?」 泣きながら尋ねる環にペンキがかかっただけだと答えるハルヒ。 「本当に大丈夫か?藤岡…」 「うん」 離せと聞こえる男の声。 それを捕まえていたのはモリ先輩です。 うちの頭の坊っちゃんまで浚っておいて、こんな用心棒まで雇うなんて卑怯だと言う2人組の男。 この誘拐魔めと言われるボサノバくん。 双子は2人組を黙れ、曲者め、お縄じゃと縄で縛ります。 何の話なのか分からないボサノバくん。 「あのね、狙われてたのは最初からボサノバくんだったんだよ」 「えっ!?」 騒動にならないように犯人が捕まるまで黙っておくことにしたと言うハニー先輩。 「俺のこと助けてくれたんすか、何で?」 モリ先輩に近づいていくボサノバくん 「どちらが悪人か見てれば分かる」 そう言い、ボサノバくんの頭に手を置くモリ先輩。 着替えてくると言うハルヒ。 手伝おうかと言う双子ですが、結構ですと断るハルヒ。 捕まえられた2人組に逆恨みも大概にしろと蹴りを入れる鉄也。 てめえらと一緒にいるのがイヤで出て行ったのが分からねえのかと。 何と、鉄也は千堂組関東支部組長息子の千堂鉄也だったそうです。 かねてより千堂組の手段を選ばないやり方に反発していて、1年前のある雨の日についに親父と大喧嘩して家を飛び出したのだそうです。 「あんな不安な気持ちになったのは初めてでした。行く当てもなく、道行く人が皆俺なんて見えないように通り過ぎていく。そんな時、若が…」 自分が濡れるのに傘を差し出すボサノバくん。 「若は俺があの時、一目見て思ったとおりの人です。あの後、笠野田組に押しかけていった俺を優しく迎えてくれて…。俺は知ってやす。若が人一倍照れ屋で不器用で、それでも人一倍あったけえってことを。俺だけじゃない。組の者は皆知ってやす。若が恥ずかしがるから言えないだけなんです。この千堂鉄也、若の人柄に惚れ、千堂組とは縁を切り、笠野田組に骨を埋める覚悟でございます。俺を、これからも若のお側においてやってくだせえ」 顔が少し赤いボサノバくん。 あっ、そうだと鉄也は天気悪いんでお持ちくださいと折りたたみ傘を渡します。 4代目が風邪でも拗らせたら皆心配するからと。 「おめえら…。つ、使わせてもらう」 顔を赤くして傘を受け取るボサノバくん。 「はい」 いい話だ、感動と涙をハンカチで拭いている双子。 「あ、俺、藤岡に謝らねえと。俺のせいでペンキまみれにさせちまった」 「ハルちゃんなら部室に着替えに行ったよ」 部室へと向かうボサノバくん。 「若、後で缶蹴りいたしやしょう」 「ああ…」 良いことをしたと言う環と、今回何もしてないじゃんと言う双子。 「そんなことよりいいのか?ハルヒは着替えに行ったんだぞ」 白く固まる双子と環。 第3音楽室の扉を開けるボサノバくん。 「藤岡?」 誰もいないので準備室かと思うボサノバくんは準備室の扉を開けます。 「藤岡、大丈夫か?悪かったな。…なっ!?」 準備室ではハルヒが着替えていました。 顔が真っ赤になるボサノバくん。 「ま"」 第22話完 ジャンル別一覧
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