第24話 そして鏡夜は出会った桜蘭高校ホスト部第24話 そして鏡夜は出会った ホスト部営業中です。 部室内には畳が敷かれ、いくつかコタツが置かれています。 コタツの上にはみかんなどが置かれています。 お客様たちは初めて目にしたと言っています。 「本来コタツは冬と決まっています。ですから、時期的には少々早いのですが、季節の先取りこそ遊び上手な皆様には相応しい皆様、本日はホスト部員とのコタツ団欒サービスを存分にお楽しみください」 そんなにコタツって面白いんですかねと言うハルヒ。 受けているだろうと言う鏡夜。 これも環のアイデアだそうです。 不満があるのかと言う鏡夜にハルヒはホスト部を環と2人で立ち上げたんですよねと尋ねます。 そうだと言う鏡夜。 「クールな鏡夜先輩がどうして、こんなホスト部なんていう突拍子もない話に乗ったんですか?」 「ふっ、突拍子もないからさ」 2年前 『あの頃、鳳家の三男として生まれた俺は中等部最後の春を迎えようとしていた』 廊下を歩いていると話しかけられる鏡夜。 話しかけた男子生徒は新病院の設立に父が行って、各界の大物がいて驚いていたと言っていたと言います。 これは大手電機メーカーの御曹司と認識している鏡夜。 次はぜひ君もご一緒にと笑顔で言う鏡夜。 教室に入るとまた話しかけられます。 今度はまた学年で主席だという内容で。 すると、これは大手デパートの息子として認識しています。 3年になっても委員長は君で決まりだなと言う男子生徒は有名代議士の末息子と認識され、騒いでいる女生徒はミーハーなご令嬢として認識されています。 席に着いた鏡夜に山荘に遊びに来ないかと誘ってきた男子生徒は有名なファンドマネージャーの息子だという認識です。 星が綺麗で小さな天体観測所も作ったと言う彼。 あと、父が休暇に使う山荘だから父に会うかもしれないという言葉にメガネが怪しく光る鏡夜。 鏡夜は天体観測などどうでもいいが、君のお父さんには興味があるよと内心思いつつ、楽しみだなと言います。 鏡夜の家 姉の芙裕美は服を畳みながら、鏡夜にそんな理由で山荘に行くのかと言っています。 「お邪魔じゃありませんよ。向こうだって僕に来て欲しがっている。純粋なギブアンドテイクです」 「そんなのしっかり不純じゃないの。あちらは純粋に鏡夜さんと星を眺めたいのかもしれなくってよ。ロマンティックじゃないの。星空の下、深まる友情」 鏡夜は数学の宿題(Σの問題)を解く手を止め、ため息をつきます。 鏡夜は姉に人のクローゼットを勝手に引っ掻き回さないでくれませんかと言います。 服を整理して差し上げていると言う姉に、そういうことは使用人に任せて下さいと言う鏡夜。 「ねぇ、鏡夜さん。お父様はあんな風に厳しい方だからプレッシャーを感じて大変かもしれないけど、あなたはお兄様たちとは違うのですし、少しくらい気を抜いたっていいのよ」 「そう、僕が鳳を継ぐことはありません。約束されたルートに乗ってただ上に行けばいい気楽な兄さんたちとは違います。三男だからこそ気が抜けないんです。かけられた期待には確実に応え、しかし必ず兄を立てる、決して前に出過ぎないこと、三男という枠を超えずにどこまで実力を発揮できるか、最初から立派な額縁に入れられたキャンパスに完璧な絵を描く、それが僕の仕事だ」 「鏡夜さんは頭がいいから全てを上手くこなしてしまうんでしょうけど、でもそれで楽しいの?」 「楽しいとか楽しくないなんて関係ないですよ」 『上の兄は既に医学部を卒業し、現在は父と同じ病院で後継者として修行中。2番目の兄は医学部在学中で卒業後はMBAを取得し、兄のサポートにあたる予定。そして、三男の俺は…』 父に例の須王の息子が転入してくるのは今日だったなと言われる鏡夜。 須王財閥とは昔から多くの仕事で関係が深いらしく、共謀・敵対している企業も多くあるからこそ、良い友人になっていて損はないと。 味方とは仲良くすべし、敵とはもっと仲良くすべしだそうです。 在学の主席キープは在学中の兄たちがこなしてきたことなので、それくらいで満足しないことはもう分かっているなとも言う父。 はい、お父さんと言う鏡夜。 『人を見抜くこと、そして人に見抜かれないことに自信があった。須王財閥の息子がどんな奴でも仲良くなるくらいは簡単だ。全ては父の望むままに』 「須王 環、須王の会長が外国で産ませた子。離縁した本妻との間に子どもがなく、悩んだ末に会長は彼を引き取った。妾の子が一夜にして須王財閥の後継者か…。何て運のいい奴だ」 委員長と副委員長が呼ばれます。 2人に須王 環が紹介されます。 副委員長の手をとる環。 「とってもまっすぐで綺麗な髪だね。きっと君の心もこの髪のようにまっすぐで美しいのだろうね」 顔を赤らめる副委員長。 お国柄かと思う鏡夜。 「よろしく、鳳くん」 手を出す環。 「こちらこそ。よければ学院内を案内しようか?」 「それは嬉しいな」 握手する2人。 「ここから先が西校舎だよ。特別教室は全て向こうなんだ」 環に学院内を案内している鏡夜。 「へぇ~。ところで鳳くん、君の家にコタツはあるか?」 「えっ!?」 「コタツだよ。いいよな~、コタツ。床に直に座り、日本ならではの微笑ましき文化。日本に来たら絶対入るって決めてたんだ。でも、家には洋間しかなくって」 あ~、あれか。外国人によくある日本文化憧れ系って奴かと内心思う鏡夜。 「残念だけど、家にもコタツはないんだ。和室はあるんだけどね」 「ガガーン!!」 あまりの驚きように地雷を踏んだのかと思う鏡夜。 「そうか。ないのか、コタツ。ごめんよ、鳳くん」 「え!?」 「そうとは知らず、無神経なことを…。君の家は家族仲が上手くいっていないんだな」 「え!?」 鏡夜の肩を掴む環。 「いや、いいんだ。隠さなくても。コタツというのは日本の家族団欒の象徴というではないか。日本ではコタツの中で足をぶつけ合って軽い喧嘩をしながら仮装大賞を見て、家族の信頼関係を構築するのだろう!?あ、そうだ。みかんも欠かしてはならんのだったな。でも、そっか、君ん家にはないのか…」 憐憫の目をする環。 ちょっとムカつく鏡夜。 「間違った知識は一先ず置いておいて、よければ家の和室にコタツを用意しようか?」 「ありがとう!!鳳くん!!君は親友だ!!大親友だ!!アハハ。そうだ、親しみを込めて、これからはファーストネームで呼ばせてもらっていいかな?」 鏡夜に抱きつき、頬を擦り付けたりしている環。 「須王くん、あの…どわぁ!!」 何故か突き飛ばされる鏡夜。 「ブラボー!!ひょーい、モナーミ!!モナーミ!!イヤッホー!!」 飛び跳ねて喜んでいます。 鏡夜の家 「あらあらあら、鏡夜さん。そんな1日で親友に!?」 「たぶん親友の意味を理解していないんですよ日本語が堪能なんだか、そうじゃないんだか…。って芙裕美姉さん、人のクローゼット引っ掻き回さないでください」 今日はすっかり向こうのペースに引き込まれっぱなしだったなと思う鏡夜。 奴は馬鹿であることがよく分かったようです。 「鏡夜さん、詰め込みすぎよ。1度出したら収まらないじゃない」 服が散らかされてしまいました。 「だから…出さないでください」 「鏡夜、折り入って頼みがあるのだ!!実は京都に行きたいのだ」 真剣!!な環。 「え!?」 「コタツの喜びでうっかりしていたが、日本に来たらまず京都に行こうと決めていたのだ。奈良の大仏と五稜郭とシーサーとナマハゲを、見に行きたいのだ!!」 目をきらきら輝かせる環。 「それ全部京都じゃないけど」 ショックを受ける環。 思った以上の馬鹿だなと思う鏡夜。 「分かった。じゃあ順に回ろうか。まず今週末は京都に行って、次の連休に沖縄に行こう」 目を潤ませる環。 「ありがとう、鏡夜!!君は神様だ、大仏様だ!!」 また抱きついて頬を擦り付けている環。 また、飛び跳ねて喜んでいます。 また、モナーミ。出会って2日で神様に昇格かと思う鏡夜。 京都にやって来た鏡夜と環。 何だか勝手のつかめない奴だと思う鏡夜。 環は金閣寺をカメラで撮っています。 いつの間にかクラスに馴染んでいる環。 「鏡夜、ナマハゲ発見!!」 シーサーを手に沖縄の砂浜で踊っている環。 鏡夜は家で北海道の観光ガイドなどで調べています。 姉は勉強かと思ったと言っています。 今度は北海層に行くの?と言う姉。 案内役は運転手に任せればいいのにと言う姉。 「それじゃ駄目なんですよ。あの須王環という奴は…」 手にしていたペンを握りつぶす鏡夜。 「え?」 「京都に行ったらまだ春だというのに大文字の送り火が見たいだの、沖縄そばを食べながら突然信州そばと食べ比べてみたいだの、シーサーとナマハゲの夢の競演が見たいだの、そして挙句の果てには…」 「ごめんな…我侭言って…。そうだよな、鏡夜に言っても無駄だよな。すまない、君の能力を過大評価し過ぎていた」 「しかし、これで次の準備は万全です!!北海道では奴のあらゆる気まぐれに応えてみせますよ!!」 「え、北海道?遊びたい盛りなのは分かるが、試験に備えて勉強すべき時期だろ。試験が終わったら遊んでやるから、お前も少しは勉強しろよ」 怒りに満ち溢れた鏡夜は家で観光ガイドを投げていました。 姉が様子を見に来る始末。 「あの野郎!!馬鹿だ馬鹿だとは思ってたが、あそこまでどうしようもない大馬鹿野郎だったとは!!」 先週の環は頬を擦り付けて来週は北海道に行こうと言っていました。 「これほどまでに誰かを殴りたいと思ったことはるか?いや、断じて否だ!!」 拳を強く握り締めている鏡夜。 父や兄の顔が思い出されます 「いや、落ち着け。アレでも奴は須王の後継者。感情的になってどうする。父から試されているのは俺の対応能力なのだ。しかし、あの野郎、覚えていやがれ!!須王環、誰がコタツなど用意してやるものか!!」 もそ嫌な相手なら無理して付き合う必要ないって言ったあげるつもりだった姉ですが、こんな楽しそうな鏡夜を初めて見たわと思っています。 ソファを殴っている鏡夜。 次の日曜日 奴の相手をしない休日は久しぶりだなと思いながら歩いている鏡夜。 家に帰ってくると姉が玄関で立っていました。 お友達が見えてるわよと言う姉。 「友達?」 家の中に入ると、ピアノを弾いている環。 『正直奴のピアノを初めて聞いたその時、俺は驚いたものだ。兄が涙ぐんでたからじゃない、不覚にも、不覚にも俺自身何故か泣けてきたからだ』 突然来て悪いなと言う環。 そう思うなら帰れと内心思う鏡夜。 「試験勉強はどうした?いいのか?」 「しっかし、鏡夜の家は広いな。俺の住んでたフランスの家とどっちが大きいかな?」 嫌味かと内心思う鏡夜。 「フランスのお屋敷は知らないが、明らかに須王邸の方が大きいだろう」 「いや…俺は本邸の方には入ったことがないから分からない。第2邸はもっと狭いよ」 「え?」 「それで鳳家は将来鏡夜が継ぐのか?」 喧嘩売ってんのかと思う鏡夜。 「継ぐはずないだろ?見たろ?兄が2人いるのを。僕は兄の下で働くことになるんだ」 「あれ?それは意外」 「え?」 「君はもっと貪欲な人間かと思ってた。だって現状に全然満足していないって目だろ、それ。意外と諦めいいんだな」 「諦めるとか、諦めないとかの問題じゃない」 拳を握り締めて怒りを抑えている鏡夜。 「ん?」 「そう決まってるんだ。君のように当たり前中尾で家を継ぐ人間には分からないのかな?」 「え?」 しまったと思う鏡夜。 「俺は須王を継ぐとは決まってないぞ?」 「え!?」 「俺はおばあさまに嫌われている。だから今のままなら全然跡継ぎとかじゃないんだってお試し期間ってゆーの?俺、言わなかったっけ?けど考えてもみろ。父の仕事に興味がないわけじゃないが、この美貌だぞ?周りが放っておかないだろ。あるいはこの優秀な頭脳なら天才科学者になるかもしれないし、何より北の大地に動物王国とかも作ってみたいし―」 怒りに満ちた表情になる鏡夜。 「ふざけるな!!」 テーブルをひっくり返す鏡夜は環の服の襟を掴みます。 「何ふざけたこと言ってる。何故簡単に諦めたようなことが言える!?お前は俺とは違う!!努力すればいくらでも上にいけるチャンスを手にしてるだろ!!だったら、何故もっと努力をしない!?何故その恵まれた立場を利用しない!?お前は…!!お前は…!!お前は一体何なんだ!?」 お前は馬鹿なのに、何故俺を見抜く!! 『そうさ、実力なら兄にも負けない自信はある。だけど…だけど三男というだけで超えることが許されない枠がある悔しさを俺はいつだって…』 「何だ、努力していないのはお前の方だろ」 「え?」 「兄貴たちを超えたきゃ超えればいい。何もしていないのに諦めてるのはお前の方だ」 「はっ…!?」 「ところで鏡夜、コタツはどこかな?実はそろそろ用意してくれたんじゃないかって遊びに来たんだが…」 突然お腹を抱えて笑い出す鏡夜。 「何だ?何がおかしい?あ、さてはコタツを用意しておいて隠しているのか?」 「調子に乗るな」 環の頭にチョップする鏡夜。 「コタツは冬と決まっている。入りたければ冬まで待て。この大馬鹿野郎が」 「おぉ…悪そうな顔。本当はそういう顔なのか」 笑みを浮かべる環。 鏡夜が最初から豪華な額縁に入れられているキャンパスに描いていた絵ですが、額縁という枠を超えて、白い壁にまで描かれています。 4ヵ月後― 雪の降る季節になっています。 鏡夜の家に来ている環。 「鏡夜、凄いことを考え付いたぞ!!部を立ち上げよう。高等部に入ったらすぐに活動開始だ。我々の美貌を活かしたその名もホスト部!!」 コタツに入っている環。 「寝言は寝て言え」 お茶を持ってきた鏡夜ですが、環を蹴るというか踏みつけます。 嬉しそうに笑う環。 「他のメンバーも考えてある。高等部の埴之塚先輩に銛之塚先輩、あ、それと2年の双子な」 コタツで向かい合って座っている環と鏡夜。 『聞けば聞くほどくだらない計画だった。けれど、こいつの世界を共有したら、これまでとは違う風景が俺にも見えてくる気がした』 茶柱が立っていた鏡夜。 第24話完 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|