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「ブデンブローク家の人々 ある家族の没落」 トーマスマン全集(1)新潮社
新潮社 1972年刊 訳 森川俊夫 先日読んだ、筒井康隆「漂流 本から本へ」での紹介文がとっても魅力的だったので、 「ブデンブローク家の人々」・・ついに読みました 1768年7月7日に創立された『ヨーハン・ブデンブローク商会』・・ その主人は、代々オランダ王国の領事となる。 物語は、1835年10月、ブデンブローク家の一族と近親者が一堂に会して行われた 盛大で優雅な新居披露宴からスタートします。 ブデンブローク家、四代にわたる物語ですが、 副題に「ある家族の没落」とあるとおり、結末を容易に想像しながら読み進みます。 意外だったのは、没落の理由は、「売り家と唐様で書く三代目」ではなかったこと。 出来の悪い兄弟が次々に借金をこしらえる一方、当主は、本業とともに名誉職も 懸命にこなそうと努力します。 ヨーハン・ブデンブローク領事の呟き・・ ≪誠実に働けば正しく報いられるものだ。商売はこともなく続いている・・ いや、ことがなさ過ぎるのだ、それもわたしの仕事ぶりが慎重すぎるからに過ぎない。 おとうさんが亡くなられてから、発展していない。本質的にはね。 今は確かに商人にとってはよくない時代だ・・ 要するに、仕事をしていても大して面白くない。≫ でも、家の存続に止めを刺したのは、連続した不幸とそれに伴う遺産相続でした。 切り刻まれた遺産分割の結果、100年続いた栄光の家は、跡かたもなく消え去ってしまいました。 女中頭の矜持・・イーダ・ユングマン ≪貴族主義的な原則を尊重する人間だったから、一流の階級と二流の階級、 中産階級とやや低い中産階級とを峻別し、忠実な召使として一流の階級に 仕えていることを誇りと思≫っていた。 ヨーハン・ブデンブローク領事の長女・・アントーニエ・ブデンブローク ≪わたしの受けた教育がいいのを責めないでいただきたいわ! 実家では指一本動かす必要もなかったんだわ。・・ 父はお金持ちです。わたしがいつか雇人に不自由するなんて、 思いもよらなかったんでしょうね。≫ トーマス・ブデンブローク ≪頭のてっぺんから爪先まで、心構えというものを生み出すあの几帳面さ、 完璧さを意識していたという、行動人の努力にほかならなかったのである。≫
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最終更新日
2011.02.13 22:45:55
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