|
テーマ:好きなクラシック(2280)
カテゴリ:お気に入りのクラシック音楽
この曲は、冒頭から印象的。長いドの音のユニゾンで思い切り引っ張って「バン!」という和音。そして沈黙...。これを3回繰り返し何とかよるべきところに落ち着いて、後は「運命」を彷彿とさせる音型の連続で盛り上がっていく...。
これは、ハインリヒ・フォン・コリンによる同名の劇に基づいて作曲されたものである。主人公はローマの貴族コリオラヌス。コリオラヌスはローマ市民から不当に追放され、それに怒った彼はローマ人の敵と手を結び、逆にローマを攻めていく。ところが城内には母と妻子がいた。「それだけはやめて...」というところだろうか。彼は結局軍隊を帰すものの刑を受けて破滅に追い込まれるという悲劇である。 ------------------------- 冒頭はインパクトたっぷり(「ゾォ~~~、バンッ!...(←沈黙)」というパターン)。コリオラヌスが怒りを何かにぶつけているかのようだ。演奏するときにテンションが上がりすぎて和音を割ってしまって指揮者に叱られるというパターンがけっこうありがちだったりする。ユニゾンは弦楽器だけなのだが、ここでコントラバスの音が厚いととてもカッコイイ。和音の後の沈黙が深い。「休符も音楽のうち」とはまさにこのことである。 第1主題は音型こそ違えど、「運命」の第1楽章に似ている雰囲気がある(ハ短調というところも同じ)。主題の落ち着かない感じはコリオラヌスが怒りに震えているところといったところか。この要素を使って盛り上がっていくが、しばらくして弦楽器の刻みも旋律を弾き始めるところはベートーヴェンらしい。 その後今度は穏やかな第2主題(こちらは変ホ長調)。母や妻を表すのだろうか。しかし、これもいろいろな調へと移りながら、結局は短調へと行ってしまう。ト短調で全体がffになるところも「運命」と共通項。これが静まると次の部分へ。 そこでは静かながらも厳しい動きが入っている。ヴィオラとチェロが分散和音でリズムを刻み続ける上を断片的な音型がヴァイオリンで続けられていく。同じ音型でどんどんとテンションを上げて頂点に達したところで冒頭の音型がヘ短調で登場。しかし、今度はまったく同じ形ではなく、さらにせっぱ詰まった感じの音型になる。それが静まると第2主題がハ長調で再現される。 その後も一度出てきた音型が調を変えたり、ダイナミクスを変えたりしながら続いていく。そして、沈黙が再びあった後、第2主題がハ長調でもう一度繰り返されて、以前の半分の時間でテンションを上げきったところに冒頭の旋律。それが断片的になり、次第に弱くなっていくところは「結局ダメだった」という雰囲気。最後は第1主題がどんどん拡大されていき、ほとんど形がわからなくなっていって、最後は消えるように終わってしまう。このあたりは「英雄」の第2楽章の終わりと同じパターンであるように思う。 ------------------------- このように聴いていくと、この曲が「英雄」と「運命」(ほどは洗練されていないので)の間に書かれたことがわかるように思う。この曲は、弦楽器にとってみれば、楽器を弾くためのテクニックとしては、それほど難しいものではない方に属すると思う。しかし、「顔」は重要である。気を抜くと昔あったキリンレモンのCMの歌のようになってしまうのだ(これをその当時、大学オケの後輩に言ったらかなりウケていた)。あくまで悲壮な決意、怒りに震える気持ち、そして歯を食いしばっているような顔、それができないとこの曲は脳天気になってしまうのだ。そう思うと、演奏って不思議だなと思ってしまう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 14, 2007 10:47:32 PM
コメント(0) | コメントを書く
[お気に入りのクラシック音楽] カテゴリの最新記事
|
|