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テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:お気に入りのクラシック音楽
この曲は、心穏やかでいたい時に必ず聴いているような気がする。弦楽器の澄んだ響きが心を洗い、また時には癒してくれる。昨日も研究室の窓から外を見ながら聴いた。このところちょっと嫌なことがあって気分が沈み気味だったのだが、雲の切れ間から幾筋かの光が差している風景をバックに聴くと本当に気持ちが穏やかになった。シベリウスはこの曲を機会あるごとに好んで演奏したそうだが、その気持ちはわかるような気がする。
------------------------- この曲が作曲されたのは1922年、交響曲第6番、第7番を作曲していた時期に当たる(確かに、そこに通じる世界があると思う)。サイナトゥサロ製作所(工場)の記念祝賀会で演奏される曲として注文されたもので、もとは弦楽四重奏として作られた。現在CDなどで収録されているのは、1930年に改訂された弦楽合奏版であり、ティンパニを最後に加えてよいとスコアにも書いてある。 「フェスティーヴォ」とは「祝賀の」という意味で、曲そのものに込められたものを示すというよりは、曲の成り立ちに関係するものだと言えそうだ。祝賀といってもかなり喜びをかみしめてしみじみと歌う感じと言えそうだ。 曲の構造はとても単純で一つの主題も基づくフレーズを何度か繰り返すというものだ。最初はト長調で開始するが、この主題の最後がホ短調に行ってしまうところがちょっと特徴的である。2つめのフレーズはホ短調的な部分がもう少し多くなる。3つめのフレーズは低弦がシンコペーションになり、跳躍する音型が出てきて、華やかなト長調になる。 そこを抜けると音がそれまでの戻るべき高さを突き抜けて、イ長調で主題が演奏される。この部分はたったの2小節しかないのだが、一瞬の輝きのようで聴くとゾクゾクする。直後にはト長調に戻り、これまでのフレーズが短縮され組み合わされて、再現される。ホ短調で終わる和音でどんどんテンションを上げていき、ト長調になったところで最も強い音、さらにティンパニが登場して終わる。 ------------------------- この曲は何度か演奏したことがあるが、最も思い出深いのは、この日記を始めた日に神戸の東遊園地で夜明け前に演奏したときだ。阪神・淡路大震災から10年目を迎えたその日、出勤前に楽器を担いで始発電車に乗って行った。雨が降る中、本当に演奏できるのかと思っていたが、演奏の時にほんの少しだけ小康状態になったので、演奏した。曲の最後の方では雨がまた降り出した。「フェスティーヴォ」という名前がその場にふさわしいのかどうかといえば、何とも言えないところだが、清らかな響きと前向きなラストはやはり曲としてはふさわしかったように思う。 これからもずっと自分のそばに置いておきたい曲だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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