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テーマ:好きなクラシック(2279)
カテゴリ:お気に入りのクラシック音楽
------------------------- 冒頭、フルートをはじめ木管楽器のホ長調の和音からスタート。絵本の表紙を開くかのようだ。「昔々、あるところに...」という感じだろうか。しかし、弦楽器がすぐにホ短調の和音を出して、妖精が飛び回るかのような感じのヴァイオリンによる無窮動の音型が登場する。ここは演奏することがきわめて難しい。とにかく合わなければ和音の動きがわからなくなってしまう。プロオケの演奏でも危なっかしい時があったりする。 しばらくすると、突然ホ長調でヴァイオリンが明るく活発な第1主題を歌い、それに管楽器がなだらかな下降音型で答える。この下で馬が走っていくようなリズムが前進感を保つ重要な役割を担っている。しばらくこれらの素材を元に音楽が展開されていく。この部分からよく聴いていると目立つのが、低音の金管楽器のふくよかな響きだ。現在はチューバで代用されるが、当時はオフィクレドという楽器(キーがあるらしい)があり、それが使われていた(現物は見たことないな...)。 ひとしきりフォルテの場面が終わるとフルートとヴァイオリンの掛け合いがあり、その中からクラリネットが温かい旋律が出て、それをきっかけにしてしっとりとした第2主題がロ長調で登場する。跳ねるような合いの手を伴いながら盛り上がっていくと行進曲風になり、そこで楽しげな旋律が登場する。この旋律をCMで初めて耳にしたとき(確か、証券会社だっただろうか)、一瞬だったのだが映像と共に耳に残った。「一体何の曲なのだろう」と思った後わからずじまいだったが、この曲を初めて弾くことになったときに「ああ、これだったのか!」と思ったことをよく覚えている。 その後、曲は展開部となる。ここでは弦楽器が無窮動の音型、木管楽器がそれまでの素材を自由に展開したり、和音を出したりといった感じで進んでいく。途中、短調の雰囲気がどんどん鮮明になっていき、曲はゆっくりとなる。嬰ハ短調、第1主題から派生した旋律、これが絶えるように終わると、また冒頭の和音が登場し、再現部となる。といっても、第1主題ではなく、いきなり第2主題へと行き、ホ長調で演奏される。ここで第2主題のきっかけになる木管楽器の音が光を投げかけるようで素晴らしいと思う。 楽しげな旋律も2度目はホ長調で登場、そこを抜けたところで管楽器の下降音型が登場する。この部分で一瞬短調の要素が出てくるのだが、それがだんだん長調に向かっていく音の進行にいつも心を動かされる。また、そこではオフィクレドの音型がとても印象的である。そして、その部分を抜けると最後のダメ押しで第1主題が顔を出し、終了するかのような音型になる。 ところが、そこで話は終わらずにまたまた無窮動の世界へ。しかし、今度は長く続かず、木管楽器が息の長い和音をホ短調で示す。そこから光が差すように和音がホ長調に変わり、ヴァイオリンが「今日のお話しはこれで終わり」というような旋律を奏でる。何度も「シ~ミ~」と言っているのが「さようなら」と言っているような感じだ。そして、最後は冒頭と同じ木管楽器の和音で終わる。最後のページをめくって本を閉じるかのようだ。 ------------------------- 全体的におとぎ話の世界そのものという感じ。後に作曲された劇音楽もやはりそういう感じがするのだが、無垢な美しさはこの曲が一番だと思う。メンデルスゾーンがこのような曲を書けたのは裕福なお坊ちゃんだからだという話もあったりするが、このような音楽家の人生があれば、こういう曲ができるのかな。ともあれ、やはりすばらしい才能があるのだなと実感する作品である。最近、なぜだかよく聴いていて、ときどき無性に聴きたくなる曲だ。 この曲を演奏したことは一度だけある。学生時代に近所の大学のエキストラに行った時に弾かせてもらった。とにかく難しかったという記憶が先に出てくる。弓がとにかく一定に飛ばなかったのが悩みの種だったが、実はこれがちゃんとできたらプロじゃないかということを後で知った。この演奏会の指揮者は後に現在所属している市民オケで再び何度もご一緒することになるのだが、この曲で印象深かったのは、馬が走るようなリズムが始まるとこの指揮者が棒を回し始めることだった。オケがノったらもう後は自動という感じ、いま考えれば、それってオケが最高の状態ということだろう。こういう瞬間をまた味わってみたい。この曲ももう一度リベンジしてみたいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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