|
テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:お気に入りのクラシック音楽
この曲はシベリウス20代の作品で、「クレルヴォ交響曲」や「伝説(エン・サガ)」などで成功を収めた後の作品である。カレリアとはもともとフィンランドにあった地方の名前で、フィンランドの歴史と伝承文化の宝庫と言われていたが、後にソ連による侵略によって奪われることになった。
このカレリア地方はシベリウスが新婚旅行で行った場所でもあるが、シベリウスの元にカレリア地方出身のヘルシンキ大学の学生たちが行おうとしていた歴史劇の挿入音楽をという依頼が来ることになり、シベリウスにとってカレリアはますます縁の深い土地となった。 ------------------------- 第1曲:間奏曲 古いスタイルの行進曲。冒頭、弦のキザミの上に、ホルンによって行進曲主題の断片が演奏される。変ホ長調の明るい音楽は日の出のようだ。それがだんだんと盛り上がっていき、やがてトランペットで主題がすべて提示される。この手法は、交響曲第2番の第4楽章にも使われているが、すでにこの時点でシベリウスはものにしていたということなのだろうか、それとも何となくそうしたのだろうか、というのが謎だなと思う。 その後も少し和音が変わったりするものの、旋律はほぼすべて同じ形で最後まで繰り返される。最後はホルンによって穏やかに終わる。古い物語につけられた音楽という感じが不思議とする。弦楽器はほとんどの小節でひたすらキザミ。弾いている方は退屈な感じがするかもしれないが、聴いている方としては「ウキャウキャ」という跳ねた感じがとても効果的だなと思う。 ------------------------- 第2曲:バラード 吟遊詩人が王様を前に歌を歌う場面の音楽。イ短調で、やはりこれも古いお城の中で聴いている感じがする。冒頭の旋律はクラリネット、静かに目をつぶって聴く歌という感じ。ちょっと子守歌的な感じも受ける。しばらくして第2の旋律が登場する。ときどきハ長調の雰囲気を見せるがそのまま明るくなることはない。この旋律の音型はサン=サーンスの「オルガン付」の第4楽章に出てくる旋律によく似ているが、雰囲気は対照的だ。そして、第2の旋律での盛り上がりが静まった後、第3の旋律がイングリッシュ・ホルンで素朴に歌われ、最後は第1の旋律の断片を示して終了。 ------------------------- 第3曲:行進曲風に 行進曲「風(かぜ)に」って何ですか?という面白い人がいたと、あるプロから聞いたが、どこで言葉を切るか、間違えるとまったくイメージが変わるいい例。日本語って難しい?!と、それはともかくこの曲は第1楽章よりもさらに軽やか。イ長調の垢抜けた雰囲気は、ほとんど行進曲というイメージから離れているような気がする。人間がと言うよりは小動物が行進しているという感じがする。 冒頭から第1主題が登場。楽譜を見ているととても単純な形の旋律なのだが、そこからあれだけの雰囲気が音で出てくるというのは、やはり作曲家ってすごいなと思う。豪華なオーケストレーションにも惹かれるが、こういうシンプルな音型が説得力を持つこともまた音楽の魅力だなと思う。 途中で曲はヘ長調に転じ、第2主題がトランペットで登場。太陽を光の来る方向を向いて見上げたようなキラキラした感じ。トライアングルの響きがとても印象的でもある。その後、第1主題が戻ってきた時にはピッコロが登場し、さらに軽やかになり、それが盛り上がると第2主題もイ長調で登場。最後は堂々と第1主題の断片を使って曲が閉じられる。 ------------------------- この曲は、娘がまだ2歳ぐらいの頃だったか、泣いている時に泣きやませるために使った思い出がある。この曲をかけながら、ぬいぐるみを何個か持ってきて行進させるマネをしてみたら、喜んで笑いだし、泣きやんだ。こちらの考えは当たり、それ以来私の中では「ぬいぐるみの行進曲」として刷り込まれているような気がする。この曲を演奏するときには難しい顔をして弾くことはできない。やっぱり弾きながら自然と表情が和んでくる感じがする。全曲で10分ちょっとの短い曲だが、とても大好き、思い入れのある曲である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[お気に入りのクラシック音楽] カテゴリの最新記事
|
|