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2009.12.25
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カテゴリ:歴史と文化
 パナマ運河は大西洋と太平洋を結ぶ唯一の手段になっている。ここが閉鎖されたり、破壊されることは、世界経済に強い影響を与える。アメリカ東海岸から西海岸に向かう船舶や艦艇は、アルゼンチン沖を回らねばならなくなる。パナマ運河を守るために、アメリカは心血を注いできた。パナマ運河はパナマに存在するけれど、それを支配してきたのはアメリカ軍だった。アメリカ海軍の艦艇は、パナマ運河を通行できるサイズに設計されている。
 パナマ運河が完成したのは、1914年になる。最初、この地域に運河を建設しようとしたのはフランスだったが、資金が底をついて、アメリカに引き継がれた。当時、パナマ地方はコロンビア領だった。そこで、アメリカ政府はパナマを独立させる画策を行い、コロンビアから切り離すことに成功する。独立したパナマ政府と条約を結び、運河地域の租借権を手に入れた。建設された運河はアメリカ領であって、パナマ政府は口が出せなかった。この状態は運河が返還される1999年まで続いいてきた。
 パナマの大統領が非民主的な独裁者であろうとも、親米的な政権であれば、米国政府は支援を続けてきた。隣国のコロンビアは、左翼ゲリラと軍事政府の内戦が続いていて、かつ世界最大の麻薬生産国である。コロンビアで生産されるコカインの大部分は、パナマを通過する。パナマ経済は運河の収入と麻薬の輸出入で潤っていた。その利益を独占していたのがノリエガ将軍だった。ノリエガはCIAと結びつくことで頭角を現し、パナマの権力を握った。大統領選に落選したノリエガは選挙を無効にして、権力の温存を狙った。パナマの政治的な危機を察知した米軍がパナマに攻め込み、ノリエガを逮捕する。パナマの危機は米国経済の危機につながる。
 民主主義と麻薬撲滅を掲げるアメリカ政府は、独裁者と麻薬ルートの切断に成功したはずだった。ノリエガ将軍を逮捕してパナマから排除すれば、民主的なパナマが誕生すると期待したのである。しかし、統制を失った麻薬密売ルートは、むしろ規模を拡大している。通過するだけで数千億円の収入をもたらすコカイン取引が減少することはなかった。ノリエガが消えて国家統制がなくなり、麻薬取引量は自由度を増した。ここに、中南米の現実が見えている。
 パナマには、山脈が中央にそびえている。運河を建設するには、山脈を切り開くか、トンネルと通すか、運河を峠越えさせるかの選択しかない。当時の技術では、ひな壇式の運河を作って、一段ずつ船舶を上昇させて峠を越えさせるしかなかった。熱帯雨林を切り開いて運河を建設するには、様々な難関が立ちふさがった。パナマ運河は野心的な産物であり、不可能に挑戦する時代の思想を反映していた。現在だったならば、環境問題や政治的な思惑から、とうてい運河の建設は不可能だろう。それゆえに、米国政府はあらゆる策略と手段を使ってパナマ運河を維持してきた。パナマがこのまま独立を維持できるのか、それともコロンビア内戦に巻き込まれていくかは、予断が許せない。





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Last updated  2009.12.25 20:43:40
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