『厨二病ポーカー』を知るものは幸せである
みなさん。『厨二病ポーカー』をやりましょう。『厨二病ポーカー』とはなにか。カードゲームです。とてもおもしろい。【基本ルール】人数:2~15人くらいまで。漢字が一文字ずつ書かれたカードがあります。漢字を組み合わせて「厨二病」っぽい言葉を作ります。技の名前、タイトルっぽいの、病気の名前、巨大な組織の名前、なんでもいいです。「っぽさ」が大事です。勝ち負けは参加者の合議制で決まります。【ゲームの流れ】●ポーカーと同じルールで各人が5枚ずつ持ちます。●いらないカードを場に捨てて、山から同じ枚数とります。●厨二ワードができたらコールします。そこから一周して、最後は順番にカード開示になります。●このラスト一周の間は、山から手札を引くだけでなく、場の捨て札でいちばん新しいカードを交換することもできます(麻雀で言う「ポン」のようなもの)。制限なしで、交換が終わるまで続けます。●コールした人から順番に五文字の厨二ワードをプレゼンし、最もおもしろかったもの、上手だったものを合議で決めて、終了です。ちょっと流れを見てみましょう。手札を捨て、山から取るというポーカールールで進みます。最初の「完成しましたコール」がかかったら、ラスト一周は最新の捨て札を取ることができます。この場合は「恋」とか「最」とか。交換したい人がなくなるまで続き、交換がおさまったら次の順番の人が通常通り手札を捨てます。ラスト一周が終わったら、最初のコールの人からプレゼンです。手札をさらすときに、どのように前置きするか、どう見せるかが大事です。実はウケることが目的なんです。たとえば、まずはこう出るとします。ライトノベルの学園伝奇ものでライバルが拳を光らせて放ちそうな技名です。強引な英語読みなんかもアリです。次の人が悔しそうにこう出します。惜しい、惜しいです。あと一枚足りなかった。つまり、ラスト一周の「ポン」は手札をなんとか揃えるための救済策であり戦いの場なのです。そして最後の人が「中2の発想ではあるんだけど……」と前置きし、こうです。厨二病じゃねえじゃん!だって手札が揃わなかったんだもん!でもおもしろかったら勝ちです。ルールで負けてもおもしろければ勝ちです。ならば、ということでエクストラルールで遊んでみようとなるのは必然です。「ロマンポルノの題名縛り」「外食チェーンのキャッチコピー縛り」など、いろんな追加ルールを思いついては時間を忘れて遊ぶことになります。ゲームの骨格がしっかりしてるのでどう遊んでもおもしろくなります。そして、この骨格を作ったのは僕ではありません。【このゲームの発祥】『厨二病ポーカー』は『バイオレンス・ノベル・ポーカー(以下VNP)』が元になっています。『VNP』は、1985年か1986年に仙台SFクラブの成澤雅紀さんが考案し、同クラブでルールが整備されました。80年代半ばにバイオレンス・ノベルと呼ばれた小説ジャンルがありました。『VNP』はそれっぽいかっこいいタイトルを作るゲームです。完成度が高いゲーム性によってこれまでに何回か復刻されるほどの伝説的なゲームです。大阪大学・菊池誠先生の解説http://www.asahi-net.or.jp/~dm6k-kkc/DCFinal/VNovelPoker.html当時、松島SF大会で遊んだ様子をSF作家の山本弘さんが雑誌に書いていました。その記事を読んだ某高校のシミュレーション同好会(TRPGを遊ぶための同好会)有志が真似ました。白紙の名刺カードと筆ペンで作れるので複数のセットができあがりました。バイオレンスノベルのタイトルを目指してるのに「回転大熊猫」とか「怪力女子校」とか、どうしてもおもしろ方面に流れてしまいます。というより、ルールの逸脱がおもしろくなってしまうんですね。高校を卒業して20数年経ちました。ライターの田下広夢 @TaoriHiromu さんが主催する「代々木ゲームルーム」に参加したことがきっかけで高校のころハマってた『VNP』を思い出したものの、しかし僕がやっていたのはもうバイオレンスノベルポーカーではない。とりあえずインクジェット名刺カードに漢字を書いて持ってったら大好評。『厨二病ポーカー』という名をいただくことになりました。いや、たぶんね、1986年あたりに同じことしてた奴らって日本のどっかにまだまだいると思うんだよね。同じ基本ルールからいろんな変化をした、変なセットがいっぱいあると思うんだよね。そういうの遊んでみたいじゃないですか。ゲームの平行進化っていうか意図せぬ変異っていうかさ。過去に遊んでた人らがもっと出てくるといいなと思ってるんよ。冬眠明けの虫みたいにゾロゾロとさ。眠そうにさ。