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せんだって日記

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2006.02.09
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 世田谷区の主催、教育委員会の共催で行われた、「ゲーム脳」の森昭雄博士の講演「テレビゲームと子どもの脳」に行ってきました。
 現場に足を運ぶことは、やはり大事だわ。
 小説家の川端裕人さんのブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」(http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/)で、状況の変化を嗅ぎ取り、「こりゃ現場だ」と思って世田谷線に乗って行ってきたわけです。

 森博士の唱える「ゲーム脳」に対する賛否両論などもいろいろ見聞きし、「ゲーム脳」理論は科学未満の仮説(でさえ無いなにものか)であることは、知っている。
 遅れて会場に入れば、なんでも400人ほどの入りだとか。
 子連れのお母さんなども多く、「子どもの脳」に対する関心の高さがうかがえる。

 さて、初めて森博士の講演を聞いて、質疑応答なども聞いて、はっきりしたことがある。
 森昭雄氏は、科学者ではない、あるいは科学者の風上にも置けない。
 って。このように、個人攻撃に走ると気持ちいいのだけれども、あの会場の雰囲気を味わうと、今キモチイイだけではいけないと強く思うのだ。

 子を思う親の素朴な気持ちが、あの会場にはあった。
 「うちの子がゲームにハマっちゃって、どうしようもなくて…」的なお母さんもいた。
 あらかじめ不安を抱え、なにかすがりたくなるような考えを求めて来ている客。
 欲しい答えが、やる前から決まっているっぽいのだな。

 そこになにが注がれたのか。

 薄暗い会場にプロジェクターで大写しにされた、脳に電流が走っているようなサイケデリックな動画や、頭に電極をつけられた少女の写真。ともに語られるオソロシイ「ゲーム脳の恐怖」。
 いやさ、その映像群は三次元マッピング可能な高級脳波計の紹介写真や、読書中のシナプス発火をスキャンしたものだが、森氏が話す内容は、脳神経に関する高度に専門的なもので、実際あそこにいたお母さんたちの何人が理解できたであろうか。
 前半に、脳神経に関する専門家でしかわからないような用語でもって立て板に水のパワーポイントプレゼンの嵐。
 頭がぼーっとした後半は、薄暗い会場でのサイケデリックな映像で恐怖を煽りつつ、科学的なニオイがする(実際は検証されていない仮説以下の)ムツカシイ事と、わかりやすい「ゲーム脳の恐怖」の繰り返し。

 これは、自己啓発セミナーに似ている。洗脳合宿に似ている。

 お母さん達相手に前頭前野とか視覚野とかいう専門用語での論文発表を一時間以上して、後半はゲームをすると「無口、無気力、集中力ナシ、キレやすい」子どもになると、畳み掛ける。
 後半の畳み掛けには驚いた。
 ゲーム脳の症状とされる脅し文句と、脳に関するデータが交互に出されるのだが、そのデータに短絡や欠損があっても、森氏の話はドンドン進み、誰もそのことにリマークを入れられない。
 「ゲームをすると認知症と同じになる」ということを、違う表現で、その印象だけは植えつけていた。あれは詭弁のテクニックだ。
 「ゲーム脳」は素朴な“脳波計”でとったデータからの直感で閃いた仮説にしか過ぎないはずだ。
 欠席裁判だ。自己啓発セミナーと洗脳合宿と、欠席裁判だ。うへえ泣けてくる。

 しかし、聴衆は、万雷の拍手で森氏を称えたのである。



 この「ゲーム脳」に代表されるような子どもの成長への不安感って、煮詰めると、「あんたの子育ては失敗」ってことを言わなければいけなくなる瞬間がくる。
 とくに、赤ん坊の将来を思って来場した若いお母さんではなく、いままさに子どもがゲームに噛りついて叱ると「キレる」子どもを持ったお母さんの焦燥感は、胸狂おしいほどにわかる。

 そのね、我が子を思って不安に駆られている親御さんのすがるような気持ちはね、確かに「ゲーム脳」という言葉で、今その瞬間は癒されるかもしれない。
 でもね、「ゲーム脳」というのは、現状、限りなくウソに近いってことを説明されないのはね、むしろとても残酷極まりないことだと思うのだ。
 その点、世田谷区は、しっかりとしてた。反論の多い理論だって説明してた。これは川端さんの行動のお蔭だ。
 でも、その世田谷区の説明も、聴衆の耳に届いていたかというと、ちょっと疑問で。
 薄暗い会場でシートに2時間座らされて、サイケデリックな映像と共に刷り込まれた「恐怖」は、ちょっと抜けにくいのではないかと思うのだ。(その点で、森氏のプレゼンスキル、洗脳技術は、さすが脳を研究した人間のワザだと思ったね!)。
 まして、あの会場に集まったということは、デジタルディバイドって状況を体現する人たちではないかと、ちょっと思うのだ。
 反証を手に入れにくい人。週刊文春の草薙レポートを丸呑みの人。

 質疑応答の時間、川端さんが挙手し、「家に帰ったらゲーム脳を検索して欲しい。唯一無二の完璧な理論ではない」といったようなことを聴衆にアピールした。
 かっこよかった。
 大事なのは、そこだ。
 安全だと思って逃げ込んだ小屋の裏は燃えているかも知れない。それは自分で確かめるしかない。
 万全だと思って跨がった自転車は、ブレーキが故障してるかもしれない。走り出す前に、自分で確認しないといけない。
 当り前のことをしようじゃないか。
 子どものために。大事な人のために。責任を、取り戻そうじゃないか。


 さて、森氏が「科学者ではない、あるいは科学者の風上にも置けない」と思った根拠は、次回のエントリで。





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最終更新日  2006.03.06 23:07:39
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