カテゴリ:表現規制とかそんなの
せんだって、ちょっと調べ物があって『論座』2007.3月号を図書館で読んだんス。
性教育のススメという特集があって、その中に、映画評論家・町山智浩が記事を書いている。 性教育の名のもとに推進される“文化の転換” ~アメリカ絶対禁欲教育は 未成年の妊娠・出産率を押し下げてはいない~ というもの。 とりあえず小見出しだけ抜き書いてみようかな。 1)保守革命と絶対禁欲教育 2)ブッシュ政権によるガイドラインと助成金 3)「避妊は役に立たない」と教えられた末に 4)“純潔”を守るためオーラルセックスに走る若者 5)妊娠率低下は禁欲教育の成果ではない 6)性教育の名のもとに繰り広げられる文化戦争 7)性教育改革のためのReal法案とは まあ、こういった感じなんだけど。 この記事は非常にコンパクトに書かれている良いレポートなので、見出しだけで概要はおおよそ掴めるのではないだろうか。 コンパクトゆえに要約が難しいのだけれども、この記事のすごさをお伝えしたい僕なのだ。 ●90年代当時のアメリカは、未成年の出産率がピークに達しており、10代の母親は学校からドロップアウトする確率が高く、それが定収入→貧困→ホームレスの連鎖、10代シングルマザーの子供の非行化など、なんだかすげえ負の連鎖につながると言われてた。未成年の妊娠問題は、けっこう重要視されていた。 ●ブッシュ共和党になってから、共和党の支持基盤である福音派≒保守的なキリスト教徒の望み通り「絶対禁欲教育」を公教育の中に取り込んだ。 ●「絶対禁欲教育」にはガイドラインがあって、その通りの性教育を実施している学校へ助成金が出る。 ●このガイドラインには「避妊法を教えてはならない」という条件がある。 ●それまで主流であった、コンドームの使用法を教える「セーフセックス」系の性教育には、助成金は出なくなった。 ●んで、始まった「絶対禁欲教育」は、多くの場合は教員ではなく、牧師やキリスト教運動家によってなされる。 ●「絶対禁欲教育」は、性交渉の自制だけではおさまらず、未成年に性交渉をさせないことを目的とする。 ●絶対禁欲教育をする牧師やキリスト教運動家は、科学的合理性ではなく、キリスト教的な価値観から性教育をする。 ●たとえば「コンドームによる避妊も失敗する」「中絶は殺人だ」など。 ●宗教家による性教育は「セックスは恐ろしいもの」という意識を植えつけることが目的となってくる。 ●教材には「HIVは汗や涙で感染する」「性器に触れるだけで妊娠する」など、明らかに間違った記載があったものもあるという。 ●さらに、学生に「純潔の誓い」をたてさせる。結婚するまで純潔を守るという神との約束だ。 ●純潔の誓いをたてた者は、オーラルセックスやアナルセックスをする頻度が高いという調査結果が出る。 ●純潔を守るために、だ。 ●ケツやクチなら生殖行為のセックスじゃないから。 ●これらは通常のセックスよりもHIVに感染するリスクが高い。 ●しかも、絶対禁欲教育によって、コンドームは役に立たないと教えられている。 ●だから若者が“誓い”を破った場合も、コンドームを使用していないことが多い。 ●「中絶は殺人」と教えられているから堕胎もできない。 ●事実、10代の妊娠率は減ってきているという。 ●絶対禁欲教育を奨める人たちはそう主張する。 ●ある調査によると、15~19歳の少女に「妊娠しなかったのは避妊のおかげか、禁欲のおかげか」という質問をしたところ、ほとんどが「避妊」と答えた。「禁欲」は14%だってさ。 ●学校で政府助成金を使った「絶対禁欲」をしていた間、若者向けメディアでセーフセックスの広告が流されていたんです。MTVとかで。 ●「純潔」ではオーラルセックスやアナルセックスをし、避妊もせずにデキてしまうが、「セーフセックス」の方は確実に若年妊娠の不幸をせき止めているようだ。 ●「妊娠や性病に関心があるように見せかけて、それを政治的な道具として利用しているグループがある」 ●これは私見だが、「美しい国、勝共、日本会議、統一協会」という言葉が思い浮かぶ。 ●「かつてのような正しい社会に戻すんだ」と、純潔運動の主宰はテレビのインタビューで言った。 ●結局、若年出産の問題は、キリスト教保守派の布教の道具になっただけで、「少年少女の安全」は度外視だったようだ。 ●Real法案とは、「禁欲を最善としつつも、コンドームの使い方を教え、科学的に正確で、特定の宗教に偏らない教育をしようぜ」ってもの。 ●純潔教育は、安全を目的とする性教育ではなく、ただの宗教活動。 ●絶対純潔は今も昔も子を持つ親の理想だろうが、実現出来そうにない上に、キリスト教保守派に任せてたら、少女のケツもクチもズタズタになっちまう。 ●10代の妊娠に関する調査を通して見えることは、人種を問わず、妊娠率は家庭の所得に反比例するんだそうだ。 ●つまり、少女が無防備なセックスをしてしまうのは「文化の退廃」ではなく貧困に原因がある。 まいったね。 信仰は個人に幸せを見せるが、彼に幸せをもたらすとは限らず、さらにむしろ、社会に害悪を撒き散らすという例が、また出たね。 ところで、有害図書撲滅という、統一協会の機関紙の情報を引いては保守的な主張を繰り返しているブログで、こんどは『「できちゃった婚」は悪い!の理由!』として純潔教育をすすめている。 若年妊娠の問題に興味があるように装って、布教あるいは政治の道具にしようとしているのかもしれない。 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。 アメリカの現代史に学んで、あのボンクラ国家と同じ轍を踏まないようにしたい。 アメリカの絶対禁欲教育のまちがいはみっつ。 ・授業内容に科学的誤りや歪曲がある。 ・妊娠の減少に実際は影響を与えていない。 ・その目的が、妊娠や性病の予防ではなく、政治的、宗教的である。 どうだい? ひどいだろう。 だから、統一協会と深いつながりをちらつかせるブログ主の語る「純潔教育」ほど、うさんくさいことはない。 半島生まれのキリスト教のミュータントにロビイングされてたまるか。 妊娠や性病を憂うなら、まずは豊かになるべきだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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