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「ダースクライト。フォースに選ばれし者」遠い昔、遥か彼方の銀河系において、銀河共和国という巨大な共同国家体が存在した。しかし、時が経つにつれ政治の腐敗が生じ、統治秩序は崩壊、共和国も存亡の危機を迎えた。こうした状況の中、古より銀河共和国を陰で支えてきたジェダイと呼ばれる騎士団が、共和国の秩序を回復させるために奮闘する。だが、彼らの前に、数千年も前に滅びたといわれる恐怖の信奉者シスが現れる。彼らの理想は恐怖で人々を支配する国家の樹立とジェダイの排除。そんな中、ある辺境の惑星で一人の少年がジェダイとして導かれ、銀河共和国・ジェダイ・シスの運命に関わっていく事となる。この少年と後のその子供達、ジェダイとシスの攻防、そして、銀河共和国から銀河帝国へ、そして、再び銀河共和国へと復活を遂げる変遷を描いた壮大な物語である。「…か。やっぱり、いいねぇ~スターウォーズ♪」 俺の名は…いや、ここでは、あえて「マスタークライト」と名乗っておこう。 年齢は伏せておく。その歳で~なんて、SW(スターウォーズ)を馬鹿にされたくはないからな。 趣味はスノボ。 性格はっていうと…そうだな。プラス思考だが、現実派か。 好きな言葉は、「試すはない、やるか、やらないかだ」…現実的でいい言葉だろ? と、まぁ、こんなSWオタクみたいな俺だが、これでも教育者の端くれ。神奈川県の某所で、講師をやってる。 今は、こうして、自宅のPCからウィキペディアでSWについて調べ物をしてたトコだ。 「こういう日々の努力が俺を成長させるワケだ」 人間性としての成長ではない。 勿論、SWファンとしての俺を、だ。 笑うなよ。 別にいいだろ?誰に迷惑をかけるでもない。 所謂、趣味の世界ってやつさ。 誰にも、それを否定されるいわれは無いね。 …とはいえ、現実世界ってのは冷たいもんだ。 悲しい事だが、社会じゃ俺の趣味を認めてくれる人間は少ない。 それどころか卑下するような目で見るヤツまでいやがる。 アイドルオタクやアニメオタクと同じだ。現実を見ろ。なんてな。 だが、考えてみて欲しいね。 車を弄るのが好きで知識を収集するようなヤツを、そいつ等はオタクとよんで卑下するのか? いや、そうはしない。 しかし、SWやアニメが好きで、その情報や知識を収集する俺達みたいな人間は、オタクだキモイだ等と抜かして卑下しやがる。 この両者の何が違う? そもそも、人の趣味趣向を勝手な物差しで計るんじゃねぇってんだ。 …何故、認められないんだろうな。俺達は…。 そんな事をふと考えながら、俺はケータイのSW関連サイトを開いた。 ここのBBSには、純粋にSWが好きなヤツ等が集まってる。 現実世界では満たされない俺の憩いの場だ。 最初に名乗ったマスタークライトって名は、ここでの俺のハンドルネーム。 ここには、SWの世界の住人になりきる俺達を卑下するようなヤツはいない。 だから、ここでの俺は、ジェダイマスターの一人、マスタークライトなんだ。 けど… 「チッ…、またコイツ等かよ…」 最近、そのSWの世界を壊そうとしてるヤツ等が居る。 このウェブサイトにも、そういう輩がポツポツと姿を現すようになり始めた。 数少ない俺達の憩いの場まで失くそうっていうのかよ…。 「…クソッ」 ここの所、ヤケにイライラしてる自分が居る。 職場でも、あまり良い状況が築けていないんだ。 なのに、ケータイサイトでさえ息抜きが出来ない。 ストレスは溜まる一方だ。 そんなある日の事だった…。 「………」 俺は、何時ものように職場へと脚を運ぶ。 その日は、普段以上にイライラが増していて、周囲への注意が散漫になっていたのかも知れない。 そして、交差点に差し掛かった瞬間。俺の身体は、強い衝撃に跳ね飛ばされ、宙を舞っていた。 (轢かれたのか…?俺は…) 空の青さがヤケに鮮明だった事を覚えてる。 けど、その後、地面に落ちた記憶はなかった。 次に目覚めた時、そこは病院のベッドの上で… 「う…うぅ~ん…」 周りでは、家族や知り合い達が心配そうに俺の顔を覗き込んでいたんだ。 我ながら、哀れな姿だった。 両足を複雑骨折し、両腕は圧迫骨折。全身に重度の打撲と、20箇所を超える裂傷。 自分で言うのもなんだが、生きてるのが不思議なくらいだった。 「まるで、ミイラだな…」 半分呆れ気味に、俺は自分の姿を笑っていた。 両手両足、全身あらゆる部分が包帯で巻かれ、動くことさえ儘ならない。 こんなんじゃ、PCどころか、ケータイさえ弄れないだろう。 両手の骨折が回復するまでは、おそらく何一つ出来ないんだろうなぁ、なんて、この時は思ってたんだ。 だけど、奇跡的に生き延びた俺に、更なる悲劇が襲い掛かる。 「………」 入院して始めての夜。 見回りの看護婦さんが俺の個室の前を通り過ぎた直後だった。 何か、ツンと鼻を刺すような異臭が漂い始め、その異変に気付いた時には、既に遅かった。 「ごわっ!!」 地面から突き上げてくるような強い衝撃。 全身打撲の俺には、余りに辛い一撃だった。 激痛に顔を歪めれば、顔の傷が更なる痛みを俺に与える。 憎憎しいと感じながら、俺は歯を食いしばってその痛みに耐え、何が起こったのかと窓の外を睨み付ける。 …いや、今の俺に確認出来る事なんて、それくらいしか無かったからなんだが。 「マジかよ…」 窓の外を見た俺は、自身の運命を呪わずには居られなかった。 そこから差し込む朱の灯り。 目を疑うような光景は、徐々に勢いを増して俺へと襲い掛かって来た。 「クソッ、誰か…、誰か助けてくれっ!!」 痛みも忘れて声を張り上げる。 しかし、周囲からは既に幾つも悲鳴が上がり、弱々しい俺の声など簡単に掻き消されてしまった。 どんなに叫んでも、誰にも俺の声は届かない。 だが、それでも恐怖は音を発てて俺へと近付く脚を止めようとはしなかった。 ビシッっという亀裂音の後、即座に窓ガラスが吹き飛ぶように割れた。 熱によって、耐久度の限界を超えたのだ。 …そう、その恐怖とは、火事だ。 それも、瞬く間に病院全体を燃やす大火事だった。 煙が部屋の中へと入り込んでくる。 しかし、その煙を避けようと思った所で、この身体ではどうする事も出来ない。 吸い込む空気は熱く、喉を焼く。 だが、苦しさから吸わずには居られない。 足掻き、もがき、苦しみ、その最中に思った。 (これが…死、なのか…) 苦痛と絶望の中、俺の意識は一瞬にして消え失せていた。 死は確実だと直感していた。…だが、その「筈」というのに、俺はまた、知らないベッドの上で目を覚ましてしまうのだった…。 「っ!?」 病院のベッドに似た感触からか、俺は慌てて飛び起き、逃げ出そうとした。 だが、その途端に気付いたのは、全身の何処にも痛みが走らなかった事だ。 「あ…れ???」 何故か視界が狭いが、俺は確実にベッドから降り、普通に歩いていた。 俺は、交通事故にあって大怪我をしていた筈だ。しかも、入院した先の病院で、更に火事に巻き込まれた。 死んで当たり前。だというのに、痛み所か、俺は何時も以上にピンピンとしていた。 「…なんだ?こりゃ」 自分の身体を確かめようとしていた。それは、自分が幽霊にでもなってしまったんじゃないかという疑いからだった。 しかし、その時だった。 「おぉ、目が覚めたようじゃな」 「…?」 プシューっと空気が抜けるような音。 直後、部屋の唯一の扉…自動ドアが開き、そこから一人の老人が入室して来た。 「…ふむ。元気そうで何よりじゃ。ふぉっふぉっ」 白衣を着た眼鏡の老人。 背は異常に低く、まるで小学生でも見ているかのような気になる。 しかし、その口調や顔のシワの数が、この老人を七十歳以上の大先輩に見せていた。 「えっと…、何方ですか…ね?」 思わず出たのは、そんな他愛も無い言葉だった。 しかし、老人は気さくに微笑んで答えてくれる。 「ワシか?ただのSW好きの老人じゃよ?ふぉふぉっ」 そう言った老人の手には、ファイルのような物と一緒に、確かにSWのロゴが入った幾つかの雑誌が握られていた。 だが、今、この状況で、SWがどうのという話しなど聞いてはいない。 俺は、自分の身に起こった奇妙な現象の解明を急いでいたのだ。 「そ、そうじゃなくて…、俺は、いったいどうして、こんな所に…?」 初めは、また病院かとも思った。 だが、周囲に設置されている機材の数々は、そこが病院ではないと物語っていたのだ。 では、何故、そんなワケの判らない場所に、俺が運び込まれているのか。それを真っ先に確かめたかった。 「ふぅ…。せっかちなヤツじゃのぉ。なぁに、心配せんでも、お前さんは生きておるよ。しっかりと、な」 「…???」 老人は、そう言うと俺の方を指差しながら、妙に真剣な顔付きになって話した。 その指が示す先。そこに何があるのかと自身の身体を見下ろす。そして、ようやく自分の正体に気付かされるのだった。 「っな!!」 これは何の冗談だろう。 俺の身体は、見た事も無い黒いテカテカのスーツによって仮装されていたのだ。 眠っている間にコスプレでもさせられたのか?と、疑うような格好だ。 だが、冷静になり始める俺の頭は、ようやく状況を理解し始める。 「まさか…、冗談だろ…」 しかし、そう言って自分を疑った俺に、老人は真実を語り始めるのだった。 「察しが良いのぉ。…そう、お前さんは、もう人間ではないんじゃよ」 耳を疑うような言葉だった。 …いや、普段なら、笑い飛ばしてしまうような話しだったろう。 だが、老人は至って真面目に言葉を続ける。 流石の俺も、この状況ではその内容を信じざるをえなかった。 「…つまり、俺は一度死に、その後、アンタに生き返らされた…って事なんだな?」 「うむ」 この老人は、どうやら科学者らしい。しかも無名でありながら、途方も無い天才。…だそうだ。 とはいえ、その言葉が偽りとも思えなかった。 何故なら、俺の体がそれを物語っていたからだ。 交通事故によって全身十数か所を骨折し、火事によって肉体の80%以上を失っていたこの体。それを蘇らせたのは、他ならないこの老人なのだから。 まるで漫画のような話しだ。 死人が生き返り、しかもサイボーグと化してしまったんだ。 正直、気持ちが高揚しなかったワケじゃない。 ヒーロー物漫画の主人公にでもなったような物なんだから。 だが、話しを詳しく聞く内に、そんな喜びは薄れ、絶望へと変わり始めた。 「ちょ、ちょっと待ってくれ!それじゃ、何か?俺はもう、元の生活には戻れないっていうのかよっ!?」 俺の体に使われたのは、非常に画期的な医療用の新技術なのだそうだ。 失った体の一部。もしくは全ての部位を人口筋肉によって補強し、骨格は決して腐敗しない特殊合金製で出来ている。 内臓は全て取り払われ、変わりに生命維持に必要なエネルギー源の採取に用いられる機器を内蔵。 そして、全身を覆う皮膚の代わりに、完全抗菌のバイオフィルムを用い、刃物や銃弾さえ通さない強靭な肉体を作り上げているそうだ。 だが、コレを聞いても判る通り、裏を返せば兵器としての利用価値が大き過ぎる。 もし、俺が表をこの格好で歩き、それが各国の軍事産業を刺激しようものなら…。 この体には、既にそれだけの存在価値があるのだ。 もはや、元の生活に戻る事は出来ない。 それどころか、家族の顔さえも…。 俺はもう、死んだ事になっているのだ。 「…なんて、勝手な事をしてくれたんだっ!!」 俺は当り構わず怒鳴り散らしていた。 生き返らせてくれた事には感謝すべきなのかも知れない。 だが、だからといって、勝手な都合で生き返らせて、以前の生活の全てを捨てろ等と。勝手にも程がある。 「…すまん。確かに、身勝手が過ぎたのやも知れん…じゃが、これだけは言わせてくれ」 老人は、謝罪を繰り返しながらも、俺に告げた。 例え元の生活に戻る事が出来なくとも、与えられた命を粗末に扱う事だけはしないでくれ。と。 そして、生きてさえ居れば、必ずまた良い事がある。死ねば、本当にそれまでなのだ。と…。 確かに、老人の言葉は正論だった。 もし、あの時に命を失い、本当に死んでしまっていたなら、この先に待っているであろうチャンスにも巡り合えず、そのまま無に帰していたのだ。 だが、納得など出来ない。 家族の顔など、忘れられるワケがないのだ。 しかし、それ以上、俺は何も言い返す事をしなかった。 何故なら… 「………」 老人の虚ろな瞳の奥に、何か酷く悲しげな物を感じたからだった。 後に聞いた話しだが、この老人の一人娘は、交通事故にあった後に入院した病院で火事にあい、そして焼死していたのだ。 俺と同じ運命を背負い、受け入れてしまったのが、彼の娘だったと聞かされては、もはや納得せざるを得なかった。 こうして、俺の第二の人生は幕を開けた。 あの事故から、どれ程の時間が経っただろうか。 今では蟠りもなく、老人の事を、俺はこう呼んでいた。 「メシだぜ、オヤジ…って、何作ってんだよっ!?」 「ふぉっふぉっ♪どうじゃ、最高の出来じゃろぉ?」 オヤジが研究室に篭って丸三日。 毎朝昼晩と夕食を運ぶ俺が、この日目にしたのは…信じられない程感動的な「新作」だった。 「どうじゃ?名付けて、パワードベイダースーツじゃ♪」 「す、すげぇっ!!マジカッコイイって、オヤジ!!」 それは、俺が身に着けているスーツに追加出来る装備らしい。 だが、流石はSWマニアのオヤジだ。デザインが、あの「ベイダー卿」の黒い装備に酷似していた。 俺としても、この趣味を否定するつもりはない。 あの事件以来、部屋に篭り勝ちだった俺は、以前以上にSWの世界に浸かる時間が増えていた。 今じゃ誰にも負けない程のSWマニアだ。 だから、こんな物が自分の物になってしまう今の状況を、当たり前のように喜んでいた。 「着けてみてもいいかっ!?」 「おぉ~勿論じゃとも」 家族を忘れられたか、といえば、そうじゃない。 今だって、悲しくて、寂しくて、どうにも眠れない夜だってある。 だが、それでも、俺は幸せだったのかも知れない。 今は、そう思えた。 しかし、俺の不幸は、まだ終わっちゃいなかった…。 「悪いが、断らせてもらうわい。ワシは、兵器を作る為に科学者になったワケではないのでのぉ」 また、あの電話らしい。 最近、頻繁にかかってくるようになった電話。 どうやら、国防省からの協力依頼のようだった。 何処から聞き付けたのか、オヤジの科学者としての技量を買い取りたいと言って来ているそうだ。 馬鹿馬鹿しい。 オヤジに兵器を開発しろだなんて、幾ら金を積んだって無理な話しだっていうのに。 オヤジは、娘さんを救えなかった科学者としての自分の不甲斐無さを嘆き、必至に独自の研究を進めてきたんだ。 大切な物を救う為の科学。それを、命を奪う科学にはしたくない。 それが、オヤジの口癖だっていうのに…。 だけど、そうやって断り、拒否し続けたツケが回って来たのは、その電話から数日後の事だった。 「珍しいよなぁ…。オヤジが、俺に使いを頼むなんてさ…」 そんな事を呟きながら、俺はオヤジの助手と二人で買い物に出掛けていた。 「お前も、たまには外の空気が吸いたいじゃろ?」 それが、お使いの理由。 まぁ、確かに久しぶりの外出で、俺も気分は良かった。 一年近く、オヤジの研究所内だけが俺の世界の全てだったから。 そんな中で外出が許可されたんだ。勿論嬉しかったさ。 だけど、俺が馬鹿だった…。 どうして、気付いてやれなかったんだと、今更ながらに後悔していた。 買い物を済ませ、意気揚々と帰宅した俺は、研究所から感じる妙な違和感に胸騒ぎを感じ、車から駆け出していた。 「…な、なんだよ…これっ?」 さっきまで、俺はここに居たんだ。 ここで暮らしてたんだ。 なのに、そこには見た事も無い景色が広がっていた。 窓ガラスは割れ、壁には無数のヒビが走り、破壊された機材からは煙りが濛々と吹き上がっている。 天井は崩れ、パラパラと音を発てながら足元に埃を降らせていて、俺はその状況が飲み込めずに居た。 だけど、混乱する頭で真っ先思ったのは、オヤジの安否だ。 ここで何があったのか。それよりも、先ずはオヤジが心配だったんだ。 そして、探し回った。 決して研究所としては大きくない。だが、それでも一般家屋よりはかなり広いだろう。 その中を、瓦礫を掻き分けるように進み、ようやく辿り着いたのが、オヤジの自室前だった。 「オヤジッ!!」 壊れ、外れかけた鉄製のドア。それを無理矢理蹴破り、室内へと飛び込んだ俺は、そこで最も見たくない物を目の当たりにする。 「…嘘だろ…」 そこには、血塗れになって床に倒れるオヤジの姿があった。 俺の声に、ピクリとも反応しないオヤジの体。 絶望的だった。 信じる事が出来なかった。 床を浸す血量はハンパじゃない。 その、自らの鮮血に沈んだオヤジを俺は見ている事が出来なかった。 「…クッ」 だが、目を逸らそうとした直前、ピクっと動いたオヤジの指先を俺は見逃さなかった。 「生きてる…っ!?」 慌てて駆け寄った俺は、オヤジを抱き上げる。 思ったよりも遥かに軽いオヤジの体は、造作も無く俺の腕の中に納まる。 こんなにも、オヤジは小さかったんだ…。 「…おぉ…、クライトかぁ…」 「オヤジ…、いったい、何があったってんだっ?」 叫ぶように問う俺に、オヤジは答えを聞かせず、同じ言葉をうわ言のように繰り返す。 「…逃げろ…。逃げるんじゃ…」 「どうして…?いったい、ここで何がっ!?」 「逃げ…ゥゴフッ」 「っ!!」 口から吐き出される大量の鮮血。 そして、吐血の直後に、オヤジは目を開いたまま、絶命した…。 「オヤジ…ッ?…オヤジッ!?オヤジッ!!?」 どんなに呼び掛けても、もうオヤジが言葉を返す事はない。 そう判っていても、俺は何度と無く名を呼び続けた。 「クソ…っ、なんなんだよ…っ。何が、どうなってんだよっ」 こんなに悲しいっていうのに、俺にはもう、涙を流す事さえ出来ない。 生まれ変わった俺の、唯一の肉親とも呼べる人。その死。もはや、何を考えても、思考など混乱を深めるだけでしかなかった。 SWが好きだったオヤジ。 年甲斐も無くスケベだったオヤジ。 何時も元気で、殺しても死なないような人だった。 なのに、どうして…。 心底から溢れ、膨らみ、震え出す怒り。 誰が、こんな事を…? いや、誰にやられた…? やったヤツを俺は許さない…。 憎い…。殺してやりたい…。 「復讐してやる…。絶対にっ」 その時だった。 突如、耳に響いた悲鳴と銃声。 俺は立ち上がるなり、その発生源に向かって走り出していた。 そして、辿り着いたのは、俺の部屋。 半開きになった扉の向こうからは、数人の男達の声が聞こえる。 「まだ生き残りが居たとはな…」 「実動隊の連中は何をやってやがったんだか」 「愚痴は後にしろ。さっさと書類とデータを集め、残りは処理班に任せておけ」 生き残り…?ドアの隙間から覗き込んだ先には、さっきまで俺と使いに出ていた助手の哀れな骸が討ち捨てられていた。 コイツ等がやったのか…? コイツ等が、アイツとオヤジを…っ。 憎しみと怒りが俺を染め上げて行くのを感じる。 書類とデータを収集している所を見れば、ヤツ等が何者なのかは容易に想像出来た。 おそらく、コイツ等は国防省のエージェントって所だろう。 そして、オヤジが殺された理由は、協力を拒まれたからだ。 もし、オヤジが他の組織に協力しよう物なら、自分達が不利になる。だから、先手を打ったんだ。 だとしたら、コイツ等を許す理由などない。 国防省だろうと何だろうと、そんな事はもう、どうでも良くなっていた。 オヤジを殺したコイツ等に復讐したい。 死よりも辛い苦痛を与え、死にたいと自ら懇願させたい。 怒りも、憎しみも、既に限界近くまで膨らみを見せていた。 「許さねぇ…。全員、なぶり殺しにしてやるっ」 俺は、半開きの扉を力一杯に押し開け、中の黒服達に飛び掛った。 「な、なんだっ!?」 俺が真っ先に狙いを定めた黒服。 そいつは、銃を握ったままのヤツだった。 コイツが俺の仲間を殺したんだ。と、そう確信していたからだ。 「ぐぁっ!!」 黒服へと飛び付いた俺は、まるで獣のように、その喉笛につかみ掛る。 そして、目一杯の力でその体を押さえ付け、ギリギリと首を締め付けた。 「殺してやる…っ、殺してやるっ!!」 「ぁ…がぁ…っ」 その黒服は、既に白目を剥いていた。 窒息死寸前。だが、それを邪魔しようと、他の黒服達が拳銃を抜き、俺に向かって躊躇も無く発砲した。 頭と肩を撃たれ、その衝撃で俺の体は仰け反る。 白目を剥いていた黒服も、その隙をついて俺から離れていた。 「く、くそったれが…!なんなんだ、コイツはっ!?」 「ふざけた格好しやがって…。仮装パーティーなら他へ行け!」 「チッ、実動隊の馬鹿どもが。手間かけさせやがって…」 倒れた俺に向けられた言葉。 コイツ等は、俺が死んだとでも思ってるのか? だとしたら、とんでもない大馬鹿ヤロー共だ。 オヤジの作ってくれたこの体が、銃弾如きで壊せるもんかよ。 「うっ!?」 「コ、コイツ、まだ生きて…っ!」 「化け物かよっ、コノッ!!」 上体を起した俺に、無数の弾丸が襲い掛かる。だが、痛くも痒くも無い。 当たり前だ。オヤジが開発したこのスーツは、銃弾も、刃物も通さない。完璧な装甲なんだ。 俺は恐れも無く、その弾丸の雨にあえて立ち向かった。 弾かれる弾丸。 飛び散る火花。 だが、所詮は凡人が作った玩具に過ぎない。 天才のオヤジが作ったこのスーツに、叶うワケがない。 「クソッ!チクショーッ!!何なんだよ、コイツはっ!?」 「く、来るな、化け物っ!!」 怖いのか…?この俺が…? 黒服共は、完全に怯えていやがる。 そうだ。その恐怖だ。 オヤジは、それ以上の恐怖を味あわされたて死んだんだ。 もっと恐怖しろ。 もっと悲鳴を上げろ。 俺は、お前達を殺す為に、ここに来た! 「死ね…」 だが、遂につかみ掛かろうとした瞬間だった。 意識が飛びそうな程強い衝撃が頭に走り、俺の体は宙を舞っていた。 「ぐっ!!」 ベイダーのマスクに反響する強い金属音。 それが、俺の脳を揺らした。 地面に打ち付けられた俺は、思わず頭を上げ、その衝撃を受けた方向に無意識に目を向けていた。 「チッ、これでも駄目か。…無事ですか?主任」 「おお、いい所に来た!全員で、この化け物に集中砲火を浴びせろ!!」 「了解」 ドアの向こうからゾロゾロと入り込んでくる黒服達。 部屋の半分近くを埋め尽くす人数が、全員俺に向かって自動小銃の銃口を向けていた。 「ってぇーーーーっ!!!」 主任と呼ばれた黒服の号令で、前後上下二段に銃を構えた黒服達が一斉に俺に向かって発砲する。 銃弾の雨だ。 しかし、当った所で痛みなどありはしない。 だが… 「う…くっ!」 立ち上がり、前に進もうとしても、余りの銃弾の多さに前に進む事さえ儘ならない。 このまま弾切れを待つのも手だろう。だが、それでは俺の怒りが収まらなかった。 「こんな物で…。こんな事で…っ」 そう口にした瞬間、俺の脳裏に浮かび上がった復讐の権化たる者の姿。 暗黒卿と謳われた黒の軍神。 オヤジが愛した、最凶の復讐鬼を。 「私を倒せるなどと思うなっ!!」 憎しみと共に吐き出された叫び。それは空間を歪め、時を止めていた。 「こ、これは…?」 否、時は止まってなどいない。そう感じただけだった。 銃弾は次々と俺に向かって放たれている。だが、その全てが、俺の体に触れる直前で動きを止め、まるで時を止めてしまったかのように錯覚させていたのだ。 「ど、どうなってるんだ!?」 「銃弾が、ヤツの目の前で…っ!」 「馬鹿な…っ!?」 フォース…?そうだ。そうとしか例えようがない。 この銃弾は、今、俺の意思の力によって、その動きを封じられているんだ。 だが、何故、俺にそんな力が…? いや、今はそんな事などどうでもいい。 これがフォースだと言うのなら、俺はなりきる。 名実共に、真の暗黒卿に。 「復讐こそ、私の全て…。ならば、貴様等には、その真の恐怖を刻み込んでくれようっ」 右手を突き出し、俺の意志は時を止められた銃弾達に干渉する。そして、ベイダーがフォースグリップを使う時のように、その弾丸を黒服共に撃ち返すのだった。 「がっ」 「ぅあっ!」 短い悲鳴を上げ、次々と倒れて行く黒服達。 自ら放った銃弾に撃たれ、死に行く彼等の様は酷く滑稽に見えた。 そして、俺は始めて、自分に与えられた力の強さに気付かされる。 「今の私は、ダースベイダー…。いや、暗黒と父の御名より拝借し、あえてダースクライトと名乗ろう…」 今の私に出来ない事など無い。そうとさえ思えた。 だからこそ、私は嘗ての自身の遺産でもある物を手にし、それを眼前に翳す。 「なっ、光る…剣だとっ!?」 私の手に握られたのは、旧友からの贈り物だった。 それは、私の宝。 何よりも大切にしてきた、唯一の宝だ。 その中心に込められた念は光る刃を生み出す。…そう、これこそが、ライトセイバーだ。 「そんな玩具などにっ!!」 愚かしい事に、彼等はまだ気付いていない。 私には、その銃弾の弾道が見えているのだ。 そして、その跳弾の弾道までも。 「ぐあっ」 「がはっ」 ライトセイバーの輝きは銃弾を跳ね返し、それによって残された敵までも次々に葬って行く。 もはや、私にとっては拳銃こそ玩具に思えた。 「無駄だ…。大人しく、運命を受け入れるが良い…」 「う、嘘だ…。こんな化け物が…、現実に存在するワケがないっ」 高揚感…。いや、優越感だろうか。 父の死に覚えた怒り。だが、今の私は、酷く冷静だった。 この強い力。それは、私の物なのだ。…そう考えると、喜びさえ溢れ出して来た。 私は強い。この世の何よりも。 もはや、誰にも止められぬ。 私こそ、フォースに導かれし、真の暗黒卿なのだ…。 闇にこだまする無数の悲鳴。 それは、現実。物語に描かれた絵空事とは違う。 ダースベイダーの最後とは、壮絶なれども美しい終わりを迎えた。 しかし、真実の暗黒面に魅入られてしまった彼には、もう光が届く事など無いのかも知れない。 「クッククク…、フッハハハハハハハハッ!」 夜の闇よりも黒く映える漆黒の翼を翻し、クライトは暗黒の名を受け継ぐ。 何者も、彼を咎める事など出来はしない。 何故なら、この世界には、ジェダイ等という正義の騎士は存在しないのだから…。 |