女、インド一人旅・2私はそーっと目を開けた。視線を感じる窓の方へと目をやる。 ・・うぉわっ!!!!! 衝撃のあまり何人だったかは記憶に薄いが、何人かの目が、こちらをのぞいていた。 格子につかまった、知らない男たちだった。 私は人生で一番ありえない声を出した。 『ウゴォルアヮヮウガラロォーーーーーーー!!!!ゴォーーーーーーーー!!!』 舌がノドに落ちてしまったかのように、私は言葉を失い、もはや声ではない爆音を私の最高デシベルで発した。 男たちはのうのうと、何か私に話しかけてきた。 この状況から、話しかけてきやがったのだ。信じられない。 一瞬にして、私はタタリ神になった。 ベッドから転がり落ち、床を猛スピードで這いずり回る。 “ズザザザザァーーーッ!!!” 椅子を激しいタックルでぶっ飛ばし、勢いあまってドアにぶち当たる。 “ボゴォン!!ドォンドォン!!!” 何度もぶち当たる。 “ガァン!!ドゴォン!!ゴトォン!!!” パニックのあまり、戸の開け方すら忘れてしまった。 あたまが取れるんじゃないかというくらい、あたまを武器に、ぶち当たる。 “バァン!!!ドォン!!!ドゴォン!!!” その間もずっーと、私は何かを発し続けていた。 『ンゴァアババルォーーーー!!!!ギィエェーーーーーーー!!!!!!』 壁にも体当たりし、きっとその有様は間違いなく狂人だったはずだ。 いや、狂人だったのだ。 私は暴れに暴れた。 無駄な動きだろうがなんだろうが、とにかく暴れまわって部屋を荒らした。 シシ神がやってきたように、しばらくすると私も人間だと言うことを思い出してきた。 気がつくと窓にはもう、男たちの影はなかった・・・。 “助かった・・・・。” やっと安心した瞬間、恐ろしい痛みを感じた。 ヒザは擦りむけ、体のあちこちが真っ赤に腫れていて、あたまにはデカいコブができていた。 自爆だ。 “ちくしょう!!!!!” なぜか私は、畜生、と思った。 しかし、とにかくわたしは自力で操も命も守ったのだ。 少なくとも男を追い払うには充分の、狂人ぶりを見せたのだ。 そしてこの日、私は人生初の体験をすることとなった・・・。 平和主義のこの私が、平和をかなぐり捨てて、見ず知らずの人と大ゲンカすることになろうとは・・・。 女、インド一人旅・3>> |