カテゴリ:▼ 私立中学受験
※2007年1/25の日記です。
どうして子供に中学受験をさせようと思ったのか・・ということについて、 今日は我が家の歴史を書いておこうと思います。 * * * * * 私たち夫婦がまだ結婚する前のこと。 夫の両親は、「ここに住めば、将来生まれてくる孫が区域で一番評判の良い公立小から公立中学へと進学できる。」という理由で、あるマンションを購入しました。(夫の両親の家の比較的近くです) 私たち夫婦は結婚してそこに住み、その後買い替えを経て、さらに夫の両親の家の近くに移り住みました。 その結果、夫の両親が「地元では昔から名門」とうれしそうに語る公立中学へは、 以前よりももっと近付きました。 夫も私も中学までは公立育ちでしたし、二人とも地元でしたので、生まれてきた自分たちの子供をいつの日かその中学に通わせることに、長いあいだ、何の疑問もありませんでした。 そんな「公立ひとすじ」だった我が家に転機がおとずれたのは、 公立小中学校の教科書が3割削減になった2002年のことです。 * * * * * 初めて削減教科書が採用された2002年の、4月。 長男のリョウは希望を胸に最高学年の6年生になりました。 新学年の最初の登校日、リョウは帰宅するなり、 「大変だよ!」 と叫びました。 一体何事かとビックリしていると、リョウはランドセルを開け、中から新しい算数の教科書を取り出しました。そしてバタバタと自室に駆け込み、5年生のときの算数の教科書を掴んで戻ってくると、両方を広げて私に見せました。 「これを見て!今日貰った新しい教科書。これ去年の教科書と内容が同じだよ! 『6年』って書いてあるけど、表紙が違うだけ。これもこれも・・使ってる写真も同じ。 この1年、また同じことを勉強しろっていうの?!時間が無駄になるよ!」 そして、 「これが『削減』っていうことなの?こんな教科書で・・ぼくたち、どうなるの?!」 と真剣な顔で叫ぶように言いました。 さて今年はどんな勉強をやるんだろう、と6年の教科書を開いたリョウは、新しい教科書が表紙以外の多くの部分で前年の5年の教科書と内容がかぶっているのを見て驚愕したようです。 (※3割削減以外にも、難しい学習内容は次年度へ繰り越しになったため、5年の内容が6年に繰り越されていたのです。すでに以前の学習要綱で学習済みだった、ちょうど『狭間』のリョウたちは、同じことを2度、勉強するはめになったわけです) すぐあとに家に帰りついたメイ(当時4年生)も家に入るなり「ただいま」も言わず、 「母さん!教科書が変だよ!薄くてペラペラで、去年のと同じことが書いてある!」 と興奮気味に叫びました。 リョウは、 「去年の教科書より簡単にできてるよ。 こんな教科書で・・ぼくたちの未来はどうなるの?ぼくたち馬鹿になっちゃうよ。」 と不安そうな目で訴えました。 私は 「これじゃ、せっかくの最終学年なのにがっかりだよね。母さんが、何かいい方法を考えとく・・ 一生に、たった1度しかないリョウの1年間を、無駄にしないような何かを。心配しなくて大丈夫。」 と約束しました。 そして、 「どうしてこんなことになったの?こんなことが、いいわけないよ。 こんな教科書にした大人は、馬鹿だ。」 と憤るリョウに、 「うーん、これからはたくさん勉強したい人は自分でしなさいっていうことなんだと思う。 母さんは塾は嫌いだけど、学校で教えてくれないなら、塾に行くことも考えに入れたほうがいいのかも知れないね。今年は学校で新しい勉強を覚えなくていいぶん、家でも何か面白いことを考えようよ。」 と言葉を選んで答えました。 私はこのとき、子供が動揺するほど簡略な教科書になってしまった現実を目の当たりにして背筋が寒くなるような危機感を覚えました。 * * * * * そんなやりとりが子供との間にあったあと。 子供の好奇心や向上心、知的興味を満足させてくれる勉強というのはどこにあるのか・・ と困っていたとき、仲良しのママ友・Aさん(←ご夫婦ともに私立中出身)の娘さん・Bちゃんが、中学受験塾に通っているのを思い出しました。 Aさんは、 「中学受験塾で勉強することは、学校の勉強とぜんぜんかぶってなくて、すごく面白いの。 算数は難しいけどね、大人はぜんぜん解けないような問題を、子供はすらすら解いちゃうの。 塾の先生に言わせると、子供は脳味噌が柔らかいから、柔軟に考えられるんですって。 でもある時期を越えるとそういう柔軟性は無くなるらしいわよ。子供時代の特権みたい。」 と言っていた・・。 学校の勉強とかぶっていなくて、面白くて、ちょと難しい勉強・・。 これだ、と思いました。 中学受験塾で、子供がわくわくするような算数の授業があるのなら、そこにリョウを通わせてあげよう。 私には世の中を、教科書を変えることはできないけど、せめて自分の子供が不安にならないような、未来の選択ができるよう助けてあげたいと思いました。 私は田舎育ちで幼稚園から中学3年までメンバーが変わらないような、のどかな公立畑を生きてきたし、夫は高校までずっと公立でしたから、中学受験なんて右も左もわかりません。 でも一度しかない我が子のこれからの数年間は、一生の中で黄金の価値を持つものだという意見で一致し、受験は間に合わなくてもそこで勉強したことは無駄にはならないだろう、ということで、地元の小さな中学受験塾に通わせることにしました。 これが、我が家と中学受験との「出会い」でした。 (※大手塾にも問い合わせをしたのですが、『6年の4月からでは遅すぎるのでうちではとても面倒見切れません。例え受験をしないという前提があっても、やはり入塾を受け入れることはできないです』と断られました。) 実質、5月くらいから受験塾に通い始めたリョウは、同じく「駆け込み受験」を目指す二人の生徒(我が子とは違う小学校の子たち)と勉強を始めました。 算数は1週間で1、2単元を完全に終わらせ、以後2度と振り返らないようなハイペースで、勉強は進みました。 今週はつるかめ算、来週は時計算・・ 流れるようにやってくる新しい単元を、大量の宿題をこなすことでクリアしていく日々でしたが、 リョウは新しい単元の宿題をやりながら「これ、凄く面白いよ!この計算ではこんなことができるんだ。」と目を輝かせていました。 私は今から受験なんてぜんぜん間に合わないだろう、と思っていたので、 塾に行くたびに毎回知的好奇心を刺激する新しい勉強に会えるリョウの姿を見るだけで満足していました。 ある日、塾生が全員参加する公開模試の会場となった私立中学で、 テスト終了までの待ち時間のあいだに保護者向けの説明会があり、参加して話を聞くチャンスに恵まれました。 その頃、地元公立中学の情報を収集していた私は、私たちが子供の頃に比べ、 すさんでいる地元中学の実体を見聞きして、不安になっているところでした。 傷害事件、窃盗、喫煙、恐喝・・学校の前に止まっているパトカー。 それは子供を連れて散歩をしている私の目にもときどき入ってきており、 あの中学に入って、正義感が強い、曲がったことが嫌いな長男は無事にやっていけるだろうか・・と不安は日々増していました。 そんななかで初めて見た、私立中学というもの・・ 私はその私立中学のカリキュラムや教科書、教育目標などを聞きながら、 見知っている地元公立中学と比べ、「私立中学とはこれほど面白そうなところなのか!」と感動しました。 そして、「もしいい私立中学が見つかって受験のチャンスがあれば、リョウにも挑戦させてあげたい」と思いました。 後日、その会場で受けた試験の偏差値が箸にも棒にも引っかからない・・というレベルでは無かったので、「本格的に受験にトライしてみようよ」とリョウに提案しました。 我が家が中学受験を選んだとき・・6年生の7月になっていました。 * * * * * その後、いくつかの学校見学を経て、長男は中学受験をし、志望校に合格をいただきました。 (学力に見合う気に入った学校が見つからず、「受からなければ公立で」と腹をくくって第一志望校1校だけのトライでした。) そしてその学校で充実した素晴らしい3年間を過ごしました。 また、4年生の秋の終わり頃から中学受験塾に通い始めた妹のメイも受験にトライし、無事に第一志望校に通っています。 こうして我が家の子供たちは中学受験のお陰で削減の影響が少ない学習環境で中学生活を過ごしました(&現在過ごしています)。 でも・・これは本当に『心から喜べる、良いこと』ではなかったと思います。 中学受験を決めたあの日から、この国のトップに対してずっとずっと抱いてきた疑問・・ 日本の教育はこれからどうなるのか・・ 資源も無く、食料自給率も低いこの国が、国際社会から干されずに生きていくために、未来を担う子供たちの何を大切にし、何を磨かなければいけないのか、政治家達は真面目に考えているのか・・ この答えは、日本の政治のどこにも見えないまま、月日が流れていったように思います。 私は「3割削減」からこっちの、あきれ果てるような学校教育の迷走ぶりが、 小泉政権のもとではほとんど問題視されていないことを憂慮しつつ、子供たちと日々を過ごしてきました。 そして数年間ののち、世の中にやっとあらわれ始めた、「脱ゆとり教育提言」の文字・・。 しかし、我が家の子供たち・・特に長男のリョウは、この国のトップの大人たちの迷いに翻弄され続けたまま、もう、大人の入り口に立ってしまっていました。(現在高校生です) 私は国全体の公立教育のレベルが上がれば、国力が増すと思います。 日本は資源らしい資源も無く、これまでも国の誇るべき財産は「技術」つまり「ヒト」だけだったわけです。 今後、これをおろそかにしたら、日本は滅んでしまいます。 国の将来は、どれだけ公立教育がすぐれているか、ということと直結していると言っても過言ではないと思います。 できれば我が家のような理由で私立中学への受験を踏み切らなければならない、と考える家庭がなくなりますように・・。 心から祈るばかりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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Comments
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Re:◆アオサギ~不気味に増える、大型の鳥。(06/12)
やっぱり増えている感じしますよね。 私が…
ポールワトソン顔面粉砕太郎@
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LUSH日本支部の意思に拘わらず売り上げは…
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はじめまして 私は今約1歳半になるプティ…
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古い記事にメッセージを失礼します。靖國…
しおん★☆@
Re[1]:◆オープン前のメッツァビレッジへ。訪問レポ(11/09)
ふぁみり〜キャンパーさんへ 私が見た現…
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Re[1]:◆オープン前のメッツァビレッジへ。訪問レポ(11/09)
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ふぁみり〜キャンパー@
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キャンプ場もあるんですか・・・ 確かにキ…
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