[イギリスの食文化]の記事一覧 | 与え続けること　と　工夫すること

イギリスのワイン

林望さんの本を読み漁っていたら、イギリスのワインのことがでていた。「イギリス産のワイン！」「知らなかった」ちょっと引用。現在イングランド全土で、４００箇所以上のぶどう園が開かれて、毎年３００万本のワインを製造している。なかには国際ワインコンテストで優秀賞を獲得しているものもある。イングランドのワインはほとんどすべて白ワインである。イギリスではさまざまな種類のぶどうが育成されている。たとえば、エルムズ・クロス農園では、ミューラー・トウルガウ種（ドイツにおいてもっとも普遍的に栽培されている品種）を育ててきた。ドイツはイギリスと気候的に似ているからである。このエルムズ・クロスで一番人気のあるワインは「エルムズ・クロス・ドライ・ホワイト」この銘柄は、ラベルに黄金のガジョン（鯉の一種）が描かれているのですぐわかる。このおいしい飲み物は夏の、ピクニックの友に好適なものである。日本では手に入らないだろうなあ。Information: Elms Cross Vineyard(なぜかＷでなく、Ｖ。誤字？）　　　　　　 Bradford on Avon, Wiltshire BA15 2AL Tel/Fax (01225)866917 　　　　　　

2007.10.23

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昼間も、苦笑い。　でも・・・・　その２

ストレンジ家のイギリス料理こうして下ごしらえが出来上がると、こんどはそれを大きな鍋に入れ、少しの塩を加えて、延々湯ではじめた。（フーム、なるほど、ここまではイギリス料理の定石どおりだな。）そうしておいて、次に　ストレンジ夫人が取り掛かった仕事は、本日のメインディッシュたる肉料理であった。「Here we are! これが今日のメインディッシュよ」そう言って婦人は冷蔵庫から大きな肉の塊を取り出した。といっても、生の肉ではない。彼女が手にしているのは、大きな腿肉のベーコンである。（注：イギリスでは塊のままいるも、スライス同様に売られている。）今、ストレンジ婦人が冷蔵庫から取り出したのは、血のしたたるような腿肉のベーコン塊に他ならなかった。さぁて、このベーコンを夫人がどうしたか。まず彼女は、その真空パックの袋を破り、中の肉をとりだした。（当たり前か・・・）そうして、次に彼女はひきだしから大きなアルミホイルを取り出すと、適当にそれを破きくだんのベーコンの塊をそのまますっかり包んでしまった。それから、それを直ちにオーヴンにほうりこむと「さ、これでよし！」といって、この料理の終了を宣言してしまったのである。　つまり、この肉に関しては、要するに「何もしない」のである。ただアルミホイルに包んで、オーヴンで一時間ほど焼くだけ。はっは、なんという簡単なお料理であろうか。「こいつぁ、つまり牧童たちの料理だな。」と、そのとき私はひそかに思った。　野菜たちは大きな鍋の中で、いぜんとしてぐつぐつとゆでられている。「さてと、この間にパセリ入りホワイトソースをつくりましょう。」といって夫人はフライパンに火をかけた。　ふつう、ホワイトソースを作るには、バターと少しのサラダオイルを弱弱と熱しそこへ小麦粉をいれて、あくまでも焦がさぬよう白い色を損なわぬよう、注意の上注意して、しかもグルテンの粘りがなくなるまで優しくいためる。そうしておいて、牛乳を沸騰直前まで熱し、バターを小麦粉のルーの中にそろそろ入れてだまにならないように静かにかき混ぜる、とかいうようなフランス的な手法が用いられる。しかし、この時わたしが目撃したイギリス的方法は、このような迂遠な注意深さとは無縁の直截といえば直截、野蛮といえば野蛮な、驚くべきやり方であった。グルテンの粘りもクソもあるものか、フライパンにバターをいれ、溶けたらすぐ小麦粉をいれ、ざっとまぜたらそのまま、冷たいまま牛乳をジャーッといれてしまい、塩コショウを振る、アーア、そんなことしたら、ごとごとのダマダマになっちゃうじゃないか、と思うまもなく、当然この不可思議なる混合物はゴットゴトのダッマダマになってしまった。そら、みたことか、そんなにしちゃって、とあきれていると、ストレンジ夫人は少しも驚く気配がなく、かねて用意の電機ミキサーをとりだし、こいうを委細かまわずガーッとかき回してしまった。おいおいそんなやりかたがあるものか、とおもっているところに、夫人の娘がやってきて、「まあ、お母さんたら・・・・・」と母親のイギリス的やり口をひなんし、それから私の方に向き直って「こういう、乱暴なやりかたは本当じゃないのよ、まあ、目をつぶっていてね。」と肩をすくめて見せるのだった。けれども「ナーニ、たいしてかわりゃしないわよ。」と夫人は意気軒高である。　しかし、文明の力をおそろしい。さしものダマダマも、軽快なモーター音とともに、いつしか強制的かつ物理的に分解されて、ぜんたいねっとりとした白い糊のような、ホワイトソースが出来上がった。そこへ、パセリのみじん切りを加えて完成したのである。当然それは粉臭い。けれども、そんなことがなんだというのだ、というのが、イギリス式の心意気というものではあるまいか。かくして、一応本日の夕食の準備は済んだ。肉が焼けるまで、まだ少し暇がありそうだ。ストレンジ夫人はこの間に、別の仕事にとりかかった。まずはデザートのようい。「English Pddinｇ」というのが、この日のデザートであったが、これまた実に簡単なもので、こんな具合である。　すなわち、卵を２個、小麦粉１２５ｇ　そこへさらにベーキングパウダーを茶さじ１杯ほど程度追加しておく。溶かしたバターと砂糖、これも同じく１２５ｇずつ、一つまみの塩、これらをボールのなかでぐるぐると混ぜて、バターを縫ったプディング型に流し込み、そのままオーヴンにいれてやくこと、１６０度で３０－４０分。できあがったものは、まあ巨大な「甘食」とおもえばよい。食べるときは適当に切り分けて、ジャムや甘いシロップをかけて食べる。「このプディングもオーヴンにいれてしまうと、つぎにストレンジ夫人は「りんごのソース」とういうものにとりかかった。これがまた、簡単無比なものだ。庭にでて、木にいくらもなっているアップルを５，６個取ってくる。芯のところだけ取って、後は皮ごとごろごろと切り、半カップほどのごく少量の水を加えて、そのまま鍋で煮る。砂糖もなにも加えない。そうしておいて、りんごに火が通ったら、アルミの丈夫な裏こし器で力に任せてすりつぶし、それでおしまいである。出来上がったものは薄緑色のどろどろしたもので、どう考えてもおいしそうなものではない。これは朝ごはんのミューズリーにかけて食べるそうだ。それから、ストレンジ夫人は矢継ぎ早にもうひとつのお菓子に取り掛かった。今度は「ココア　クリスピー」というものだそうであるが、これまた赤子の手をひねるような簡単ならちもないお菓子なのだった。まず、用意するものは　ライスクリスピーこれは「お米のポップコーン」また、表現を換えれば、雛アラレのさとうをはがしたもの、といってもよい。適当な鍋にパターと砂糖を溶かして混ぜ、そこへ、くだんのライスクリスピーをほうりこむ。さらに、その上にココアの粉を加えて、ゆるやかに加熱しながらよく混ぜ、それをバットに平にのして、そのままれいぞうこにいれ、冷やして固める。じつにどうも、簡単である。秘訣のようなものを持ちだすまでもない。こうして一時間がたった。野菜は十分に茹り上がり、肉もオーヴンの中ですっかり焼きあがった。夕食のしたくはこれで完了である。　　　　　　　　　　　　　　ここからは、ちょっと学ぶべきものあり。食堂のほうでは食卓の準備にかかっている。イギリス人は食事そのものには要するに大して意をもちいないけれど、食卓の雰囲気を作ることにかけては、決して他国人におとることはない。食卓の、静かな、落ち着いた空気の中で友人や家族がくつろいで談話を交わす、というそのことに実は一番の大きな目的があるからである。どれもきわめて簡単な料理ばかりである。そして、質素でもある。手間や秘訣やなにかこう食道楽的趣味や装飾というようなものとは、ついに無縁の食卓であることはまちがいない。フランス人や日本人の食味水準からすれば、それはたしかに「手抜きな」「美味しくない」食事というほかないであろう。しかし、この夜、５人のイギリス人と一人の日本人が囲んだ食卓のひとときは、愉快に気持ちよく過ぎていった。穏やかな、しかしユーモラスな会話と、いつも他人を思いやる謙譲の心と、控え目な善意に彩られていたからである。たしかに、ホワイトソースは粉っぽかったし、ローストべーコンは塩辛いばかりで、ゆですぎた野菜には特に掬すべき味もなかったが、それでもなお、イギリスの食卓には、私たちの国ではもうのとうの昔にうしなわれてしまった、なにか美しい「あじわい」が残っているのであった。どこかで、「味わう」ことを忘れて、　その結果、（出力不全の問題も関係しているかもしれないが、）「すぐ切れる」今の日本になってしまった。同じ島国だが、とても保守的な日常を送っているイギリス人、あたらしいもの好き、コピーが得意の日本人。イギリスを含めたヨーロッパに流れるゆったりした時間、を　　日本にも、　日本の日常のにも、と　思ってしまう。

2007.09.08

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朝から、苦笑いその１

「イギリス人の食卓」林望　　ストランジ家の食卓より「このナイフはヒジョーによく切れるので、危ないから気をつけて」そう言って婦人が差し出したナイフは、驚いたことに普通の食卓で使うテーブルナイフでしかもその刃先がぼっきり折れていた。確かにやすりで研いだと見えて、少し葉が付いていたが、私たちの包丁の感覚からすると、全く刃がないというに等しかった。それで、今から料理をつくるにつき、ジャガイモの皮をむけというわけなのだ。「くれぐれもも手を切らないように、このジャガイモの皮をむいて頂戴。」かかる刃のないナイフで、ジャガイモの皮をむくのはむしろ力仕事というべく、それで手を切ることは到底不可能のように思われた。それでも私はこの力ばかりいる理不尽な下ごしらえにせいを出して、まもなくジャガイモとにんじんの皮をむき終わった。傍らではこれまた一向にきれそうもない古ぼけたナイフで大きなスエードの皮をむき、渾身の力を込めてサイコロに切っているのだった。こうして野菜の下ごしらえができあがると、今度はそれを大きな鍋に入れ、少しの塩を加えて、延々とゆで始めた。（ふーむ、なるほど、ここまでは、イギリス料理の定石どおりだな。）つづく。

2007.09.06

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