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眠れない夜のおつまみ

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2005/11/20
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カテゴリ:小説
俺は深く短い眠りから目が覚めて、気分が良かった。
熟睡とは質だと初めて思った。
リビングへ行くと2人の子供は昼寝をしており、ユリコが真剣な顔をして、あの紙の山を一枚づつ読んでいた。
俺が隣に座るまで気づかないくらいユリコは熱中して読んでいた。
「あ・・・あなた。起きたのね。何か食べる?」
と聞くので
「ああ。」
とだけ答えた。
ユリコは続きが読みたそうに未練いっぱいな様子で立ち上がるとキッチンへ向かった。
5分も経たないうちに俺の目の前にご飯と味噌汁、玉子焼きに肉じゃがが並べられた。
「残り物だけど。」
少しだけ悲しげにユリコは言った。
「いいよ。なんでも。」
と言い俺は食べ始めるとユリコはまた読み始めた。
「なぁ・・・。何が書いてあるんだ?」
「これ、小説よ。」
小説?
俺は今までそんなもの一度だって書いたことない。
しかも、読書は苦手な部類だ。
どちらかと言えばユリコの方がよく本を読んでいる。
「面白いのか?」
「面白いわ。とても。すごいわ。」
それから1時間後、一気に読み終えたユリコは背伸びをすると俺にこう言った。
「これ、投稿してみない?」
「はぁ?!」
俺はそう答えるしかなかった。
「賞取れるかもよ。」
嘘だろ。
そんな簡単に取れやしないだろう。
呆れた顔でユリコを見ていると
「いいわ。私が清書して投稿しておいてあげる。」
と嬉しそうに言った。

投稿なんてしていた事などすっかり忘れて1ヶ月が過ぎた。
俺は職場復帰もし、また以前のようにバリバリ働いていた。
そう、俺が働かなきゃ誰が働く。
時折、呪文のように頭の中に湧いてくる言葉だ。
身体の調子もいい。
あの時の変な体験も頭の片隅に追いやられてしまっていた。
残業して帰宅するとユリコが玄関にすっ飛んできた。
「ただいま。」
と、俺は少し驚いて間抜けな声で言った。
「あなた、これ。」
とユリコが差し出したのは1通の封筒だった。
差出人は出版社からだった。
しかも誰でも知っている大手の出版社だ。
何で?
「読んでみて。」
とユリコは急かす様に言う。
俺は疲れた頭でしぶしぶ目を通し始めた。



このたびは、当社の 第12回 新人大賞 に投稿有難うございました。
今回、厳密な審査の結果、あなたの作品が最優秀賞に決定いたしました。
よって、授賞式のご連絡です。



え?何?
サイユウシュウショウって?
ぽかんとして空を見つめていると
「あなた、退院した日に書いた小説、私が投稿したの。思い出してよ。ねぇ。」
と興奮してユリコは俺の身体を揺さぶりながら言った。
ああ。
ああ。思い出した。
あの出来事。
だからと言って、あれは俺の力でもなんでもない。
ただ、降って来る文字を拾っただけなのだ。
なのに、こんなことになるなんて。
俺は動揺した。
「あなた、凄い!作家よ。」
ユリコは浮かれて俺の動揺に気づきもしない。
だんだん、そんなユリコの姿に苛立って
「あれは、俺が書いたんじゃない。勝手に降って来たんだ。作家デビューしたって次の作品なんて書けやしない。」
と声を荒げて言葉を吐き切るように言った。
「あなた・・・。」
はしゃいでいたユリコは一転して悲しげな顔になった。



授賞式は日曜日だった為、会社は休まなくて済んでほっとしていた。
馬鹿な俺は何も考えていなかった。
そう、自分で書いた小説すら読んでいなかった。
内容なんて知らない。
もともと読書なんてあまりしない。
最優秀賞にはガラスで出来たトロフィーと賞金100万が授与された。
賞金がもらえるとは思わなかった。
そして、これがニュースで流れる事も全く知らなかった。
俺はコメントも何も考えていなかった。

「受賞して今のお気持ちは?」
「はぁ、うれしいです。」

「想像もつかないストーリー展開ですが、構想にかなり時間はかかりましたか?」
「・・・・・。あの、降って来るんです。」
「降って来るとは?天からですか?」
記者達に笑いが漏れる。
「そうです。」

聞かれるがままに俺はひょうひょうと答えていた。
そんな態度が今思えば悪かったのか、作家達からは冷ややかな目で見られた。
マスコミには「前世はモーツアルトか?天才作家の誕生」などと面白おかしく書き立てられた。
会社では一躍有名人になり、休憩時間に俺の部署に知らない人が俺の本を持ってサインをねだりに来るほどだ。
出版会社とは、1年契約が自動的に交わされ、この1年は他社との契約はしない、という条件が付いていた。
早速、俺に担当というものが付いて、次作の話になったが、本当にいつ出来るかわからない、とごり押しして納得してもらった。
この態度も生意気だと思うが、仕方ないのだ。
多分、半泣き状態になっていたと思う。
情けない。
だけど、仕方ないじゃないか。
本当のことなのだから。
俺は、なるべく今までのように仕事に没頭しようとした。



                            <つづく>

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Last updated  2005/11/21 01:19:19 AM
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