563413 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

小市民の一日

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

2005年08月09日
XML
カテゴリ:主に法律関連
<よくわからないが批判に応える>

 以前,共謀罪について扱いました。↓http://plaza.rakuten.co.jp/shousimin/diary/200507260000/

 この記事に対して,デンパ系ブログ「kitanoのアレ」さん(http://d.hatena.ne.jp/kitano/20050809/p1)からTBを賜りました。
 早速訪問してみますと,自分の記事について

 「団体は二名以上であるとの政府見解を無視して団体性要件による歯止めが機能するから大丈夫だと安心する変な方。」

 というなんだか意味不明のコメントが付せられておりました。
 
 さすがに「変な方」なんていわれてしまうと困ってしまうのですが(確かにへそ曲がりなところがあるからへんかもしれないけど(w)),一応反論します。(
なお,あちらのブログのコメント欄は例の如く閉鎖されてましたので,わざわざ自分のブログをつかって反論しなければならない面倒な事態になっています。左翼の人間って大体こうですよね)


<犯罪が成立するには構成要件の充足が必要>

 およそ犯罪が成立するには,法律が定める構成要件の充足がなければなりません。
 構成要件とは,まぁ,簡単に言えば「犯罪が成立するための必要条件」ということです。

 そこで,件の共謀罪の構成要件を見てみましょう。

===========
 (組織的な犯罪の共謀)             
第六条の二 
 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪 五年以下の懲役又は禁錮                   
 二 長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められている罪 二年以下の懲役又は禁錮     
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、第三条第二項に規定する目的で行われるものの遂行を共謀した者も、前項と同様とする。
===========       

 以上から共謀罪の構成要件は次のようなものであることが判明します。条文からは直接抽出しにくいですが,要約すると次のようなことになります。

 1:犯罪を行うことが,団体の目的に反しない集団で,かつその団体の意思決定に従って,犯罪を実行に移すようなグループが内部に存在するような団体が
 2:1号又は2号に掲げる罪の共謀をなすこと

 以上の「すべて」(強調)の要件が充足されない限り,共謀罪は「絶対に」(強調)成立しません。
 
 さて,批判に応えます。

 確かに,法務省当局の見解では「団体」とは「2人以上の集団」であるとされています。

 平成17年7月12日 衆議院法務委員会における大林法務省刑事局長の答弁
===========
 「この法案により新設する組織的な犯罪の共謀罪は、あくまで二人以上の者が重大かつ組織的な犯罪を実行しようと共謀する行為を処罰するものでございまして、(以下略))」
===========

 しかし,これは上の構成要件を見ていただければわかりますが,要件1の「団体」という語句について,「団体とは何ぞや」という説明したにとどまります。
 共謀罪が成立するためにはさらにその団体が「犯罪を行うことが,団体の目的に反しない集団で,かつその団体の意思決定に従って,犯罪を実行に移すようなグループが内部に存在するような団体」でなければなりません。

 前回の自分の記事で「2人以上なら団体」ということを書かなかった理由は,それが共謀罪の構成要件解釈において,「重要でなかったから」(強調)です。
 仮にある団体が「団体」とされても,では,その団体ははたして「共謀罪が適用される団体」かどうか。ここが共謀罪の解釈で最も重要なところで,かつ国会の審議を見ればわかるように,この法案の「枢要を成す」(強調)ところです。
 繰り返えしますが,法文上の要件では,共謀罪が成立するためには,「2人以上」という要件が満たされただけでは「全く,全然」(強調)不十分です。さらにその団体において「犯罪を行うことが,団体の目的に反しない集団で,かつその団体の意思決定に従って,犯罪を実行に移すようなグループが内部に存在するような団体」であること,という要件が充足されなければ,構成要件該当性が欠けるため,共謀罪はそもそも適用されません。
 それが法律なんです。要件をすべて充足しない限り犯罪は成立しない。法治国家の基本的ルールです。

 「団体性要件による歯止めが機能するから大丈夫だと安心される変な方」とされていますが,そうですよ。そういう歯止めがあるから「こそ」(強調)安心できるんじゃないですか?
 逆に,そういう歯止めがなく,「二人以上のものが徒党を組んだら即座に共謀罪の適用対象」というんだったら,私だってこの法案に反対します。でも,そういう法律ですか,この共謀罪は?違うでしょう?
 それにしても,「2人以上」=「団体」=共謀罪適用,というのは本当に驚くべき論理力です。いまどき小学生でもこんな単純思考はしないでしょうに。道理で「ア~!共謀罪が適用されるぅ~怖いよ~」となっちゃうわけです。私としては,そっちのほうがよっぽど「変な人」という名を称するに相応しいと思いますが(w というよりは,「不勉強な方」,と名づけたほうが適切ですかね。

 kitanoさんという方が一体どういう方か存じ上げませんが,ことさらに一部の,しかも要件とさえいえないようなただの「文言」の意義を取り上げて「危険だ,危険だ」と騒ぎ立てるのは無責任極まりないことです。
 法律的解釈にたけておられないようですから,法律を知らない,あるいは少しならかじったことがある程度の方とお見受けしますが,そのようないわゆる「素人」の方が,このようないいかげんな,到底法解釈とはいえないような曲解を示した記事を公にするなどと,いい加減極まりないことであり,ブロガーとしての基本的適格を著しく欠缺しているといわざるをえません。
 っていうか,そもそも条文さえ読んでらっしゃらないようですから,もうその段階で,我々法学徒からみるとナンセンスなんですがね。
 法解釈は条文が命。「どの学者はこういってる」だとか,「あの新聞の社説はこういっている」なんてことは参考にさえなりません。
 法律のネタを扱うんだったら,せめて条文くらいはしっかりと見てほしいものです。
 あとは,「共謀」とは何かを示した練馬事件判決。この実務においてもっとも重要視されている最高の判例も御覧になってないようです。
 関連する判例のうち,こんな基本的かつ重要な判例さえ読まないで,「共謀」とは何かについて予断と偏見に満ち満ちた意見を公にする,ことここに至っては嘲笑するよりほかないですね。笑っちゃいます。
 まぁ,基礎の基礎の基礎の基礎から勉強してきなさい,とそういうことです。
 
 ネットという公空間で主張を展開される以上,「素人だから間違えてもしようがない」などという言い訳は通用しません。
 ある人がブログを公開すれば,その人が普段どのようなありふれた生活をしていていようとも,れっきとした「言論人」。そうである以上,人並み以上の勉強が必要であることをしっかりと明記すべきでしょう。
 大いに反面教師とさせていただきます。

 今回のTBで,私は一般の法律を知らない方々に対して,正確な情報を伝える義務が法学徒にはあることを知りました。
 今後,そのような法学徒として,可能な限り奉仕したいと思っております。

 それにしても,新聞の社説を法律解釈の資料にしている人なんて始めて見たな。笑いました。

※加筆のたびにどんどん嘲笑の度合いを増していってますが,なんかもうそれくらい呆れています。デンパの相手は面白いが疲れるかも・・・





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年08月09日 23時25分32秒
コメント(3) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.