1978702 ランダム
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灯台

灯台

虎になりたい

なるためのクスリがあるという―――

鳥は自分の影をみつけようとするため、太陽に接近くように

イカロス、・・・汝、上昇する者よ、容易にはみえぬ影よ、

現世の執着が泥のようにこびりつき、あかるむ霧のなか、

体臭の臓物をもちし罪びとは蝋と共にくずれさる

漢方薬・ネット検索・古書物を読み漁りし知識人に頼るが

これといった芳しい収穫はない

いたるところに仕掛けられた罠、デマ、メスの一閃

中華料理店・ゲテ物の店・叙事詩的悲哀に濡れている牡蛎の殻

心当たりのありそうなところを駆けずり回ってみたが

じっさい 過ぎるのは歳月

はかない 歳月の夢だった―――

・・・叡知者たちは知る/解剖のにおい、

縫合のあと、神のない夜明けの光

やがて少しずつ知る、色彩の蒸発



しかし星のめぐるとき、神意が降り、カメラマンから

郵便ポストに予期せぬ吉報が届いた

<その街は、揺るぎない光と影の交錯によって築きあげられた、

まぼろしの蜥蜴状の熱帯雨林>

便箋から、かすかに鈴蘭のかおりがし、未成熟な解読不能の、

ああ それはマリファナ・・・! 阿片、ホルマリン漬け

―――魅惑的な真昼の幻だったのだろうか

それとはうらはらに じつに素っ気ない、あこがれと無縁に死にゆく者たち

温められた不穏な空気、ヒートアイリング現象、陽炎、逃げ水、―――

けずりとられた遺跡で私は定期券をひろう

無駄な贅肉をそぎ落とすが、ペースメーカーほど積極的ではない擬態的歩行

私を満たしてくれるのは虎、軽くて疾きしもの・・・、

散乱したエネルギー、―――秘境



身支度をととのえ現地へと飛んだ

因果律、蓋然性、

・・・少年は19××年、某動物園の檻からまだ脱出できていない・・・

バイオリズム、ふしぎな昂揚

、紀元前7世紀のアッシリア王アッシュールバニパルの宮廷図書館へと

立ち入りを許されたようなバグ/時空の裂け目

錬金術師、盗賊、宇宙ノ電波

「試験管のなかに斜陽が色をつけた瞬間に、私は想った、

虎になりたい、あの、日輪の毛なみを保持したい―――」

あらかじめ、日本大使館にTellを入れておき、空港には迎え、賓客

・・・Journalist、Professor、Expert、―――いかがわしい肩書きだが、

銅版の上で粘土をぬりつける修復作業、名誉、というものはいつでも利用できる

現地の特に有能なガイドを紹介され、ハイパワーエンジンの勝利・・・!

4WDを運転しながらハンバーガーを喰い、追跡する

暗号のMission/スパイのように

蜿蜒とつづくでこぼこ道に汗がおちた



現地のガイド;キャンプしている折りに

日本女性について芸者、舞妓/しいては忍者、武士、不治の山、天麩羅

「そんなことより・・・!」と私は窘め、ウィジャボードの

・・・オートマテイスム交霊術をどう思うか、シャーマンの脱魂・憑依をどう思うか

巨石文明、古代の破られた楽譜 弦の切れたヴァイオリン文明

「ああ、野火のようにささくれが広がり、・・・昨日4WDの窓ガラスを割った

あの石のような一撃は/血を止血する作用―――」

草の上に おちている砂をつかむと葡萄状の漿がしたたる

ばさアツ と 巨大な鴉が舞い降りる一日目



読みさしの頁から立ち昇るひと文字ひと文字の幻

奧妙不測のしるしにして、ナルキッソスの泉に恋をする

おそらくこの組み合わせは、衒学的知識人、階級意識、特権制度

とけるように 甘い蜜―――
 
刺されて腫れる蜂の痛覚をしるまでの怠惰 それは「見えない」し

「把握できない」が、幾層にも積み重ねられた

・・・調整剤、・・・発色剤、<ここは円周率の迷宮>

陽を遮るように L字の腕を向けたとき、長い佩剣≪はいけん≫のような手

黒曜石の外套をきたような、筋肉質の褐色の男が 

「おうい・・・! おうい・・・」 

と私たちの三日目のキャンプ地にむけて

シャッターが下ろされていた、―――Camera



その頃にはもう ヒマラヤの青いケシ、BLUE ROSE

―――引き裂かれる時点において、空虚であるのだが、

うだった気候と熱帯樹林に囲まれ、翡翠いろ、アレキサンドライトの金褐色、

色とりどりのみごとな衣装と、太陽の照り映えた朱鷺≪とき≫いろの嘴

憂欝な未来、寡黙な饒舌・・・ 何故塔がいるだろう、鳥はそこで憩うているのに、

とても悲しい 眼をして ・・・レントゲン写真のように・・・

私たちをみつめている 噫・・・! 私の名をさけて、すりぬけていく

エメラルド・グリィーンの風よ

ウィルスの恐れある蚊はなぜうまれ、見たこともない毒蛇が蔑まれ

ここにいないことによって牛頭人身になり、半ニン半バとなり、

噫! 慥かに、晦渋な諧謔に染まった



焚き火をしながら車座になり星をながめ

アルテミスの天体装置 枕もとの灯りのように静かに

・・・いと浄らかなよろこびは百千≪ももち≫のネックレェース

珈琲をすすり、ピーナッツやコーラの実にバイアグラをかじり、ときおり煙草を吸い

ぽつりぽつりと「寸鉄の言、知恵を深こうするように花が置かれ、

アネモイが優雅に葡萄のくされる血管を破壊し、いたずらな異国の香でも焚きながら

怪力のごとく見ゆれども、むしり取ったのは ・・・ええ、古臭くなったカレンダー」

私はいかなる悪都、ソドムとゴモラであろうとも、日々ふくよかさとつつしみに

両の眼をかたく瞑じてみたかった ・・・私はぽつりとそう洩らした・・・

蜥蜴のような背びれ ―――匍うもの、影をなくしたもの、

そしてそれは夙うの昔に 分離していたのだ―――



嫉妬、憎悪、殺人、罪と罰、呪い

やがてわれわれの世界は亡ぶだろう、核兵器、細菌兵器、それ、糞尿の地獄

無数の白骨と、弾丸と、ウラニュームの放射能がみえ、繃帯のうつろな眼のむこうには

遺伝子の突然変異がみえ、愚かでつつましいむらさき色のひと粒の稀少な石とばかり

口では言えない別れの夜の月を、人間喜劇に涵すだろう・・・・・・・・・。

白い木綿の頭巾をするするとほどけば、部分的透明人間の誕生だ、

不思議な繃帯が炎熱にさらされ、世界中に、あやまちと徳も、アア・・・!

なにもかも蝕みつくすだろう。ほどけるごとに絵巻物はやぶれ、籠の中に入れる 

OASISU居住区 ・・・数千巻にも匹敵するあじわい深い一瞬を・・・

灰色にかがやくあおいメルヒェンへと変えるのだ



ウィルス・テロ そして科学者たちの暴走と便利化の波

何を逐うべきか知らずして、過労による神経症、意地悪な目つき、

抑うつの長く続いた日々の代償、コンディションが日ごとに悪くなる中で

目隠しさせられながら、たよりない手を握るような、人間関係をおかしくした元凶

SHINPO・・・! 皆、不幸な物語づくりがお得意だ

最後通牒、いずれ異次元の扉をあけ、好き放題に時間を行き来するようになる、

われわれの寿命、肉体的特徴、すべて煉瓦石のハンマア・プレス粉々にうちくだかれ

担架にはむくれた土気色の有名人! (あの人も、あの人も、あの人も・・・!

みんな傲慢だ、大喰らいの駄目な豚! しかしそこへ天上の楽音とおぼしき

ふしぎにあまいメロディーがながれ、肌理のあらい粒子にけずりとられた私自身が甦る

―――動植物たちが混雑をつくっている、支配者という慄きの造形

「彼等は買われるのである、新紙幣で! 循環した詠嘆で!」

誓いを果さんとする意志 ・・・神々があたえた、人類への罰・・・

身を左右に動かすこともできない、おまえは鞭でうたれ、蠅たたきで顔をたたかれる、

どうだおまえは売り物だ・・・! おまえがしてきた、さまざまな罪を後悔しても遅い、

誰もお前を救わない、私はおまえに唾を吐きかけ、小便をかける



あたらしいトウキョウ・シティー! ここでは遠方の運搬もきかない 

売り物の収容施設もない、値札の付け方も、商売の仕方もまだまだ三流である

私はあたらしい祖国建設のヒト代表・・・! 減らず口でこびへつらったものは、

このあたらしい地獄で狩りをされる、私はハンモックに寝転がりながら

日々くずれてゆく巨石の街の深い重なりをする彷徨者、流れゆく者、うつろいゆく者、

―――私は能天気な国づくりを推進する、「その時に私は殺されるかも知れない/

だが、私は同胞に唾をはきかけた、小便をかけた、・・・私自身の罪だ、

私は彼等と交渉し、人類のあたらしい国、あたらしい未来、武器をすてよ、平和を愛せよ、

いまこそ、謀反者! ああ、殺すがよい、私・・・、知識人を!」

されど、地上を隈無く埋め尽くすであろう、あたらしい支配者、統治者よ、

ためらうなかれ、のがすなかれ、この美談こそ平和的解決策―――



かすかにうかぶ 星達のPoem

神話の語り部たちよ

けだもののにおい 血のにおいのしないなかを傷を負った虎があるいている

つやめいた葉のにおい、藁のにおい、しめっぽく心をやさしくする母のような森の胸

(なぜそれが、いけないことなのだろう・・・!) 虎になることが―――

皆 未開の奥地までやって来て、しかも命の危険もかえりみず、

追い求めたがる心理を知りたがった。/多くの都会人達は私が狂っていると言い、

精神の病だと決めつけた、「でも実際狂っているのは興味本位なメディア、

ましてや夜に女を買い、ビールを飲まねば眠れない男を生みだし、

神の意志に背き、愛の何たるかを忘れたのはわれわれ―――」

一年じゅう 霧が覆って晴れることのない秘境

カレンダー人種、時計人種、ハードワーカーという目的をうしなった車輪、

いったいそいつらを何故狂っているといわない ・・・それに比べれば・・・

虎になりたいなど、金鍍金を剥がす鉛のようなもの



やがて私たちは食料や、飲み物をモーター・ボートに積載し、

三十人ほどの団体で大腿部、―――ピラニアや、鰐、蛇のいる河を遡っていき、

深夜の酒をまじえた作戦会議のなかで、

ふるい地図と、秘境研究の第一人者のマルノミヤ博士の推理でもって

輪をちぢめるように その距離はちぢまっていった

予定調和の警告とばかり、食糧はいくどか底をつきかけたが 

そのたびに現地のガイドが、野草をつみ、また獣を狩り、川釣りを教えてくれた

どちらかといえば ―――優雅な冒険 装飾されたおまえのエロス

やがて川幅はせばまっていき、私たちは上陸を余儀なくされた

荷物をそれぞれ分担でかかえながら歩をすすめた

おどろおどろしい石像がならび、みな、うそのように楽しげな死相がうかび、

私は何度も ねむたい眼を こすった

そして よく見たいが為に 顔を洗顔した―――



どこかで異国情緒にみちた笛の音色がきこえ、

それは人の住んでいる証のように思えたが(樹から樹へとわたりあるく猿にとって、

それがいかなる村であろうとも細心の注意 (武装せし神の兵、

いざとなれば武器をもって戦闘に挑む外ないが、むやみな争いは避けたい

そのなかで、体力以上に精神を消耗し、・・・何人かの脱落者をうんだ

「すまない、―――これ以上は君たちだけで行ってくれ」

人気もなくさびしいところでの別れは辛かったが、―――とうとう、系統樹の地下茎

底知れぬ双丘、人類未踏のふかい谷へと到り着く 

耳鳴りのないところへ 吐き気のないところへ

ひたすらに そら耳のように くぐりぬけ そして地下へとつづく ほら穴をぬけ

気がつくと私たちは ふしぎな村へと辿り着いていた

(いやそれさえ ゆめうつつで、幻なのか現なのか―――

ほら穴を抜けたあたりから くらくら いい気持ちになっていたのだ



振り返ると 博士や研究者 トレジャー・ハンターも消えていた

ガイドもいなくなっていたし、カメラマンも見当たらなかった

私はいつのまにか服まで脱いで 水のなかを ちゃぷちゃぷと

水面をさがわせ歩いていた ―――そこには世紀の大発見となる古代の墓もあったが

それは生存競争 適者生存 ハイ・テクノロジーの立派な世紀末的末路かも知れない

私は雨のような夜明けをみながら ・・・言葉のないイメージ/残像/その受像器

それらが白になり 赤になり 黒になり また青に戻っていく ! 

その信号機のような空は これはあくまで夢の中だと伝えている

しかし それは無意味だ! なぜなら だれもが太陽に

ならなければいけない時代―――



はたしてそれは正しい光景だったのか自信はないが

答えから率直に言えば ・・・たしかに私は虎になった・・・

しかし虎であることはすぐに忘れた なぜなら 人間の記憶を忘れたからだ

やがて私は一匹の虎になって おびただしい数の光のなかで見世物になるだろう

いつのまにか、私の世界は洞窟ではなく、村でもなく、

そう テレビが待っている ―――光反する方に跳≪は≫ぬれば、

視聴率と愛想笑い 私はまだ手や足が人だ、顔は見ていないが、

おそらくそれは虎なのだろう (でなければ、私は国の実験材料になる

これからおおきな見世物小屋の時間 レディースアンジェントルメン!

でも 私には もう意識がない それでもカウントをいっしょにとなえる

ロシアン・ルーレットみたいに 三秒前 二秒前 一秒前・・・・・・・・・。



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