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灯台

灯台

女を愛するということ

背中の予感

彼女は意識している

額の狭い

つきつめた眼光

もう一人の僕の


   夜明け......いずれかの口の前に

   泣くか?

 “夜風”


そこにいる
ちゃぶだい
卓袱台

逆向けの井戸

風・馬・牧場

ちがう、

“遊園地のメリーゴウラウンド”

......と秋。
あや               さが
奇しい絵図そこに開きて索
  ひら
す。繙く......ナマ爪

画鋲の載った舌

口腔。


   やさしい姿を、眠ったまま残し

              ―――花。

 は何処へ......知り過ぎている

           豚の足、洗濯板、 

            夜の秘めごとよ


醜い

便器に触れたような髪。

みじめにカメラを向ける十代のロマンスの胸
   ひと
(その妻はいま四十代です)
さらさ
表白れ、

沢庵臭い口がもう嫌なのだ。

胸やけがする、

胃もたれがする、

すでに若き日の過ち

という......毒ガスを吸いこんでいる。
     ひと
でもこの妻は言った。――


   男の先入観......洗濯物は

   料理は?

 “ビールの栓をポンッと抜くのは”

  
ずっと続いていたの長い廊下

歩いて歩いて歩きまくってきた

下品なわたしの足取り......

ダイエット・エクササイズ

健康番組。
    しんじつ
でも“聖書に触れた”

わたしは子供を育てた、

嫌だったけれどあなたに抱かれた、

(若い娘がいいんでしょ、尻のキュッとした、

花弁みたいなおっぱい。)


     女は賢く。又。雨に濡れ。

              ―――花。

 は何処へ......知り過ぎている

           女の口、女の手、 

            頬張っている口


わたしは......実は

まだあなたより若い。

「ひたすらに謝りたいと願うばかりだ!」

べりべりべり(と、捲る)

顔面部、ふかした馬鈴薯の、

つるりと剥ける感覚で。

「見て、御主人さま、

あなたの愛した女の本当の姿!」

......下腹部を撫でると

生命の気配がする

この膝の向こうの本当に透明なものに触れたとき、

無果木のようにじゅくじゅくしていた

醜くて、本当に美しかったもの......


   飛び出せば......日が往く

   女の素顔?

 “剥げ落ちていくタイルの向こう”


いいえ、狩りの最中の銀狐は知らない

あれが本当に醜い女

ついに感想をもてなかった・・・・・・

ねえ、もういいでしょ、

別れましょう、一瞬の闇が繋がる

身重のわたしに浮気したご主人さま、

わたしは両棲類じゃない、細胞分裂じゃない、

......好きだ
うろた
狼狽える自分、繕いきれないことをわかりつつ言う、

好きだ、窮鼠猫を噛む......好きだ

(肩に触れる)本当はこうされたかったんだろう、皮

 膚の陶酔、薄い舌をはじくほどの生臭い水、好きだ
               わき
 生臭い下肢、草がしぶく腋も、


 甘痒いと言ったね。攫われた、と。

             ―――ちくび。

 は何処へ......知り過ぎている

           雨の降る日、林檎

             を齧ったんだ。


よして(絶えざる緊張、やはらかさ

が。)もはや悲しい一つの悲願

いいじゃないか、血を流したって

耳を舐められるのが好きなんだろう、初雪のように
     さんごくず
その肌を珊瑚屑のように染めて。

不細工だと思われていたのよ、......醜い

と。その上、浮気までされて。

(でも、背中に刷毛は流れて)好きだ

あのあはひまなざしで。雨戸の閉められた部屋

で。土塀のにほひのする蔵のなかで。

......好きだ

どうして肉体を抒情しなかったんだろう、

どうしてチャタレイ夫人の恋人のように。


   V字開脚......あえぐ

   女の素顔?

 “身を持ってわからせる男の砲塁”


ねぇいまヨーグルトを舐めている君

スプーンですくうような上目遣いが好きだ。

......目をあげると、死ぬほど笑いたくなる
スリーピングバック
睡眠袋。「いまでも君に恋をすることがある」

(嘘。)でも目を丸くしながら、

赤いリボンをはずしたような表情はどうだい、

心に従わない頬っぺたににほふ、動悸の早い薔薇


       首っ玉にかじりついて。

             ―――くぐもり。

 は何処へ......知り過ぎている

     でも、もはやためらうことなく、

                突っ込む。


あてもなくさまよってきたのに

もろもろの神を視......「ああ、もっと、もっと」

ただ一発の小銃でもよかった、

行きずりの恋のように(と女なら誰でも、)
    キャベツ
潤滑液が玉菜みたいに見える

あなたのそれだって、茄子みたいに見える

.....すべての物に漂っていた
   ふきあげ
芝生の噴泉。ぬるぬるとまとわりつく暗がりのなかで、

突いて.....こねたり、回したり。


   深々と差し込んで......あえぐ

   身をよじる?
     マッチ
 “たとえ燐寸が洗面器の中へ消えようと”


出したの? むしろ甘くさえ感じられる瞬間に

自分は泣いていた.....

良心が疼いてきた。それは“渇き”

種子を吐かねば生きられぬのか、

.....自分は違う、稲妻とはちがふ。

しかしこのうねるような胎動、トマトの中で、

無数のさくらんぼが落ちていると思った。

......好きだ

ああ、そう言うだけで指先まで満たされてゆく、

甘い声。珈琲の秘密。力任せの現場。

二回戦。三回戦へ......と。行かなくても

「満たされている」と言ったおまえ

おまえは。――マリアそのものであった


       全エネルギーを放出し。

               ―――冷え。

 は何処へ......知り過ぎている

    でも、明るかった、酔うほどに

            好きでいられた。


ねえ、電気を消して

(のそりのそりと動く)これでいいかい、
こら
怺えきれなかったはずの夜の闇が、また

宇宙のように、......消滅したかも知れない

星の光を見せていた。

「一緒にいるだけでいい」――

ぐっしょりと濡れた服は甘酸っぱい、

貝に入った砂の帯電。

肉に触れると安らぐのはどうしてだ、おまえ

......突き離されることが多いからかしら?

十数年前、狭いアパートで暮らしていたあ。

風呂がなかった。風呂のセットをもって、

神田川という流行歌が似合った。

感じられた......耳の孔まできちんとひらひていた

川の音、木々の揺れる音。


   いますぐにも何故か......帰りたい

   帰りたい?
     
 “そう、たとえ、逃げ水のように揺らぐとしても”


ねえ、旦那さま、明日写真を撮りましょうよ

なまぬるい言葉が。......心地よかった

たかだか触り合っただけで、

まさぐり合い、確かめ合っただけで、

......白髪さえ愛しいのだ。

よく見れば(と、まつ暗闇のなかでも、)

背中と尻の境界にある黒子が、

豆を煎っているような時の痛痒そうなあなた

が。美しかった。「沈みながら、ねぇ、

もっと漂いながら、何かにすり抜けながら、

ひりひりしながら、家鴨の足のように水中で、

ばたつかせながら......犬のよう

に。立ち泳ぎしながら」


        布団を敷くのも忘れて。

               ―――凍え。

 は何処へ......知り過ぎている

    あと、数時間あとに敷かねば

             腰が痛くなる。


でも、とつぜん

自分が猿になったような気がした「おいおい、

まるで十代みたいじゃないか」

......でも、たった今、何処までも行けるような気
                  なかみ
が、した。封印した段ボールの内容も、
ラブレター
恋文も......この手で引き裂いた日記も、

もう一度。やり直せるような気がした。

よく見れば、ゲレンデの美人「知ってるだろ、

図書館の知的美人。スーツを着た大人の美人」

......まやかし。揣摩臆測。
        ひと
でもなつかしい妻よ、

もしかしたら、かくも無残な己をこれまで、

見て見ぬふりをしてくれた美少女。――

「本当はわからないんだ、皺にこすりつけた金魚。
      そら
あるいは。宙に貼り付いた月かも」


   でも胸を打つよ......赤い眼

   デジタル時計のあはひ光のなかで
     
 “予想だにしなかった、飼い馴らされた野性の反逆”


ああ、ここに御玉杓子がいるんだね、

そうよ......

そうよ、あなたは眠って起きていたのよ、

(僅かに滲む目の端)
                   ひと
そうよ。と、はじめて嬉しそうに笑う妻

子供の頃に見たブルーフィルムのように

胸に、へんな草がうごく、虫がうごく、

ずるりとずり落ちてようやく自分だけになる

......吸いたいな

急に、思春期みたいに咽喉が鳴る。ぐびり。

ちがう、それは酒よ。「その位置はかはらなかつた、

そうだ、唇の場所はかはらないんだ」

自分は、まだ見たこともなかった

まだ触ったこともないころに(くちびる)といふ、

......ガラス戸の奥に忍び込みたいと思った

にゅるりと蛇のように舌をさし入れて

全身の細胞を敏感にして(のどちんこに)

ふれたい。と。思った


       噎せるほどに、「やめて」

           ―――嬉しかった。

 は何処へ......ほんとうに、何処へ

      行ってしまっていたんだろう

               切なかった。


昔、通り過ぎた川の音が確かに耳元にきこえた。

弾性を帯びた心臓がひき殺されたように怯え、

......いつか、ひとり取り残されるのではないか

“死ぬ”のではないか。――

マリアとこの世のものとは思われぬ口づけをしながら、

自分は考えていた。ザ・ザ・ザ

と何処かで砂嵐の音がきこえた。

車の排気音がきこえた。

なまぬるい奈落。たぶんそうだ、自分の部屋で

ほんとうの深いところまで達したような気がした。

......愛なのか、それとも本能なのか、

よくは見えない女のにほひが、舌と指が、

胸が、おんなの脚を折ったところのやすらぎが、

歪む、くねる.....そして、また、混乱する男

女をあじわひ尽くし、

心が満たされていながら、自分は考える、考える

.....むせかへるばかりに。


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