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灯台

灯台

初期作品 5

  45 愛






きみは

ぼくのすべて


きみは

ぼくのいきるよろこび


だから

ささやいてほしい・・・・・・


こえを

やさしくなびかせて


かみを

ほどくようにさやと


ぼくの

むねを あつく あつく


かわは

いつもゆるゆるながれ


ほしは

そのみずをすいあげ


ひざしは

ときとともにゆくだろう


やまは

きせつのしらべ!


ゆめは

いつもふたりをてらし


かがやきが

このなみだを、すいあげる


くさきは

なみなみとたたえられ


くもは

そらをなめるようおいかけ


とりは

あらたなかてをさがし


いつもひとは

このおおきなかんきにふるえ


ぼくは

なみのようなこきゅうをやめ


くちびるで

いとしい そのひとのなをよび


きみは

そのほほえみのなかで


ゆめは

かぎりなくすぎるとしる


あいは

ふえもせずへりもせず


ことばは

こころのさようでもつれ


だからぼくは

きみのしをおそれている






  46 □から△ ~あなたってまるで四角形のピラミッド~






あなたって四角い人間ね

そう貶された時に

僕の人生は花開いたのである

あなたこそ殊勲者!

人類共有の深い知恵
こじつけのせつ
郢書燕 説

無意識にゆったりと足を組み

この玉座にすわろうとおもう

僕はすぐさま四角い眼 鼻 耳 

 と つぎつぎに堅苦しくしていく

なあに難しいことではない

金さえ積めば ・・・・・・
       ほおぼね
なんという顴骨の威厳 !

そしてなんという堂々とした態度
           きいきい
虫のように啼けよ 三泣車よ
          けんひょう
おお 霜を踏んで堅冰至る
         まち
そし て 僕は都邑で

四角いタイヤづくりを始め

いまでは生活用品いたるものが

全部かちんこちンの有様
        フロンティ ア
おお わが 隴畝よ !
みの
稔るほど頭を下げる稲穂か な

もちろん製氷機も四角

マンホールも四角でなければ

この うつけ !

そうさ 内面をさらけ出すことを

 僕はけして躊躇ったりしな い

やがて僕は四角いアーティスト

 自然という生産性に気がつくんだ

四角いホルマリンの蛙をはじめ

四角いヴィーナスのはだけ

四角い鹿喰いという意欲作を発表

しなやかな花のうつくしさ

しどけない うっしっし

という芸術写真も発表する

誰もがそこに死という

 不吉なイメージの投影を拒む

ものものしい四角さと定評

四方位・四大元素・四足演算

だれもがその傲岸不遜さに

このもしき支配をみる

そしてエッセイでは

これほど四角い人はいないと

文壇で評価される四角さ !
ひとそれぞ れ
陵轢隙 駒

静かな規則的な暮らしの中で

偉大なる四の統治者が

いま責任感の象徴としてあらわれる
ひっけん   なりゆきにまか せ
筆硯 の 天雷无 妄

見ろ こ の 
アウテリア
屋外の装飾品
アウタースペース
大気圏の外側の空 間 を・・・・・・

漢詩を学んだ研究成果

とくとごろうじろ

おお 四角 なさけない三角

こわいぞ 五角 ・・・・・・

僕は眠る時も四角いベッドで眠る

そうさ どうして争いを嫌う ?

天国ではおこなわれない戦争が

地上でおこなわれているのは

つまり競争原理 の こと だ
      ワークブック
そうさ 児童・生徒の学習帳
    わすれない よ
そうさ 陀羅尼 日夏耿之介

眼がくらむほ ど 争いという名の

 僕 の 正義を みてく れ
さんてんをとめ
山顛處女のしろい皮膚 !

棺は もちろ ん 四角 だ

故あって建設業にも着手したので

火葬場の建築もしておいた

もちろん それも 四角 !

僕は四面体のサイコロを愛する

四とつくものを愛す
つまる に
畢竟 三角錐よ おお正四面体よ

たとえそれが死で あるとしても !

あなたって四角い人間ね

そう貶された時に

僕の人生は花開いたのである
ロスト・ジェネレーション
それまでの価値観に失望した世代

僕の目の前にある王国 !

神秘的なものとかかわりをもとうとする

 僕のあたらしい肉体と精神と魂 が

字画を自覚に置き換えて みた い
 アンバランス
 棟たわ む な 衝動 に駆 る

あわよくば しずか に
ジンジャーエール
ショウガ風味の清涼飲料 水 を

あわよくば 永遠 に
ピ ッ ケ ル
登山用のつるはし を







  47 劇詩 ストーヴ






 ストーヴ 何故おれは燃えるのだ。生起する一切のものは、熱を発生する装置ではないか。
                                     ほんと
 エアコンディショニング 知らないわよ、そんなの。ああ、本当にやだわ、時代お

  くれのアナクロさんは。大体あなたここで何してるの、あたしの空気を汚すつもり? それ

  ともナンパするつもり? やめてよ、あなた、あたしのタイプじゃないわ。

 ストーヴ この科学のぽんこつ機械め! 人間の女みたいに、ぺちゃくちゃ喋りやがって。

  ポップコーンが弾けたあとで、君はそんなことを言うのか。なにが人体に快適に、だ。室内

  環境をコントロールする前に、温度や湿度だの、清浄な空気だのといった連動をはかる前

  に、何故人が燃えねばならぬか、けちな呼気と排気を司っている象徴を考えてみやがれ。俺

  は隕石をうむ暖炉だ。高い煙突だ。耐火煉瓦だ。煙や燃焼で生じる物質をもくもく排出する

  ヘビー・スモーカーの煙突ほど詩人の愛する逃避行はない。セントバーナードもここに居座

  るようになるだろう。

 エアコンディショニング 鼠みたいね。

 ストーヴ そういう君は豚みたいだがね。

 エアコンディショニング でもいずれ、あたし達スクラップよ。新製品の宣伝文句ってす

  ごいんだから。あたしが見たのでは『これで百年買い替えいらず』というのがあったわね。

  百年も誰がそんなもの欲しがるのよ。そんなの百年も持ってくれるなら、ツクモガミにだっ

  てなれるわよ。嬉しいわね、そういうのが本当(ほんと)だったら。煤だらけのアナクロさ
                                      メンバー
  ん、あなたみたいなのは、アンティーク志向だの、暖炉を愛する会員にはバカ受けよ。でな

  かったらすぐ、お払い箱だけど。

 ストーヴ そう、象のようにふくれたりしている君とは違って潔いのさ。

 エアコンディショニング なあに、その態度? せっかく、褒めてあげたのに。

 ストーヴ お生憎様! 君は一度、日本語を覚え直してきた方がいいと思うね。

 エアコンディショニング だとするのなら、あたしを作った技術者の日本語がおかしい

   ってことね。じゃあ、あなたを作った職人さんは、よっぽどの偏屈で女にはモテなかった

   ってことね。

 ストーヴ なんだと、このメス豚野郎!

 エアコンディショニング そうやって凄むあたりが、野蛮人よね。

 ストーヴ (ここで、ふっと我に戻ったような沈黙が流れる)エアコンディショニング?

 エアコンディショニング どうしたの?

 ストーブ 実はここへ運ばれてきた時から、俺はひとつのことを考えていたんだ。つまり、

  トラックの荷台に載せられて、知らない町を幾つも通って、森だの林だの湖だのを見てきて

  俺はここに運ばれてきた。鳥に糞だってつけられた。トラックの運転手には小便だってかけ

  られた。別にそれはいい。でもエアコンディショニング、俺はもう気付いている。

 エアコンディショニング 言わないで。おねがいだから。

 ストーヴ 何故、君や俺は循環の工夫を施されているのに、どうして人間って奴は、そうい

  う種類の循環について考えないのか。おお、そして何故、俺はまだ燃えているのか?






  48 歯磨き






ものの味さえわかればいい

そう思ったことがある

ひらかれた魚をみながら

いつも抽き出したほね

ほぐされていたのか

ほどかれていたのか

きっと拒食症みたいな真実で

やせほそったヤギのような僕

咀嚼力を知ろうとしても

歯並びはずっとわるかった

きれいにたべているつもりで

熟れてゆく歯肉がいたかった

こだわっていたものは

銀歯でも金歯でもない

きっと虫歯なんかでもなかった

おとろえていく未知の食感に

鋤き返すことに いつのまにか

あきてしまっただけなのだ

そう 包帯がほどけてしまった

そのあとで 見よう見まねで

セーターを編もうと思った

というわけではないけれど

編み方は載っていても

ほどき方は だれもが自己流

形あるものが崩れてしまうとき

とうぜん触れ合っていたものが

犬歯になって 出っ歯になって

入れ歯や 爪楊枝がなぜか

元通りの中に含まれている

歯磨き粉をたべる突拍子もなさで

ぼくはこの手に諭される

ああ、飽きることもなく・・・・・・






  49 ねじを巻く






                              、、、、      、、、、
 ○僕が受話器をとると、大抵みしらぬ人からだ。もしもしと言ってから、はいはい、に変

わるまでの時間は極端に短い。ぼくはそれ以外のことばをつぶやいていない。


 ○ボウガンっていたいのかな、むかし、膝の骨が皮膚をつきやぶってきたという話をきいた

けど、その時に変わり身の術ってな感じで、ちがう次元へ行ってしまう。


 ○鳳仙花もそうだ、はじけて遠くに種をとばしてしまう。そんな風に電話がかかってきてい

るとしたら、少なくとも、ぼくはユウユツだな。

                                                いや
 ○本人のいない家ってのもなんだか、服を脱いだらトーメー人間になるみたいで可厭だな。

郵便ポストに新聞がいくつもつっこまれて、こぼれおちるみたいで。

             どあ                             ステージ
 ○本音ってどうかな、闥をあけたら次の扉があって、そこはつぎの舞台だっていうんなら、

それだって孤独な季節をおもうようなものじゃないか。


 ○暴論のはてに、きみが今度から受話器をとるという。その怒涛の剣幕のすさまじさ。だっ
  いきなり      かたき
て、突然きみは鬼の敵をみつけたように電話機へとびつくんだから。


 ○放課後の黄昏にそまった教室で、しずかに椅子がうごくような曲をきいた。モーツァルト

の「アダージョ ロ短調」っていうピアノ曲さ。


 ○ほわっ、としている間に幽霊があらわれる。しかしそれは決して恐くはないのだ。なんだ

か、時折りラジオ体操みたいになったりする。


 ○ほわっ、としている間に幽霊があらわれる。ある人はそれを遊戯とか、精神表現の表出と

いうのかもしれないし、思わせぶりというのかもしれない。


 ○ぼくはそれとも、躁鬱症のような曲と表現するべきなのかな。音楽につれて、落ち葉がば

らばらとおちてくる秋になって、冬の景色がひろがって、骨身にまで沁みてくる。


 ○放課後って、けれど、やっぱりそんなに恐くはない。そういう種類の寒さではない。表面

上をすべって、階段をのぼったりおりたりしているだけ。


 ○望遠鏡でのぞいてみると、あんなにちっこいのに、いつのまにかその存在が大きくなる。
、、、、      、、、
もしもしと言ってから、はいはいだとしても。


 ○放課後の、そう、ちょうど、踊り場にあるモスグリーンいろの掲示板みたいな曲だとおも

う。何も考えないで聴いていたら、モーツァルトはほんとうに不思議な人。


 ○ほかならぬ僕だってけっこう不思議だから、この人はいろんな影をイメージしていたんじ

ゃないか、友だちの家で開けてはいけないという箱をあけているんじゃないかと思う。


 ○ほんとうに突然、時計のイメージというのがよぎった。時間をていねいに区切っていく時

計が、ある日、人格をもってべつの音色を奏で始めるよう。


 ○哀切なメロディーで、スローテンポで、なにか、ぞわぞわと落ち着かない気持ちにさせ

る。失恋をしたあとに聴きたくない曲なんだ。


 ○ぼくは、そうだ、とおもう。ああ、そうだ、これは葬式をイメージさせるんだ。水の伝言

なんだ。ああ、その沈黙なんだ。枯れ井戸から青空を見上げているんだ。


 ○放課後って、けれど、やっぱりそんなに恐くはない。ああ自分は死ぬんだな、としずかに

さとりかける陽射し。奥底に人間の感情がもえている。

                              、、、、      、、、、
 ○僕が受話器をとると、大抵みしらぬ人からだ。もしもしと言ってから、はいはい、に変わ

るまでの時間は極端に短い。ぼくはそれ以外のことばをつぶやいていない。


 ○僕はたまにかかってくる間違い電話を待っている。それくらいの贈り物(プレゼント)があ

ってもいいじゃないかとおもう。もしもし、警察署ですか?


 ○僕はすぐに答える。はい、ここは留置場です。そしてまた電話がかかってきて、もしも

し、どうやったら地獄へと行けるんでしょうか?


 ○防犯グッズが売れるご時世に、そんな電話がかかってきたら素敵だ。そしてかけた本人も

おどろくだろう。はい、地獄へはこれこれこういくのですよ、と説明されたら。


 ○ほいきたッ! はいきたッ! いつのまにか僕は地獄についての説明がおそろしく巧くな

っている。消化れてきたのです。いいえ、行ったことがあるのです。


 ○ほいきたッ! はいきたッ! ダンテさんもその一人でしたし、日本人では芥川龍之介さ

んや、太宰治さんもそうでした。


 ○ほらふき男爵と化してしまった僕は止まらない。三途の川には三つの渡る方法というのが

あります。橋と、浅瀬と、そして江深淵と呼ばれる難所です。


 ○ほんに恐ろしいところだべさ、とお爺ちゃんお婆ちゃんがいってました。あったらなと

こ、行くもんじゃなか、と耳がたこになるほどいわれたものです。


 ○ほんとうの地獄の入口はここから。焦熱地獄、極寒地獄、賽の河原、阿鼻地獄、叫喚地獄

というコースになっています。はい、もうすぐ、バスツアーが出ますので。


 ○僕はガイド役になって、皆さんに世の中の伝説や、言い伝えといったものが如何に本当の

ことが多いかをお教えにいきましょう。さあ死にますか?


 ○ぼくは本当に鬼なので、きりきりきり、という擬音をもちいて相手のきんの玉が縮みあが

るようなことをする。


 ○ぼくはたまに、きんの玉があるならぎんの玉はどこよ、という掛け合い漫才をしたいとお

もうのだが、相手もそんなことをまさかするはずもない。


 ○ぼくは抑揚のすくない、起伏のない、そしてつかみどころのないほどヌルッとなまめかし

いほど低い声で終いをひきとる。あなたの名前を知っています。


 ○僕等はそれに、ころっと騙される。オレオレ詐欺の手口だ。知っているなら言え、とはい

えないのが電話なのである。あなたの住所を知っています。


 ○ほんとうの悪意というものではない。いたずら半分もあれば、さみしいからつい人に迷惑

をかけたり、昔の嫌なことを思い出して発散しようとするとか、だ。


 ○ぼくは人間だから、そういう弱い人の気持ちがわかります。これで、ゴキブリほいほい

だ。人間なんて実際むちゃくちゃ、ちょろいものです。お賽銭がちょりん。


 ○ほいきたッ! はいきたッ! いつのまにか僕は地獄についての説明がおそろしく巧くな
      、、、、      、、、、
っている。もしもしと言ってから、はいはいだとしても。






  50 タァーコ






或る日たこがいました

これは たこやきにされるまでのお話です

おお まじで オクトパス

ある少年にスミをぶっかけて 黒ん坊にしたので

ブラジルに言っちゃって!

そういうわけで北極にいって

クマさんと暮らさなければ

どうしてもいけなくなって

しかたないので北海道で

蟹とあそんでくらしました

たこはそのとき ころされていました

いたいけな少年にではありません

その父親にです

彼は漁師でした

まぐろ漁船にのっちゃって!

そのまま一年くらいさよなら

タコはそのあいだ ずうっとずっと 乾涸びて

でも海水をかけられて

タコは生き返ったのです

うそです実はそれは

映像的なフェイクで

その日のうちに

そう少年に足を百円ライターで

あぶられて あぶられて ああそのまんま

たこやきされたのでした

ほんとうのたこやきに

けれども味は海水につかったので

酢ダコとはちがいましたし

とてもタコっぽい味でした

タァーコ!

少女も一緒にたべました

少年の妹の名前です

そしてお嫁にいく晩に たこ飯をつくりました兄は

なかなかお嫁にいかないので

もしやこいつ近 親相姦ではあるまいか!

あぁいけない

そんな疑問符を払拭するくらい

今は恋人にべったりしています

兄貴だって辛いのです

男はつらいよ!

かくしてたこ焼きをつくるたびに

うりうり ひっくり返すたびに

結婚のしあわせでとろけてしまった表情が

タァーコの絶頂が

不意に自分の境遇とかさなって

妹ばなれできていなかったのだと気付いて

お見合いを企みつつ

ああ実はシンデレラ・コンプレックス

ごくたまに帰ってくる妹は

お土産にタコ焼きをわたしながら

「お兄ちゃんは結婚しないの?」

と痛いところをつっつきます

まるでずっと昔

おぼえていられないくらいの頃に

ハイジよろしくブランコを漕ぎながら

くねくねとダンスをするあしのやつに

スミをぶっかけられたような

そんな気がたまにするのです

七夕の夜には

お兄ちゃんという生き物は

タァーコそれはね

みんなたこの呪いなんだよといいます

うまくとばせなくなってしまうんだ

だから空はまっくろなんだよ

タァーコ・・・・・・






  51 少年哀歌






木ノ枝ヤ枯レ葉ヲ

?キ集メ

休憩スル

パチパチト

燃エロヨモエロ

プチンプチント

鳴リマシタ

万雷ノ拍手デシタ

日ノ丸 ノ

キレイナ旗ニ

梅干シ ヲ

入レタ オニギリ

ギュッギュウッ

ギュトサッ

柿ノ種

スッパクナッタ

シブイ カキ

シロ カテ 

カビ ハエ

アカ カテ 

サビ ハエ

ガンバルゾ !

ソンナ チョンマゲ !

トノサマバッタ

チチ チチ ト

小鳥ハ鳴イテ

夢ノナカ

ピイチク ピイチク

ウサギ ウサギ

夢ノナカ






  52 数学的恐怖






満月を見ていると僕はおろおろ およおよする

 どうしてだろう どうしてあんなに不安定な形なんだろうって

しかも奥行きがなくて ひどくのっぺりとしていて

 まるで巨人が ぺたぺたと糊付けたように宙に縁取られている


半月だってそうさ 分度器みたいだ

 角度によっては つまり三角形や四角形にだってなりうる

状況によってはそうさ それが何だか科学や化学
                    オカルト
 例えば数学にのめりこんだ人が 秘術にはまる構造のようで


黒魔術に惹かれて白魔術 夢中になって

 不老不死の霊薬や妙薬のように 珍重して重宝して

悪意に満ちた宇宙人は銀色に いいや金色に光って


童話的なものを思い出して 少年にいざ帰って

 あの頃にそいつから逃げ続けたけど いまはもう笑い話

どうだい少年? わからないものがあるだろ?






  53 髪―――秋の夜にひたぶる髪や女かな―――






あの夏の日の私には麦藁帽子がよく似合った

 冴え冴えとした黒髪は覗かれて エナメルのリボンで結われた私
            わかめ こんぶ
コネクトされた歴史は若布や昆布や鴉の行水
                     おはな   かむり
 冴え冴えとした骸骨も知らないで 御花の冠を載せたりしていた


かき氷みたいにさくさくするバケツの水面に

 それでもしぶとく生き延びた 花の種子 花のか弱さしをらしさ

流線型の顎にしづかに寄り添うお花畑のやうに

 蝶や蜂を集わせる匂ひも知らないで その若さに縋ったりもした

             よみ
ぱらりと解けた瞬間に蔭府の国はやって来る
                あつまり
 夜の筋を知ったやうに黒の集合体 ノイズのやうに見えない私の髪
                    ほのお
まるでそれは女の生き写し 情念の炎焔のむらさき
                       わっか
 その気惰い微睡みの中でこの私は 蛍光灯のことを考えたりする


あの夏の日の私には麦藁帽子がよく似合った
                            いぶ
 だからコーヒーゼリーの潮臭い海で 涙の女を怪訝かしく思った
                         いつく
蝙蝠のやうな手がいつものやうに私の髪を撫愛しむ・・・・・・

 白髪になってもその手が 異国の芳香を漂わせているやうにと


私は子供の頃からこの髪に海の潤いを与えてきた
                                    いのり
 どんな水着でも着れる年齢になっても この髪はやはり命の祈?

はらはらと私の視界を蔽い隠す憎悪とならんとも 
                             はな
 これが私という人間の宇宙 無数の夜の星の花冠の一つなのです


王子様は白亜の灯台を攀じ登り 廻り始める
                           かざりもの
 光の当たった所にだけ名前をつけて 思い出は装飾品になっていく

それを嗤いもせず男波と女波は一緒に来ると云ふ貴方・・・・・・
          かんがえ
 それが人という理性の冠なのだと 貴方は私の髪が好きなのだと云ふ






  54 からっぽ






ゆられ ゆりかえって

透き通ってゆく をどれ をどれ

もまれ もみかえって

こんなにも透き通った さめて あをざめて


うすいオブラート状 ひるがへるヴェール状

こころはラビリンス状 いのちはイデオロギー状

をどれ をどれ インディヤン!

トキの羽根で飾りをつけて あをざめて


しをれ しをれかへって

透き通ってゆく かへれ かへれ

こはれ こはれかへって

こんなにも透き通った かへって ひるがへって


ひろいキャンパス状 くらいプロセス状

しんなりメタファー状 こんがりパン状

かへれ かへれ インディヤン!

トキの羽根で頭飾りをするも コメディヤン!


みきはめようと 心を澄まし

聖杯伝説さながら永遠にかはらないものを

僕は探していた 探し続けていた
                   、、、、
ああやうやく のどをとをるころ からっぽに


僕は鳥の羽根でインディヤンの頭飾りをし

化粧をし べにさして かぶかせて

毛布を被り きりきざみ をどりを覚えて

僕はインディヤンになる! コメディヤン!






  55 慄え






 小便のにおいがつう ン とする。

 冬にも 蚊 がいて。

 夢すら も みて。


 視界と思っているもののおおくは裏地や地肌のように、印象をとらえようとしている。そ

の形態把握さらなる空白は―――いま動く―――流るる独楽のようなもの

 ああ、どうしてつっかけも履かずに駆けだしたのか?

 情念の形態のもの・・・・・・をさせる能力をさがす。


 今夜はトイレ・ルームに泊 って。

 貌のな い 人形。

 今日を も わすれ。


 柱に目のうえをぶつけるようにすべりながらひろがり、のび、うじゃうじゃする花模様。
   ぱにっく
一つの恐慌また誇大妄想は―――いま動く―――流るる独楽のようなもの

 ああ、ゆえにぽたぽた汗をかいて皮が剥けていく。

 それはよごれた袷・・・・・・それは和式便所。


 動感のあふれ た 稀なにほひ。

 鱗粉 が おち。

 手頸 を 見。


 眉間のたてじわは、ゆがんだ鼻は、腕のしびれは、おおきく崩れかかろうとしている。さ

ながら家の玄関また風鈴は―――いま動く―――流るる独楽のようなもの

 ああ、むかれたリンゴの皮だけをのこして。

 むかれたリンゴの皮だけをのこして・・・・・・


 種族維持本能 すすきの穂が ゆれ。

 過去の泡 が あって。

 傷のない 夜 があって。






  56 ふるい荒れ廃てた家がある






 ふるい荒れ廃てた家がある

 竹箒がガレージの屋根の開いた穴に貫通していた

 水溜まりは、指さきを濡らす前からそこで眠っていた

 時の穴はぺらぺらとひっきりなしにしゃべった
   いし 
 窓は礫のようなもので割られていた
               ひび
 壁は蛞蝓のようなこまかい罅欠がはいっていて

 そこにスプレーで絵や文字のようなものがつくられていた
               、、、
  たちのわるい子どもがあらはな性の図像をつくっている!

 ・・・・・・写真をみたか、片脚のもげた飛蝗や、こおろぎや、そう、
           ケ ロ イ ド
あから顔のえぐれた繊維性腫瘍たち。あをざめた痩せぽっちの表

情で、栄養失調のまま死んでもなお、残留思念として、死霊として、

おれたちに強迫的接吻をするおまへ―――

 極彩色のスプレーの傍に

 壊れた自転車のハンドル部が盗まれていた
 、、
 その しろい自転車は兜蟲の幼虫のようにまるまっている

 猫の額ほどの庭にはぼうぼうと草が生え

 毎朝生えてくる髭のようにうっとうしくはえ

 マーブルチョコレートのとけたような臭いがし

 やはり発酵臭がぬるりぬるりと質感をおかしくさせた

  思わせぶりの麦酒の空罐がある土曜日に増えた

 くじびきのような白い毛が増えた

  茶色い不きつな毛がそれを狙っている

 ・・・・・・ぼおぼおだ、めりゃめりゃだ!
                   、、、
 猫は見物人に対して警戒心をあらはにする
                          ともづな   ほぬの
 帆をあげろなんて、おまへ、いわなかった。纜なんて、帆布な

んておまへなかった。すこしばかり踏みくぼめ、かろやかに越える
どあ
闥のものたちがくずれてゆく―――

 真実の体験を、いいうるものの季節よ―――

 ふるい荒れ廃てた家がある

 ふるい荒れ廃てた家がある






  57 一目ぼれ






落ち葉がぐるぐると

らせん階段をのぼっていたときに

風はいとしめやかな

着物の裾をみせた

くびすじは

ジグソーパズルのように

あおい血管をうかべ

ひくひくと脈動した瞬間

ぼくになにごとかを

尋ねたような気がした

かんざしがほしいわとか

お手玉がしたいわと

ぼくにおねだりをしたのだろうか

きれいな爪をそろえて

お辞儀をしたような少女


みずうみに足跡がのこり

やわらかい虹の

真下でむすうの波紋をひろげている

あれからぼくは齢をかさねて

少女もゆっくりと熟れて

だれかに恋をするような

としごろになったのだろう

そしてまた秋の夕陽のなか

ぼくが池のそばをあるいていると

あの風の精がいるような気がして

ぼくはゆっくりとたずねる

ねえ 君もだれかに

恋をしたの か な

びゅうっと風がふいて

ぼくのえり首のところを狙って

しかし忽ちのうちに

なにも応えず消えてしまった恋

好きだとはいってくれず

愛してるとはいえない

風のしょっぱさにふれたのだろうか

枝がまるで鈴のように

しゃんしゃんと鳴っている

があがあと家鴨はあるいていたし

亀は岩のところで

熱を吸収しているようだったし

どこかの鳥は

あいかわらずお洒落な笛をぶら下げて

この池に棲んでいる精霊に

ご機嫌とりをしている

何故そう想うのかというと

かくいうぼくもそのひとりで

ののはなをポケットにしのばせて

だって他人にみつかると

変じんみたいじゃないか

やっかいじゃないか

というわけでふわりと

ブーケみたいに池にささげた

きどった声なんかじゃなくて

いつもたいていしたしみやすい声で

たまにぼくのところへと ・・・・・・

すると 蜜柑がどこからともなく

ぼくのあたまにおっこちてきて

なんだ この ブス

と ぼくはほざいてしまう

背を向けてのっしのっしと

おお股で

あるくぼくはしらなかった

風はそのときどんなにきれいだったか

待ってくださいとささやいたか

どんなに齢をかさねても

はつ恋はあまくてにがい

あの蜜柑はふところのなかで

しずかにきいろく熟れていった






  58 ある町のある午後のあるアントニオ



黒い犬がおった
                           ちゃ
耳が垂れて 目つき鋭くて なんか雰囲気が違う

人間やったら きっと黒人さんみたいに むきむきや

しなやかな筋肉が 毛で覆われとるのが まじ ぶきみや



黒い犬がおった

首輪が外れとるのに 漸く気付いたんは すっすっと

我ン とこまで来た時や ごっつええ根性しとるな ええで

ともかく対峙や ちがった退治やと 棒きれ 握った



黒い犬がおった

そしたらこいつ いきなり手を凝視めたか思うと がぶり

ちゃうちゃう ぺろぺろ舐めはじめよってからに てくにしゃん

しゃあないから けるべろすとか じょにい いう名前つけたった 



黒い犬がおった

アントニオいう名前よぶ おばはんらしき声 きこえてきた

したら 我ン とこにおる犬をみつけて 夢中で抱き締めとった

うちのこ なんもせえへんかったか言いながら ぼこぼこ殴られとった






  59 フリスビー






紅茶はレモンにしますか

それともミルクですかと婦人は聞く


こんなに空が青い日には

 部屋に閉じこもってはいられない

こんなに心が晴れやかだから

 喫茶店へと足を運んでしまうのかな


今日は難しく考えないぞって

 ちょっとだけ背筋をだらけさせる


喫茶店の白いコーヒーカップを

 持ち上げ かたんと雪の中の兎みたいな

そんな薄くて白い フリスビーソーサーを 

わななくように震えさせる 僕だから 


服の裾がぺろりと捲れてくれない

 風が強く吹く あの日みたいに


クリスタルのようでダイヤモンド

 しゃらくさい ふわりと幻を追いかけた

薄いグリーンのフリスビーは 思い出に

 そっと泣き笑いした 日々の別れだ 


喫茶店の鈴の音で捲れる パブロフの犬

 そんな優秀で 敏感なTシャツが欲しい


懐かしいとか哀しいとか いえない

 過ぎてみて放り投げたフリスビーも

寒さも怒りも怖さもまた いえない

 つるりと剥けるかさぶたフリスビー


店を出て振り返った 西洋風の佇まい

 この乳箔色の壁が僕には捲れないかな?


おざなりさも投げやりさも

 こだわりに振り回された フリスビー

過去と今と未来を結ぶ方程式のない

 劇的なフィナーレのない フリスビー


だから僕は幻想の森へ

 フリスビーを見つけに行くんだよ


いつも満たされないと

 悩むから 感じないでいるから

もっと神秘的な美しさ そうもっと

 もっと空想的な柔らかさが欲しい


だから僕は木陰でごろりと寝転ぶ

 枝に引っかかってる それを探してね


こんなに空が青い日には

 部屋に閉じこもってはいられない

こんなに心が晴れやかだから

 つい涙もろくなってしまうのかな


「ねぇそうなんだろ、フリスビー」
             、、、、、、、、、
  不思議なんだけど緑のいい匂いがする






  60 オレンジ






やるせないこどものなきごえが

どんなうんめいをつげたでしょうね

どんなよろいをぬいだというのでしょう

どんなきずなをさがすために

こころはこのよのなかをのがれて

あるきはじめたというのでしょう



まじりっけのないむじゃきな

こどものなきごえはかぎりなく

わたしたちをどこかへとつれさってしまう

たとえば れいぞうこのみずのなかへ

そう それはなつかしいようすいのなか

たいどうのきこえる はらのなか



わたしたちはいつくしむわけあるように

ほうしのめがあるように

ひとびとがもとめるいずみのところへといく

そこでけがれたるわがみをあらい

かげのもちあわせがないように

いつもきれいごとばかりをくちばしった



おかねもちにならなくてもいいのよ

ようしなんてきにするほうがばかなのよ

わるぐちなんておよしなさい

ねっ よるはいつもはやくねむりなさい

そのさとしは いまはいのりのこえのように

なやむようにすんでいる・・・・・・



おもいつめたひとみをひきがねのように

わたしへとむけながら

いまはゆめみごこちに しょうがいにおよんで

ひびきわたる つつましいねいろをきく

えんりょがちなわらいごえが

わたしたちのむねにしんこうをあたえてくれる



ねぇきいておくれ せいじつなこえが

えいえんにそのおとのなかでひびいて

むねがかきむしりたくなるほど

わたしがきみをしんじていることに

どんなにゆめみがちに そしてどんなにゆうきをもって

きみとむかいあっているのかを



このまんまんたるみずのながれにたたえられた

しずかなそのうごきは

ひろやかなかたのようなしりゅうによって

がいかいへとむかう ぎざぎざのかこうをつくる

それは ぞうだいするはんぷくだ

うつりこめる たびびとのよそおいだ



だが けしてこどくではなかった

たましいたちのゆうぎは

あらゆるきらめきが いま にびいろのなかに

せきようのなかに はくじきのようなくもに

そう がらすしつの あおいそらに

みんながてをつなごうとしていた

・・・・・・まるであたらしいゆめをみるように






  61 まよいます、うさぎさん。






低血圧の台風の髪は

ロックンロール・

スター

きみにつられて山の中へとゆくの

ねえ つぶら眼のおくに

どんな悲しみがあるの

キャベツ寄こせやの声がきこえてくる

そんなわけないのよ!

ば・け・も・の

だって蛇が樹の上からぼたぼたおちてきて

ぼた餅ついでの崖のうえ

もう逃げれないので

坂道を段ボールでずぱっしゃあ

深層意識への問いかけ

阿古屋の貝の

うえにある

真珠

かちっと

音鳴らす瞬間を胸に宿して

ストーン・

コレクション

ぐうすかぴいと呑気にねむって

ぼく は めざめてゆく

どばあっと鼻血が出た

熊さんこんにちは!

そうして

トランプは絵柄がつよいんだとか

ジョーカーってやつは切り札のことなんだとか

熊が相手であることをいいことに

ぼくらはひと握りの塵のもつ

影のような愛情で

もしかしたら

おかあさんの腕に抱かれているのね

神様がひどいひとだから

遭難救助隊のことも

かんがえないのねって

さしてめずらしくない集中豪雨

ああ 飛び跳ねて い く

ぴよぴよぴよ

にわとりになるために

金の卵をうむため

ぼくの耳は

ぴょこぴょこ

ひよこのようになって

ああ うさぎになって

まっしろくなって

くすぐったいやいとかほざいていた

ねえおばあちゃん 

となにげに赤頭巾調

ねえお母さんの毛は

どうしてそんなにやらかいの?

隈があるのよ

にんげんってのは

ああ 時計のない

いきものはやっぱり駄目ね

ば・け・も・の

そんなわけないのよ!

食べられたくなかったら

治すのよ

強迫観念

こんな脅し文句いままで

一度もきいたことがない

なんていう

叱咤激励

ああ 資本主義投下

のブラック・

ジョーク

知っているかい?

万博のトラックの無免許運転手







  62 こころ






ゆう陽が

しずもうとしているのを

よわよわしい

なよっとした君がしろくて

糸のようだねって

あかく染まればいいねって

ちょっとだけ

そんな黄昏がうれしくて

どきどきしてたんだ

ねえ 泣きそうで・・・・・・

いくらうらやんでも

とう底やすっぽくひびいて

解いたはずのこと

わかりやすく犯して

だまされたこと

またうら切られたこと

ねえ 生きてられないなって

はずかしいなって

こころの底から想ったんだ

どこにもいけないって

でもゆるさなきゃいけないって

ことばじゃなくて

涙なんかじゃもうなくて

よろこびとかなしみの

その区別とかもつかなくて

膝をかかえて

ぎゅっとしてたよ

ねえ こころにえがいた

ぼくのどうしようもない過去

すこしいやしくて

でも後悔で責めるのはもう嫌で






  63 逝く春






過ぎていく今日に 僕は少しだけ憐れんだり

 哀しんだりして くたびれた一日の亡骸を慰めている

おそらくそれが 上手な歳の取り方なのだ

 有り触れた一日 何処にでもあるような退屈な一日

暇を絵に描いたような一日 下らない一日

 もっともらしく口にするようなことでもない 一日


ソレデドウスルノサ?

 狼狽えて すぐさま取り繕う それが僕の人生だ


僕は戸惑うよりも 問いかける気持ちを失くす

 立て込んでいる毎日と うらぶれた景色を 特別視しなくとも

僕は生きていける 書類をペラペラと捲って生き残りながら

 どうにもできないだろう この悠然としているようで

釈然としない感情を おそらくこの牙城は 堅牢堅固ではなく

 孤独の傷口や傷跡を開く 暗黙の了解事項なのだ


ソレデドウスルノサ?

 現実にそそくさと寄り添って しがらみと区別もつかない


大いなる哀しみとか 聖なる慈しみとか 

 聞いたことあるようでない言葉は 頭を冷やすだけだ

大慈大悲 忘れてしまいそうな言葉だが 紛うかたなき事実 

 どうにも出来ずに 僕は一生こんな感情を持て余すのだろう

いつかはこの根拠薄弱な感情に 終わりを導くのだろう

 そうすることで 僕等は一日を無難にやり過ごす


ソレデドウスルノサ?

 何処か無理している 何処か破綻している


有刺鉄線に取り囲まれた 哀しい野原はゴミ捨て場 

 曖昧な顔をして頷いている 腐った枯れ木を敷き詰めた道

撒き散らされたのは種子ではなく枯れ葉 この褪せた森

 曖昧模糊とした言葉に 想像力や連想力を巡らして

退屈に拍車をかける毎日に 如雨露(じょうろ)で水をあげる

 そうすれば無限の領域へと深化していく 刺激にはなる


血相を変えずに 無気力なまま呟く

 例えばそれが君の言葉 ソレデドウスルノサ?


なんて野暮なことはいわない天衣無縫の独創力に 

 ソレデドウスルノサ と洒落て言いたいから

僕等はちょっとだけ大人ぶる ありとあらゆる生業の人間が

 ひしめき合う世界で もしかしたらそうして僕等は少しだけ

哀しみの置き場 嘘のつき方とか 出任せという場違いさとかを

 教訓的に学んでいくのだろう 長く太く続く人生に


ソレデドウスルノサ?

 理に適ってはいない言葉に僕は息を潜める


君からその無神経な言葉を 途切れ途切れに聞きたいから 

 野原の豊かなソプラノの春を待ち 僕は固執するようで繊細な

冬が過ぎる春を待ち ただ春を待つ朽ちかけた墓石になる

 心焦がす仕掛け装置を待ちて 笑うのを止めて真顔になって 

冬は逝く春になる そういえば僕にも違う筋道が見えてきたんだ

 名前の知らない誰かが昨日死んだ 奇禍に遭ったんだ






  64 影――秋の風うらはかなさがこみあげる――





       くちづけ
 情熱のない 接吻で

  かつて僕は歓喜した 


 ―――印鑑のない朱印を!

      気紛れな 気紛れな風の 所為 にした 
  
    
 死に 狂 れることなく
  とわ
  永遠 に 顰ひそ められた刹那


 ―――鋏のない白紙を

      僕は宙にぶちまけた! 
       そら    めくる
       天空 よ 眩暈めく祝祭 よ

 、、、、、、、、
 いたいたしい花を!
     くだ
  歯で 粉砕いた・・終わりのな――い・・


 ―――電線のない電話を

      僕は言葉のない宇宙に
                    いし    ふね
       換えよ・・う――!  隕石 よ  戦艦 よ     


 雨にうたえば 鸚鵡のように繰り返すだけ

  犬のように舌を濡らさずに嘘がこぼれるだけ

     とり        たまご
 ―――鶏 のいない 試金石 を

     僕は失われた青春と呼ぶ 
      テーブル
      卓子で いつか風の音を耳にした 





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