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2012.02.10 楽天プロフィール Add to Google XML

『ブラック・ロックシューター』~帰ってきたフキョウワオン~
[ 金曜…国井咲也 ]    

国井咲也の満巻全席  第285席

よく、不思議に思う。

音楽の趣味が
他者と一致する、というのは
あまりない。
ライブ会場などに行くと、
どんな分野のものでも自分以外の人で
ごった返しているというのに。
実にフシギ。

少し前までには『細分化』という
言葉がよく聞かれたけれど、
なんてことはない。
それぞれがより自分自身の好みのものを
探し出せるようになっただけだ。
それだけの種類が揃っている、という
社会の豊かさに帰結する。

こんなにマイナなものを作っているひとは、
はたして、
これが生業として成立しているのかという
疑念があるだろうが、つまり、
副業として、もしくは、
副業で生活を成立させた上でそれらの
商品製作にいそしめる、ということ。
この「副業で生活はできる」社会が
豊かさだということ。

『ブラック・ロックシューター』という作品は
もともとは手軽に楽曲(主にボーカルの
メロディラインということなのだろうか?)を
作成できるというようなツール的な
ソフトのキャラクタを引用した
スピンオフストーリィのようなイメージで
広まったのだとか。
詳しくは知らない。
そのキャラクタで出来上がる楽曲が
国井の音楽趣味とかけ離れているからだ。

これはたんなる推測だけれども、
この音楽ソフトは、
最初に細切れにした
五十音(日本語の47節の音節)を
サンプリングしておいたものを、
ソフトのユーザが入力したメロディラインに
沿ってCGの少女にうたわせる、というものらしい。
その「唄わせてゆく」というプロセスに
面白みを感じているのか、
出来上がる楽曲に満足感が生まれているのか、
はたまた、その曲自体に他者を
惹きつける引力が生じているのかはわからない。

ただ、聞こえてくるそれらの楽曲が
国井にはあまりに機械的で単調だ。
だから音楽的興味はわかない。

もちろん、それが悪い、などとは思っていない。
単に国井の嗜好ではないだけだという話なので
注意されたい。
国井はやや過剰ともいえるくらいの
有機的なほうが好きだ、ということ。

このソフトのキャラクタの
人気が背景にあるのだろう。
耳をすませば最近のアニメーション作品の
オープニングやエンディングを飾る楽曲の
ヴォーカルが「機械の音」に聞こえるように
加工されているものが多く見受けられる。

この『機械声』の人気は
今に始まったものではないと考える。
ずいぶんと前に
ザ・フォーク・クルセイダーズという
グループによる楽曲が大ヒットしている。
機械的な声で

「オラハシンジマッタダ」

と始まる楽曲だ。
国井のリアルタイムではないのに
知っているくらいだし、
現在の社会背景もちがうから、
「想像を絶する」メガヒット曲といえるだろう。
1970年代ではなかっただろうか。

無機質さだけで浮かび上がる人の声で

「俺は、死んでいるんだ」

と歌いはじめるのだ。
歌詞だけ読むと、
セカイ系のはしりみたいな曲だ。
アニメ『ブラック・ロックシューター』も
イメージを合わせたかのような世界にみえる。
いまのところ『異なる2つの世界の話』では
なさそうだ。そこが面白い。

作品はわかりやすくするために両方の比重が
「静と動」という感じで
バランス良く配分されているけれど、
個人的には現実世界(少女たちの学園生活)の
映像は一切なくてドラマCDのように
音声だけという実験的作品でもいいくらい。
台詞は「声だけ」。サイケで暴力的な世界が
学園生活での人間関係構築、まはた破壊の
心理(葛藤)を抽象する映像、というのが
とても面白い。

話を戻そう。

インディーズから人気の後押しを受けて
知名度が全国区にあがった、というのも
フォーク・クルセイダーズの
ヒット曲と相似している。

決定的に違うのは、
物語の主人公たちが
十代前半の少女たちくらいか。
そう。
どういうわけか、
『ブラック・ロックシューター』では
登場する人物がみんな少女だ。

おっと。
だからといって、
男性向けの『萌え』に合わせた、と
早合点してはいけない。
もちろん、商業としてのそのファクタは
無視するところではないが、
つまりは、物質(商品)という、
無機的豊かさの中で
自分という有機さを欲している世代が
彼女たちだ、とはとれないだろうか。

いいかえれば、

「世界でいちばん、は私」

という願望を、
他者に強く欲するのが女性であり、
作中に登場する年代の少女たちこそ、
その具現なのかもしれない。
(知ったふうな口をきいてみた)

ちなみに国井が言う、
「好む有機的な音」というのは
こぶしとか、ハーモニィ。
もちろん、ヴォーカルのスタイル。
(嗜好がわからないという人は、
 EVANESENCEを聴いていただきたい。
 女性ヴォーカルで好んで聴くのは
 このバンドかWithin Temptationくらいです)

国井がバンドサウンドのハードロックを
好むというのもこの「有機さ」に
起因すると思われる。
過剰に人間っぽいから、
好きなのかもしれない。
だから、バンドのメンバーチェンジ、
それに伴う楽曲の変化にも、
幾度も肩を落としたり、
嬉しい悲鳴をあげたりもした。

 muku.jpg

無機質ヴォーカルの人気というのは、
こういった『圧倒的技術/才能を持つ人間』に
純粋に憧れるということが「嫌だ」という
感覚が多くなっている傾向にあるのだとも読める。

商品を選ぶだけで良い生活をしているから、
「選ばれる側になる」ということへの
心理的耐性が弱まっていると考えるのは、
早計だろうか。

最終更新日  2012.02.10 21:12:10


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