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宮の独り言

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2009.03.04
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カテゴリ:コードギアス
サクラダイト、それは薄桃色のいわゆるレアメタルと呼ばれる採掘量が少ない鉱石である。
その鉱石の最大の特徴は常温で電気抵抗が無い状態、超伝導現象を引き起こす高温超伝導体であると言う事だ。
他の物質では超伝導現象を引き起こすのに絶対零度に近い温度まで冷却しなければならない事を考えると、サクラダイトがいかに特殊な性質を秘めているかが分かるだろう。
この電気抵抗が存在しない鉱石は電気化学技術と密接に関わりがある。
電化製品と言う電化製品には全てサクラダイトが何らかの形で用いられ、文明の発展と共にサクラダイトの重要性は高まっていった。
高性能な蓄電池エナジーフィラーは携帯電話やノートパソコン、自動車や飛行機など様々な用途で用いられる。
銃器も火薬は用いられずコイルガンであり、都市の電力をまかなう発電もサクラダイトが用いられたソーラーパネルで行われる。
ありとあらゆるものが電気で動く世界、それがルルーシュ達が生きていた世界だった。

「で、こちらが錬金したサクラダイトで~す」

ドンと机の上に乗っかった巨大な桃色の結晶群、ブリタニアの技術者が見たら驚く様な光景だろう。
希少金属である筈のサクラダイトが精製された状態で巨大な結晶となっているのだから。

「どんな感じだ?簡単に錬金出来るのか?」
「僕とセシル君はサクラダイトがどんな金属かも知ってますしぃ、現物を手に取った事もありましたから結構簡単に出来ましたよ~」

ましてやロイドは土のスクウェアメイジ、その魔法力の使い道が完全に研究方向を向いている為忘れがちであるが、国を代表する優秀なメイジの一人なのだ。

「そしてこちらが一応試作してみたモーターとエナジーフィラーになります」

セシルが机の上に置いたのは小等部の学生の自由研究にでも出てきそうなモーターとエナジーフィラーを繋いだだけの回路だ。
そのスイッチを入れると音を立ててモーターが高速で回転を始める。
ルルーシュはそれを見ながら今後の発展形を考えた。

「このエナジーフィラーは量産できるものか?」
「無理ですよ~殿下、いくら錬金の魔法と言っても幾つかのパーツからなるものを一発で錬金出来ませんって」
「このエナジーフィラーはナイトメアフレームに用いられてきたものの構造を元に設計したんです。量産性の為には多少構造を簡略化して加工の技術さえ整えば・・・」
「まあしばらくは量産体制は整えるつもりはない。できると言う事だけが分かればいいんだ」

今のハルケギニアに電気の概念を理解できる者がどれほどいるだろうか。
理論さえ整えておけば他国に電気化学の発達で後れを取る事はないはずだ。
他国では科学と言えば魔法を指す。
だがルルーシュはゲルマニアでは科学と言えば平民でも学び実践できる学問として発展させるつもりであった。
そうする事で平民の生活はより豊かになり、ひいてはそれが国を富ませる事となる。

「後は発電システムの構築が必要か」
「あれ、殿下もうそんなに大規模な電化製品使う気なんですか?」
「どういう意味だ?」
「当分エナジーフィラーだけで十分だと思うんですけどぉ」

うん、とルルーシュは眉を顰める。
エナジーフィラーの充電の為には電力の発生が必要なはずだ。
ロイドにそれが分からないわけがないだろうに・・・

「エナジーフィラーの充電なんて錬金で済むじゃないですか」
「あ・・・なるほど、そう言う手があったか」

電気とは電子の流れである。
そしてその電子の流れを引き起こすのは化学反応だ。
つまりエナジーフィラーが消耗すると言う事はエナジーフィラー内部の化学物質が完全に化学反応を起こしたと言う事であり、充電する為にはその逆反応を起こせば良い。
極論を言えば充電すると言うのは『反応が起きていない状態に戻す』事なのだ。
これは錬金を用いれば容易にできる。

「つまり錬金を使えるメイジがエナジーフィラーを動力源にする機器を用いる時、理論上エナジーフィラーが尽きる事はないと」
「そうなりますねぇ」

ならば発電システムは当分必要のないものだろう。
都市やアリエスの離宮全体に電気を供給するような場合になった時に初めて必要となるのだから。

「というわけで、殿下も魔法の訓練をやった方がいいですよぉ?錬金あまり得意じゃないでしょう~」
「水のメイジだからな」

ルルーシュの現在のメイジとしてのランクはライン相当である。
皇族の血を引いている以上、それなりの素質はあるため将来的にはトライアングルクラスまではいくだろうと教師役のメイジには言われている。
ちなみにロロはまだ十歳ほどであるにも関わらず既に風のトライアングルクラスに到達している。
メイジとしての成長は精神の成長に関わっている説があるが、ロロの場合を見る以上その説は正しいのかもしれない。

「ところで殿下、エナジーフィラーが実用化したら何に用いるのですか?」

セシルの問いにルルーシュはフッと笑みを浮かべる。

「そうだな。魔法絶対主義の貴族連中は成果をはっきりとした形で見せないと分からないようだから、まずは馬車を自動車かバイクにでも変えてみるか。その次は航空機への導入、あるいは無線通信技術の開発と言った方向で進みたい」
「いやぁ、簡単に言ってくれますねぇ、殿下」
「出来ないと言う事はないだろう?お前達の脳の中にはブリタニアの最先端の科学が詰まっているんだからな」

今はまだ未来を夢見て笑い合えていた。
だが三人とも心の中では感じていた。
科学が最も発達するのは戦争においてなのだと。





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最終更新日  2009.05.28 02:51:38
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