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宮の独り言

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2009.03.07
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カテゴリ:コードギアス
「ルルーシュに続きオデュッセウスの身柄すらも確保できなかっただと!?貴様らはどこまで無能なのだ!!」

食事中に舞い込んできた不愉快な知らせにアルブレヒトは激昂した。
報告に来た者に手にしていたフォークを投げつける。
響き渡る怒声に給仕の女性達がまるで自分が怒鳴られているかの様にビクリと体を震わせた。

「そ、その、帰還した者が言いますにはジェレミア卿による邪魔が入ったと」
「くそッ!またか、また貴様の手引きなのかッ!ルルーシュ・ヴィ・ゲルマニア!!どこまでこの俺を馬鹿にすれば気が済むのだ!!」

テーブルに拳を叩きつける。
跳ねた皿が一斉に音を鳴らし、零れた料理がクロスに沁みを作る。
布地にじわじわと広がっていくそれをジロリと睨みつけながらアルブレヒトはギリギリと歯ぎしりをした。
この内乱はある意味、志向の違う北部と南部の貴族達の対立の延長線上にあると言っても良い。
二割程の貴族や自治都市はどちらにもつかず中立を宣言しているが、国内の貴族達は南北に大きく割れていた。
彼等が互いに己の象徴となる皇帝を擁立することで団結しているのだ。
だからこそ、オデュッセウスやルルーシュの様な者を捕え、北部の貴族達の団結を妨害し各個撃破でこの内乱で勝利するはずだった。
全て上手くいっていた筈だ。
皇族の後見貴族達が皇宮に忍ばせていた間者は全て排除するか懐柔した。
皇帝の容体などの情報は完全にシャットアウトしたはずなのに。
何故かこちらの思惑を見透かしたかのように常に先んじられている。
ならば真正面から力を持ってねじ伏せるのみ。

「カラレス、貴様に一万の軍を与えてやる。北西の北部主力軍を壊滅せよ」
「Y、Yes, your majesty」
「もし二度も失態が続けば・・・、貴様は竜の餌になると思え!」

ほうほうのていで前から去っていくカラレス将軍の姿を睨みつけ、アルブレヒトは今後の手を考える。
ヴィンドボナはゲルマニア中央から南東に偏った位置にある。
よって敵の軍はほとんどが北西から押し寄せて来ると考えてよいだろう。
そして残念な事に敵の方が動員できる兵力数は勝っている。
これは主に北部の貴族達の前身である開拓騎士団の気風、ガリアやトリステインの様な有力な国と国境を接していないという事に起因している。
すなわちこちらは常に予備戦力を置いて戦わなくてはならないのに対し、敵は全力で戦えるという事になる。
故に懐柔や根回しによる戦う前び決着を付ける短期決戦を狙ったのだ。
だがそれの策ももう機能しなくなっている。

「私をお呼びと聞きましたが」

不意にアルブレヒトの耳に声が届く。
重低音の声が彼の耳には頼もしく聞こえた。

「おお、良く来た」

途端にアルブレヒトの機嫌が直り、笑みが浮かぶ。
しかし相手はそれを嫌そうにねめつけて無愛想に言葉を続けた。

「如何なるご用件でしょうか?」
「うむ、貴殿にはカラレス将軍と共に反逆貴族共の討伐に出向いてもらいたい」
「・・・」

黙り込んだ相手にアルブレヒトはニヤリと笑った。

「御養女は戦場での貴殿の邪魔にならぬ様、こちらで丁重に歓待しておこう。何心配するな。不埒な者の手の届かぬ場所で保護しておる故、な」

侮蔑を含んだ怒りの視線がアルブレヒトを貫く。
だが彼が自分に手を出す事がないと分かっているアルブレヒトは欠片も怯えを見せる事はない。

「親族を手にかける気か」
「兄上も行った事だ。帝国を治める上で必要な行為だ。よもや貴様がそれを非難できるとでも思っているのか?『血の紋章事件』の首謀者であった我が叔父を殺したたお前がな。同じ事をやれと言っているのだ」
「・・・良いだろう。だが忘れるな。我が娘に一筋でも傷を付けてみろ、その時は貴様の首が無くなると思え」
「貴様、皇帝陛下に対し無礼であろう!」

男のアルブレヒトに対する態度を側近が歩み寄り咎める。
だが次の瞬間、男の手が神速で背負っていた大剣を抜き目の前の空間を切り裂いた。
巻き起こった風は側近の髪を大きく揺らした。
はらりと床に落ちる前髪の束。
叩きつけられた殺気に側近が腰を抜かす。
男は片手で大剣を持ったまま広間から出て行った。
残されたアルブレヒトは今だ健在である男の力を目にして満足そうに笑った。

「帝国最強の騎士ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタイン卿、奴の力を持って反逆者どもを叩き潰す!」





「あ~あ、いよいよかぁ。楽しみだね~」

街道を行軍していく北部貴族同盟の諸侯軍を眺めてロイドは嬉しそうに言う。
そんな不穏な言葉を視線で見咎めるセシル。
二人がいるのはアッシュフォードの所有する船『ガニメデ』の甲板、そこから地上の様子を見下ろしていた。
ガニメデは型こそ旧式の船であるが、実際には新型の大砲を備え、尾部には電気熱加熱を利用した空気の噴出に推進力を得るエンジンが搭載されている。
ルルーシュがアッシュフォードから破棄予定であった船を譲り受け、それをロイド達科学技術部が改造したのだ。
と言っても大砲も倍ほどに射程が伸び命中精度も上がったがたった六門しか用意できなかった。
エンジンも船の機動力を大きく増したが、その分船全体の重量の増加により消費する風石の数が増した為あまり良い改良とは言えない。
それでも制空権をこちらに有利にするには十分であるが。

「あは、どうしたの?セシル君」
「ロイドさん、あまり喜ばない方がいいですよ。不謹慎ですから」
「うんうん、分かってるよ~、ルルーシュ殿下にも言われたからね」

ロイドの気持ちがセシルには分からないわけではなかった。
自分達が丹精込めて改装したこの船が活躍する所を見たいという気持ちはセシルにもある。
戦いを肯定するわけではないが、戦場に立つ騎士や兵士達と自分達科学者の間の温度差がセシルに違和感を与えていた。
矜持を持って戦う彼等から自分達の技術がその矜持を奪い取ってしまうような気がした。
ヨーロッパの歴史において銃や火砲の発達は騎士達の衰退を招いた。
戦争はやがて歩兵が主役の火力戦へと変わっていく。
単純にその構図がこのハルケギニアに当てはまるわけではないけれど、ルルーシュが描いているゲルマニアの工業的発展はそれに繋がるような気がした。
きっとロイドはそんな事を考えないのだろうな、とチラリと隣に視線を走らせる。
ロイドは科学の奴隷だ。
比較的まともな思考を持って研究している自分が時折恨めしくもあった。
セシルは再びため息をつく。
悩んでいても仕方が無い。
別に徹底した魔法絶対主義の貴族社会に良い印象があったわけでもないし、ルルーシュにシャルル・ジ・ブリタニアのような覇権主義の思想が見える事は無い。
兄弟達の存在が彼のストッパーになってくれるだろう。
自分の良心にけじめをつけて、セシルはひとまず甲板で騒ぐロイドを如何にかしようと拳を握りしめた。





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最終更新日  2009.03.07 15:51:10
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