カテゴリ:コードギアス
ルルーシュ達の最終目的は不正の温床となっているこの地を貴族の手から取り戻す事、そして不正の芽を全て摘み取る事である。
コルチャック男爵の不正の証拠はもう既にジェレミア達が掴んでいる頃であろう。 足りないのは領主代行を裁く理由だ。 その為には領主代行が自発的に墓穴を掘ってくれる事が一番都合が良い。 ならば、 「ロロ、その馬鹿を放してやれ」 「いいの?」 「ああ、そんな小者に用はない」 ルルーシュの言葉に嘲笑が混じり、それを感じ取ったコルチャックがロロを押しのけようと力を入れるが、ロロは掴んだ腕を捻ってさらに地面に押し付ける。 だがルルーシュの言葉に従ってロロはしぶしぶとコルチャックの背中から下りた。 途端に起き上がりルルーシュに掴み掛からんばかりに息を荒げるコルチャック。 彼が一歩踏み出した瞬間に、ロロがルルーシュの前に立ち塞がった。 手にしたナイフがギラリと煌めく。 普段ならばメイジであるコルチャックはそんな物を気にする事はなかっただろう。 しかしそれを持っているのが、見た目に反して恐ろしく冷酷な目をした少年である事が彼を躊躇させた。 動けば殺す、死に満ちた視線にコルチャックは僅かに背筋を震わせ彼等から背を向けた。 「貴様ら・・・覚えていろよ!」 惨めな台詞を吐き捨ててコルチャックは馬車に乗りその場から去っていく。 それを見た傭兵達も眠った仲間達を見捨てて、引き下がっていった。 残されたルルーシュとロロは軽く息を吐く。 後はこちらの思惑通り、コルチャックが領主代行を動かせば良い。 「ルル!」 背後からシャーリーの声が聞こえて、ルルーシュは振り返る。 それと同時に胸元にぶつかる様に飛び込んできたシャーリーの体をなんとか受け止め、ルルーシュはよろめいた。 「シャーリー」 「・・ありがとう、ルル。でも・・・」 「いいんだ、気にするな」 シャーリーの背にポンポンと手を当てて、包み込むように抱きしめる。 相手の確かな体温が伝わってくる。 「な、なんて事を・・・」 誰かが呟いた。 その声を聞いてルルーシュは目を細める。 シャーリーから体を離して周囲を見渡した。 屋敷からはフェネット氏やその家族も出てきている。 そしてロロの持つナイフや地面に転がった傭兵達の姿を目にして、屋敷の庭先で何が起きたのかを理解して真っ青に顔を染めた。 「き、君は一体何を・・・」 その顔にあるのは紛れもなく怯えだった。 ただ不条理な暴力に為されるがままにしかならないという諦め。 ルルーシュはそれを一瞥するとふと空を見上げた。 飛んでくる一羽の鳥、それはルルーシュの手に止まる。 ルルーシュの鳥の足に付いている金具の隙間から小さい紙片を取り出し、それを見ると口元を微かに綻ばせた。 舞台は完成した。 ならば後は観客を仕立て上げよう。 「聞け!」 その声は良く通った。 乾いた空気の中を一筋の矢が駆け抜けていくように集まっていた人々の耳に届く。 「この街は皇族の直轄地である。にも拘らずコルチャック男爵および領主代行はならず者と手を組んで悪事をなしている。私達はこれよりこの不正を正しに行く。誰か協力する者はいるか?」 答える者は誰もいない。 当然だ。 貴族に刃向うと公然と言える者がいるわけがない。 まるで気でも違ったかとそんな事を言う無数の視線。 「馬鹿な・・・そんな事をすれば俺達は・・・」 「ならば君達はこのような非道な真似を許すのか?ただ怯えて救いを待つのか?待つだけの者に救いは来ない」 恐ろしく整った容貌が彼の姿をくっきりと際立たせる。 静まりかえり、誰もがルルーシュの姿を見つめていた。 「権利とは戦い勝ち取った者だけが手にする事の出来るもの。言っておこう、君達が今ここで戦わなければ二度と平和な街は戻ってこない!」 「戦う?そんな事が出来るのか?」 「相手はメイジだぞ」 「反乱を起こせって言うのか!?」 ヒソヒソと囁く声。 ルルーシュはキッと視線を向けた。 「出来る!そしてこれは反乱ではない。正義だ!体制に逆らっているのはコルチャック達悪徳貴族であり、我々が為すのは正義。決してゲルマニアに逆らう事ではない」 「で、でも相手は魔法を使うんだぞ!それに傭兵だっている。そんな奴らを相手に・・・」 ルルーシュは確かな手ごたえを感じた。 彼等の目に希望の光が宿り始めている。 そしてその奇跡の源を自分に求めたがっていた。 ならば応えるだけだ。 「もう既に手は打ってある。後は君達が私に賛同して立ち上がってくれれば条件はクリアされたも同然だ」 声は無く、誰もがルルーシュを見つめた。 とても子供には見えない立ち姿、強烈なカリスマ性が心を鷲掴みにしていく。 何一つ証拠を見せられていないのに、出来るかも知れないと思えてきてしまう。 ルルーシュは彼等に手を差し伸べるように差し出す。 そしてその手を握りこんだ。 「私が君達に求めるものは戦う力ではない。ただ一つ、立ち向かう意思!」 ルルーシュは再度声を張り上げる。 「もう一度言おう。君達が選ぶべき道は二つ!私と共に立ち上がり己の手で平和な街を取り戻すか、それとも全てを他人に任せ一生屈辱を抱えて生きていくかだ!」 その時、一人の青年が一歩前に踏み出した。 それを見た者が息を呑んだ。 「本当に、本当に勝てるんだよな?」 「ああ、約束しよう」 「・・・なら俺はやるぜ。あいつらをこの街から叩き出したい」 「お、俺もだ!」 「私も!」 一度火が付けばそれは瞬く間に広がっていった。 元々この街を創ったのは自分達であるという誇りと、貴族達への不満がそれをさらに加速させる。 ルルーシュはロロと目を合わせて頷き合う。 そしてその光景を見ていたヴィレッタもルルーシュの他者を扇動する手腕に内心舌を巻いていた。 フェネット氏は恐る恐ると言った様子でルルーシュに問いかけた。 「君は一体何者だ?」 ルルーシュはその問いに微笑と共に答える。 「後で教えて差し上げますよ、フェネットさん」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.03.21 18:39:23
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