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宮の独り言

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2009.03.29
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カテゴリ:コードギアス
調停会議の前日にジョゼフ一世を筆頭にガリア代表団がゲルマニア入りを果たした。
そして当日、ゲルマニアの艦隊とクルデンホルフ大公国の空中装甲騎士団、協力を申しでたガリアの両用艦隊に護衛されてアルビオン両陣営の代表団がヴィンドボナに到着した。
会議の場となるカプリコーン宮への移動、ゲルマニアの威信をかけた厳重な警備体制下でアルビオン王国側の代表団とレコン・キスタの代表団はお互いに顔を合わせる事無く、会場へと入っていった。
今の所襲撃をかける様な事態は起きていない。
だが数日をかけて行われる調停会議がまだ始まったばかりである。
ラウンズ全員を警備に投入しての体制、また機密情報局もナイトメアフレームの捜索を一旦停止し、帝都に散っている。
会議の失敗を企み街に潜む者は全て彼等が処理する事になっていた。
カプリコーン宮の国際会議場、ドーナツ状になった大きな円卓が中央に置かれ、それぞれ各国の代表者が席に着く。
大小様々な国家元首が集っての会議に、皆緊張の色を隠せずにいた。
やがてアルビオン王国の代表団が会場に現れる。
高齢の王に代わってウェールズ皇太子が中心となった一団である。
彼等は主要各国の首脳陣に簡単に挨拶をした後に席に付く。
そして問題のレコン・キスタの代表団が会場へと現れた。
ざわめきが空間に広がっていく。
盟主クロムウェルを先頭に会場へと足を踏み入れる彼等の顔に少しも怖じげ付く所は無い。
開き直っているのか、それとも虚勢かあるいは自信の表れか。
その態度の理由は気になる所ではあるが、まずは彼等をこう言った場に引き出せた事を喜ぶべきだろう。
ふとアルビオン王国等の面々にルルーシュは視線を向けた。
憎々しげに殺気立ったウェールズ皇太子達。
彼等の敵意がクロムウェルらに注がれる。
なかなか波乱に満ちた会議になりそうだ、そんな予感と共に調停会議が始まる。





会議開始早々にまず動いたのはアルビオン王国であった。
ウェールズが真っ先に発言を求めハルケギニア諸国に向けて宣言する。
レコン・キスタはあくまでも反逆者であり正当性を持たない事、王権を打倒するという目的を持っている以上ハルケギニア諸国にとっても脅威となり得る事、これらの理由を持って一切の譲歩をしない事。
対するレコン・キスタも余裕たっぷりで自分達は聖地回復運動を推進する団体であるという事、それを不法に弾圧しようとするアルビオン王国に対抗している事、そしてブリミル教徒の悲願を否定するアルビオン王国に正統性はないという事を主張した。
後はもう互いに揚げ足を取り合うだけの到底冷静とは言い難い口論が続くだけである。
元よりこう言ったやり取りが予想されていただけに、各国の代表らは皆冷やかに彼等の主張を見守っていた。
時折議長のルルーシュが仲裁に口を挟むが、当事者たちでの解決を目標としているゲルマニアは特にアルビオン勢に働きかける様子はない。
トリステインの代表席に深く腰かけてその様子を見ていたマザリーニは三日前の夜に行われた会談をふと思い出した。
完璧にしてやられたものだ。
連れて行った護衛官が安っぽい挑発に乗ってしまいペースを乱す羽目になったが、自身が冷静さを欠いていたのも事実だ。
護衛官の『許されない』という発言はあくまでもあのような内密な話し合いの場で王女の結婚を決める様な事に対する非難だった。
しかしルルーシュの言葉によって巧みに誘導され、あたかもゲルマニアを侮辱したかのような印象を脳裏に植え付けられ、スゴスゴと引き下がる羽目になってしまった。
マザリーニは何故あそこで引いてしまったのか、今でも悔やんでいた。
もっと強気にどこが侮辱なのかと訂正を求めて迫れば良かったのだ。
疲労を露わにしていたルルーシュに気を使ってしまったのかもしれない。
なるほど、あの美貌も強力な武器なのだろう。
会談が終わった後もどこか思いつめたように消沈していた護衛官には悪い事をした。
立ち上がり冷静な発言を求める旨を繰り返すルルーシュの姿を見る。
彼もそうだが、皇帝の首席秘書であるカノン・マルディーニにしても、若さと言う武器の使い道をよく知っている者達だ。
優れた洞察力、策略の才、冷静さ、忍耐力を兼ね備えつつその根底に燃え滾るような闘争心を秘めている。
一歩も引くまいという気迫が彼等にはあった。
マザリーニは自分の皺の寄った手を見た。
まだ肉体は四十代なのだが、心は自分が思っている以上年老いているのかもしれない。
だがこれ以上の敗北は許されない。
トリステインの安全の為にもこの国際会議の場で少しでもレコン・キスタの勢いを殺ぎ、危険な存在であるという印象を各国に見せつけなければならない。
意を決してマザリーニは手を上げ口を開いた。

「議長、発言を求めます」

視線がマザリーニに集まる。
隣に座っているアンリエッタも少々心細そうにマザリーニを見た。

「どうぞ」

ルルーシュが言う。
許可が得られるとマザリーニはゆっくりと立ち上がった。

「この会議の目的は対立するアルビオン両陣営の和解である筈です。アルビオン王国に非がありレコン・キスタが反乱を起こしたのであれば、和解の為にはその原因を解決せねばなりません。ですのでまずレコン・キスタの諸君はアルビオン王国の打倒に行き着くまでの経緯を話して頂けませんかな?」

至極当然の追求だ。
今までこれがなされなかったのはレコン・キスタの敵意を集めたくないという思いの表れか。
だがマザリーニが率先して発言した事により、各国の代表らから傍観者の態度が消え去っていく。
マザリーニの追及を受けて発言したのはレコン・キスタの盟主クロムウェルであった。

「事の始まりはモード大公の処刑から始まります。アルビオン王は突然に弟であるモード大公を拘束し挙句の果てに汚名を着せて処刑したのです!モード大公が犯した罪に関しては一切の説明もなされぬまま、ただ大罪を犯しただけだという。これはもはやアルビオン王の私欲による理由なき虐殺と言っても良いでしょう。そして聖地奪還の為に研鑽を続けてきた我々にも杖を向けてきたのです。この行為は全ブリミル教徒の悲願を妨げる重大な罪だと言えるでしょう」

つまり簡単に言えばモード大公が原因不明の処刑を受けたせいで不安に駆られた貴族達が反乱を起こしたというわけか。
マザリーニは彼等の主張をそう理解した。
おそらくクロムウェルはその過程で祭り上げられた盟主なのだろう。
何故クロムウェルであるのかは分からないが、レコン・キスタの掲げる大義の一つである貴族の共和制による統治というのもこの推測を裏付けるものである。
こちらは幾ら口を挟もうとも内政干渉になるなと感じたマザリーニは方針を変える事にした。

「ではその王権打倒と聖地奪還運動の関連はどう説明なさるのですかな?私には矛盾しているように思えますが」
「それは勿論、我々が元々聖地回復運動を進めていたからです。その決起の為に集まっていたにもかかわらず、アルビオン政府は我々を反逆者として罰しようとしたのです」
「すなわち聖戦を宣言すると?」
「その通り!」

クロムウェルが堂々と発言した。
その顔には満足げな優越感が浮かんでいる。
所詮小物だな、そんな思いがマザリーニの中に生じる。
クロムウェルは簡単にマザリーニが仕掛けた罠の中に飛び込んで来てくれた。
レコン・キスタの中にはハッと顔色を変えた者も数名いるが、もう遅い。
一度吐いた唾は飲み込めない。

「それはおかしいですな、クロムウェル殿。私はロマリア皇国の枢機卿の職に就いておりますが、『聖戦』の宣言は一切聞いておりませぬ」
「それはあなたがアルビオンにいなかったから・・・」
「違いますぞ、クロムウェル殿。貴殿も聖職者であるのならば知っているはずです。『聖戦』発動の権限を持っているのは教皇聖エイジス三十二世猊下のみのはず」

静まり返った会議場にマザリーニの声が響き渡る。
流石のクロムウェルも己の犯した失態を悟ったのか、蒼白の顔を歪めていた。
おそらくいいわけであろうが、何事かを口にしようとしたその時、絶妙のタイミングでルルーシュの声が皆の耳朶を打った。

「教皇猊下、『聖戦』の発動に関して何かご意見はありますか?」

発言の機会を失ったクロムウェルはしばし辺りを見渡してまごつくが、すぐに未練がましい態度を引っ込めて席に着いた。
クロムウェルと交代するように立ち上がったのは聖エイジス三十二世こと、ヴィットーリオ・セレヴァレである。
人目を惹きつける容貌と穏やかな物腰に定評のある若き教皇の発言を誰もが黙って待っていた。

「確かに『聖戦』の発動は教皇が有する権限の一つです。そしてその権限は軽々しく振るわれるものでは無く、私も、そして先代の教皇も『聖戦』を宣言しておりません」

柔らかなテノールの声が一つ一つの言葉をはっきりと紡ぎ出す。
教皇はハルケギニア全土の神官と寺院の最高権威者である。
その人物が聖戦を否定するというこの発言はレコン・キスタの存在そのものを揺るがしかねない事態であった。

「私自身の意見を言わせて頂くのであれば、聖地やブリミル信仰に対する関心が高まる事は喜ばしい事だと考えます。しかしそれが同じ人間同士の殺し合いに繋がるなどあってはならない事です。戦禍に巻き込まれ苦しむ民の為にも両者の歩み寄りによる平和的な解決を望みます」

ヴィットーリオの発言を皮切りにやがて各国のレコン・キスタ、およびアルビオン王国への追及が始まった。
その中には勿論モード大公の処刑に関する質問もなされたが、ウェールズ皇太子はその真相を知らず、肝心の真実を知っているであろう重臣は答弁する事が出来ず黙ったままであった。
これは散々にその存在意義が叩かれたレコン・キスタにとって唯一と言える光明だろう。
こうして調停会議初日は終わりを告げる。
両陣営の問題点が示され、明日はこの解決策を各々提案すると言う事で会議は解散となった。
予想された妨害行為も発生せず、初のゲルマニア主催の国際会議としてはまずまずの結果である。
だが、本当の波乱は明日にやって来るだろうという事を誰もが感じずにはいられなかった。





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最終更新日  2009.03.29 17:03:35
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